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2024年02月14日

年齢を重ねることに前向きな人は糖尿病リスクが減少 こうすれば加齢に対してポジティブになれる

 齢をとることを前向きに考えている人は、健康になり長生きできる可能性が高いことが、約1万4,000人の50歳以上の人を対象に実施された調査で明らかになった。

 20ヵ国の2万1,000人以上の55歳以上の人を対象とした調査では、高血圧や糖尿病などの慢性疾患があることが、必ずしも健康的に年齢を重ねることを妨げるわけではないことも示された。

 ウォーキングなどの活発な運動に対して前向きな考えをもち、行動している人は、加齢に対する不安が少ないという調査結果も発表された。

年齢を重ねることを前向きにとらえている人は健康で長生き

 齢をとることを前向きに考えている人は、健康になり長生きできる可能性が高いことが、50歳以上の約1万4,000人の米国人を対象に実施された調査で明らかになった。

 加齢に対する満足度の高い人は、満足度が低い人に比べて、4年間の追跡期間中の全死亡リスクが43%低いという結果になった。

 齢を重ねることに対し前向きな考えをもっている人は、糖尿病・心臓病・脳卒中・がんなどの慢性疾患のリスクが低く、認知機能も良好である傾向がみられた。

 そうした人は運動をする習慣があり、体をよく動かしており、睡眠の質も良好で、孤独感を感じたり、落ち込むことも少なく、生活に対してより楽観的で目的意識もしっかりしているという。

健康的な生活スタイルをもつと考え方も前向きになる

 「人生に対する考え方と健康行動のあいだには関連があります。2つが互いに影響しあっていて、食事や運動など、健康的な生活スタイルをもつ人が、加齢に対しポジティブに考えている傾向も示されました」と、カナダのブリティッシュコロンビア大学で心理学を研究しているエリック キム氏は言う。

 「良いニュースは、加齢に対する考え方は変更が可能だということです。人生に対する見方を変えることで、より健康的になれる可能性があります」としている。

 研究者は、健康的に齢を重ねるために、▼老化に対する否定的な考え方を取り払う、▼人生の目的意識を自分なりにもち続ける、▼社会的なつながりを維持する、▼齢を重ねても新しいことに挑戦する――などを勧めている。

糖尿病があっても健康的に年齢を重ねることは可能

 「現代人の寿命は大きく延びています。米国だけをみても、平均寿命は1世紀で20年以上延びました。ほとんどの人は、先祖よりも長生きできると期待できます」と、米国の高齢者を支援する活動をしている財団のCEOであるマーガレット フランクハウザー氏は言う。

 「しかし多くの人は、健康上の問題がなく日常生活をおくれる期間を示す健康寿命が、平均寿命よりも約10年短い。健康寿命を延ばし、健康的に年齢を重ねることは、すべての人にとって課題になっています」としている。

 米国のマッキンゼー健康研究所が、20ヵ国の55歳以上の成人2万1,000人以上を対象に行った調査では、健康を全体的に良好に維持するために大切だと思うこととして、▼人生の目的をもつこと、▼ストレスを管理すること、▼身体的に活動的になること、▼社会的なつながりを保ち、学び続けること、▼経済的に安定することを挙げる人が多かった。

 高血圧や糖尿病などの慢性疾患があることが、必ずしも健康的に年齢を重ねることを妨げるわけではないことも示された。

 米国退職者協会(AARP)が2021年に実施した調査では、高齢者の多くは「医療サービスにアクセスし、適切な治療を受けていれば、健康状態が全体的に悪化することはない」と考えていることが示された。多くの人は病気をもっていても、自分の健康状態に適応できれば、質の高い生活を達成できると考えている。

尊厳と充実感をもって齢を重ねられる社会を

 世界保健機関(WHO)は、英国老年医学会と協力し、世界の40を超える機関の専門家の研究をまとめて公表している。

 「世界中で寿命は延びていますが、健康に生きられる期間を示す健康寿命は多くの国で改善されていません。これは、より多くの人が、不健康や状態や障害を抱えたまま老後を過ごすことを意味しています」と、WHOの健康・高齢化担当ディレクターのアンシュ バナジー氏は言う。

 「加齢に対する理解を世界的に変えるために、健康的な老化の尺度を標準化し、各国間のデータを比較可能にすることが必要です。それにより、高齢者の健康評価の正確性が確保されます」。

 「高齢者の能力と特有のニーズを理解し、それを高める取り組みをすることで、すべての人が尊厳と充実感をもって齢を重ねられるようになります。それにより、世界はより前進することができます」としている。

ウォーキングなどの運動に前向きに取り組んでいる人は
加齢に対する不安が少ない

 健康的に齢を重ねられるようになるために重要とみられているもののひとつに、「運動や身体活動の促進」がある。

 米アイオワ州立大学の調査では、運動や身体活動に対して前向きな考えをもち、行動している人は、加齢に対する不安が少ないことが示された。研究グループは、米国の6州で計1,250人の高齢者を対象に調査を実施した。

 「運動に対する積極性が高い人ほど、老化に対する不安が低いことが示されました。体を動かし、活動的でいることにより、身体・精神・社会のすべてでベネフィットを得られ、幸福を全体的に高め、老化のプロセスをより肯定的にとらえられるようになると期待できます」と、同大学人間栄養学部のサラ フランシス教授は言う。

 「これまでも、加齢について強い不安を抱いている人は、健康状態が悪化しやすいことが示されています。しかし、加齢をライフステージの一部としてよりポジティブに捉えると、健康状態が良くなる可能性があります」。

 「多くの人口が高齢化しているなか、健康増進のための行動をサポートし、肥満や糖尿病などの慢性疾患についても、治療だけでなく予防にも焦点を当てたアプローチをすることが重要です。多くの人に、ご自分にとって有益な生活スタイルを求めてもらい、行動の変容を起こしてもらうことが大切です」としている。

How You Feel About Aging Could Affect Health. Here's How to Keep the Right Attitude (米国心臓学会 2022年8月19日)
Healthy Aging in a Modern World: Maximizing Your Health Span (JSI 2023年9月27日)
WHO releases special journal issue on measuring healthy ageing (世界保健機関 2023年10月30日)
Outlook on exercise may curb aging anxiety (アイオワ州立大学 2023年10月31日)
Aging Anxiety and Physical Activity Outcomes among Middle and Older Age African Americans (Physical Activity and Health 2023年10月2日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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