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2022年08月31日
良い睡眠は心臓病や脳卒中のリスクを低下 糖尿病も改善 睡眠の質を高める5つの方法
睡眠を改善することで心臓病や脳卒中を72%予防できる可能性があるという研究が、欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表された。
十分な睡眠をとれている人は糖尿病リスクも低いことが、日本人を対象とした調査でも確かめられている。
米国睡眠医学会などは、成人は1晩に7時間以上の睡眠をとることを勧めている。睡眠を改善する5つの方法も公表されている。
睡眠を改善すれば心臓病や脳卒中を予防できる可能性
欧州心臓病学会(ESC)の発表によると、夜によく眠れていない人は、心臓病や脳卒中のリスクが高くなる。 調査によると、夜にぐっすり眠れていない人は10人に9人にも上る。睡眠を改善することで、10人に7人が、こうした心血管疾患を予防できる可能性がある。 研究は、バロセロナで開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表されたもの。研究グループは、観察コミュニティベースの前向きコホート研究である「パリ前向き研究III(PPP3)」に参加した50歳~75歳の男女7,200人を対象に、8年間追跡して調査した。 参加者の平均年齢は59.7歳で、62%が男性だった。研究グループは2年ごとに、心筋梗塞などの冠状動脈性心疾患と脳卒中についてチェックした。 5つの睡眠習慣を組み合わせた睡眠スコアを使用し、このスコアの経時変化と心血管疾患の発症との関連について調べた。もっともスコアの高い人は、▼1晩に7~8時間の睡眠をとり、▼不眠症になることはあまりなく、▼日中に過剰な眠気を感じることが少なく、▼睡眠時無呼吸がなく、▼生活パターンは朝型だった。良い睡眠をとれている人は心臓病や脳卒中のリスクが75%低い
研究開始時に、睡眠スコアが最適だった参加者は10%で、スコアが悪かったのは8%だった。期間中に、274人の参加者が、冠状動脈性心疾患または脳卒中を発症した。 解析した結果、睡眠スコアがもっとも良かった人は、もっとも悪かった人に比べ、心臓病または脳卒中のリスクが75%減少した。睡眠スコアが1ポイント上昇するごとに、心臓病と脳卒中のリスクが22%減少することが明らかになった。 「質の良い睡眠を十分にとれていると、心血管イベントを予防できる可能性が示されました。参加者のすべてが最適な睡眠スコアをもっていれば、毎年、心臓病と脳卒中の発症の72%を予防できると考えられます」と、フランス国立保健医療研究所(INSERM)のアブーバカリ ナンビエマ氏は言う。 「心臓や脳の健康のために、質の良い睡眠を十分にとることが重要です。このことを、保健指導の早い段階で教えるべきです。睡眠の悩みのある人は、夜間の騒音を避けたり、職場でのストレスに対策する、かかりつけの医師に相談するなどして、睡眠を改善する工夫をすることをお勧めします」としている。 関連情報十分な睡眠をとれている人は糖尿病リスクも低い
睡眠を改善する5つの方法
睡眠障害や社会的時差ぼけなど、睡眠の質を下げる要因について研究している米ピッツバーグ大学の睡眠サーカディアン科学センター(CSCS)によると、毎日の生活で、次のことを実行すると睡眠を改善しやすい。
■ 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻に就眠・起床をすると効果的だ。
■ 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。
■ 適度な運動が良い睡眠をもたらす
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、肥満や2型糖尿病の改善・予防にもつながる。
■ 入浴して深部体温を上げる
寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
■ 光で体内時計を整える
朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。
反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。
スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するのでとくに影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。
Good sleepers have lower risk of heart disease and stroke (欧州心臓病学会 2022年8月26日)Sleep disorders and apnoea, physical inactivity (欧州心臓病学会学術集会2022)
Role of sleep duration as a risk factor for type 2 diabetes among adults of different ages in Japan:the Niigata Wellness study(Diabetic Medicine 2014年7月30日)
ピッツバーグ大学 睡眠サーカディアン科学センター
The Social Jet Lag Study(ピッツバーグ大学)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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