ニュース

2023年11月29日

わずか5分間のウォーキングで糖尿病を改善 座ったままの時間を運動に置き換え 「やや早足」が効果的

 1日のうちで座っている時間を減らして、わずか数分間のウォーキングなどの運動に置き換えるだけで、健康増進の効果をえられることが分かった。

 座位時間を減らして、たとえ数分間でも良いので活発な運動に置き換えることで、体重やコレステロール、腹囲周囲径などの改善を期待できるとしている。

 ふだんのウォーキングの速度を少し上げることで、2型糖尿病のリスクを減少できるという研究も発表された。

 ウォーキングをするときは、時速4km以上の早歩きをするよう意識すると、糖尿病リスクを下げられるという。

座っている時間を減らしてわずか5分間でも運動を

 1日のうちで座っている時間を減らして、わずか数分間のウォーキングなどの運動に置き換えるだけで、心臓の健康が目に見えて改善することが、英国のユニバーシティ カレッジ ロンドンなどの研究で明らかになった。

 研究グループは、5ヵ国の1万5,246人を対象とした6件の研究のデータを解析し、1日の運動行動と心臓の健康との関連について調べた。参加者に1日の身体活動量などを記録できるウェアラブル デバイスを7日間装着してもらった。

 その結果、中強度の活発な運動を行うと、心臓を健康にする高い効果をえられることが分かった。逆に、座ったまま過ごす時間が長いことは、心臓の健康に悪い影響をもたらす。

 座ったままの時間を減らして、立ったまま過ごす時間を増やしたり、十分な睡眠をとることも健康のために大切だ。

 「座ったまま過ごす時間を減らして、わずか5分間でも歩いてみるなど、強度を高めた運動をすることが、心臓の健康に大きな効果をもたらすことが分かりました」と、同大学スポーツ・運動・健康研究所のジョー ブロジェット氏は言う。

 「1日のうちで座ったまま過ごす時間が長い人は、立ち上がって、早歩きや階段のぼりなど、心拍数を上げて呼吸を少し速めるような活発な運動を、たとえ1分や2分でも良いので行うことをお勧めします」としている。

日常生活で少し工夫するだけで心臓病や脳卒中のリスクは低下

 「運動に、心臓血管を健康にする大きな効果があることが示されました。ほとんどの人は、日常生活で少しの工夫をするだけで、心臓病や脳卒中などを発症するリスクを低下できます」と、英国心臓財団(BHF)の共同医療ディレクターであるジェームス ライパー氏は言う。

 座位時間を減らして、たとえ数分間でも良いので活発な運動に置き換えることで、体重やコレステロール、腹囲周囲径などを改善でき、さらに多くの身体的なベネフィットを期待できるとしている。

 たとえば、体格指数(BMI)が26.5の54歳の太りすぎの女性の場合、30分のウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、BMIは0.64(2.4%)減少するという。

 座ったまま過ごす時間を毎日30分減らして、活発なウォーキングなどの中強度の運動に置き換えると、腹囲は2.5cm(2.7%)減少し、1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cも低下する。

 研究は、同財団などの支援を受け行われたもの。現在、英国・オランダ・フィンランド・デンマーク・中国・シンガポール・オーストラリアなどで、腕時計型の活動量計を使い、24時間の運動・座位行動・睡眠などについて測定し、健康との関連を調べる国際共同研究「ProPASS」が実施されている。

楽しめる変化を起こし体を動かす機会を増やすことが大切

 「それまで運動をしていなかった人が活動的になるのは、必ずしも簡単なことではありません。運動を長期的に継続し、楽しめる変化を起こすためにサポートが必要です」と、ライパー氏は指摘している。

 少し空いた時間に歩いてみるなど、日常に「活動的なおやつ」を取り入れるのが効果的としている。

 たとえば、▼仕事中も電話に出るときは立ち上がるようにする、▼スマートフォンのアラームをセットして1時間ごとに歩くようにする、▼自宅や職場に行くときは、ひとつ前の駅や停留所で降りて歩いてみる、▼家や職場でスタンディング デスクを取り入れてみるなど、日常で体を動かす機会を増やすことを勧めている。

 心筋梗塞などの心血管疾患は、心臓や血管に生じる病気で、多くの国で死因の第1位になっており、日本でも死因の第2位になっている。

 世界では1997年以降、心血管疾患とともに生きる人の数は2倍になり、さらに増加すると予測されている。

ウォーキングの速度を少し上げると糖尿病リスクは減少

歩行速度をできるだけ上げると効果的

 2型糖尿病とともに生きる人は、ふだんのウォーキングの速度を少し上げることで、血糖管理などを改善する効果を期待できるという研究も発表された。

 「これまでの研究では、運動の頻度を増やして時間を延すことが、2型糖尿病のリスク低下と関連していることが示されていました」と、イランのセムナン医科大学の社会・健康研究センターのアフマド ジャイェディ氏は言う。

 「しかし、毎日忙しくて、運動のためにまとまった時間を取れないという人も多くいます。そんな人でも、短い細切れの時間をみつけて積極的に体を動かすことで、1日の終わりにはかなりの運動量になることが分かってきました」。

 「ただし、そうした運動にはコツが要ります。今回の研究で、歩行速度をできるだけ上げると効果的であることが分かりました」としている。

ウォーキングでは時速4km以上の早歩きを意識

 研究グループは、1999年~2022年に実施された、米国・英国・日本の成人を対象とした10件の研究を解析し、歩行速度と2型糖尿病の発症との関連を評価した。

 平均8年間の追跡期間で、ゆっくりと歩いている人に比べ、「やや早歩き」のペースで歩いている人は、2型糖尿病の発症リスクが24%低く、「かなり早足」で歩いている人は39%低いことが示された。

 「ゆっくりとした歩行」は時速3.2km未満、「やや早歩き」は時速3.2~4.8km、「かなり早歩き」は時速4.8~6.4kmくらいだという。

 「ウォーキングをするときは、時速4km以上の早歩きをするよう意識すると、2型糖尿病のリスクを減少できる可能性があります」と、ジャイェディ氏は指摘する。

 なお、運動を行う習慣のない人は運動をはじめる前に、とくに高齢者は、血圧や血管、足や関節などに異常が起きていないか、医師によるメディカルチェックを受けることを勧めている。

Any activity is better for your heart than sitting (ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2023年11月10日)
Device-measured physical activity and cardiometabolic health: the Prospective Physical Activity, Sitting, and Sleep (ProPASS) consortium (European Heart Journal 2023年11月10日)
Walking speed and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis (British Journal of Sports Medicine 2023年11月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲