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2018年08月07日
糖尿病患者は熱中症リスクが高い? 熱中症予防に関する緊急提言も

子どもたちが夏休みに入り、大人たちの夏休みの時期も近づいてきた。夏を楽しみにしている人は多い。しかし、糖尿病のある人は暑い夏には注意が必要だ。猛暑のために血糖コントロールが難しくなる場合があるからだ。
糖尿病と暑い夏 異常な高温にどう対策するか
糖尿病のコントロールについて十分に注意していれば、他の人のように夏を楽しめなくなる理由はない。しかし、暑い気候を安全に楽しむためには注意が必要だ。
英国糖尿病学会(Diabetes UK)は以下のことについて注意を喚起している。
・ 暑い夏には血糖コントロールになおも注意
気温の高い夏には体を動かさずに、じっとしている時間が増える。運動療法をふだん通り続けるのも難しくなり、血糖値が通常よりも高くなりやすい。
その反面、気温が高いときには血行が良くなり、インスリンを注射すると注射した部位からインスリンが迅速に吸収され、効きが速くなることがある。その結果、少し運動しただけで低血糖を起こすおそれがある。
インスリン療法を行っている人は、血糖自己測定を行い、血糖値の変動について普段以上に注意する必要がある。それに応じて食事やインスリン投与量を調整する必要がある場合もある。
・ 高温や直射日光からインスリンやセンサーを守る
高温や直射日光の暴露は、インスリン、血糖値測定器やセンサーにも影響を及ぼす。高温や直射日光にさらされるとインスリンは変性して働きが失われてしまう。血糖値が予想以上に高く出る場合は、インスリンに変性が起きていないか検討してみる価値がある。
インスリンが熱により変性すると、一般的に透明なインスリンは濁り、曇っているインスリンは粒子状になり容器の側面に付着する。直射日光にさらされたインスリンは茶色がかることもある。これらの変化したインスリンは使用しないようする。不明な場合は、主治医やかかりつけの看護師、薬剤師に相談しよう。
暑い時期には、インスリンを冷蔵庫やクールバッグに保管すると安心できるが、その場合は凍結しないように気を付ける必要がある。また、血糖値測定器やセンサーも、なるべく室温に近い直射日光の当たらない場所に保管する。
・ 自律神経の働きが低下し汗をかけないことも
政府は、節電や地球温暖化対策として、エアコンの設定温度を28度にするように求めている。しかし、これが熱中症を引き起こすひとつの原因になっている場合もある。
気温が28度でも湿度が高いと、熱中症を起こす危険性が上昇する。さらに、糖尿病で血糖コントロールが良くなかったり、脳卒中などの既往歴のある人は、体温を調整する自律神経の働きが低下している場合がある。
体温が上がっているのに汗をかけなくなると、熱が体にこもってしまう。エアコンを28度に設定しても、実際の気温がもっと高くなっている、あるいは湿度が高く、熱中症の危険度が高い状態になっていることがある。
なお、汗を激しくかくと、水分とともに汗に含まれる塩分も失われるので、塩分の補給が必要になる。しかし、汗をかいていないのであれば、塩分補給は効果がない。逆にスポーツドリンクなどは糖分が含まれるので、飲み過ぎは血糖コントロールの悪化につながる。
気分が悪くなりそうであれば、扇風機を併用したり、エアコンの設定温度を1〜2度下げることが勧められる。
関連情報
小児や高齢者、持病のある人は「熱中症弱者」

・ 小児では汗腺の発達や自律神経が未熟で、高齢者や持病のある方は自律神経の機能が低下しており、体温調節機能が弱い。
・ 高齢者では全身に占める水分の割合が低く、容易に脱水になりやすい。脱水になると発汗の機能が低下し、体温調整が困難となる。
・ 小児では身長が低いため、地面からの輻射熱の影響を受けやすい。
・ 自分で予防する能力が乏しい。
暑さ指数を意識した生活指導が必須

熱中症を疑ったときには何をするべきか

Information and public health advice: heat and health(世界保健機関)
日本救急医学会
熱中症環境保健マニュアル2018(環境省)
[ Terahata ]
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