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2012年04月25日
適度な運動が心臓発作リスクを低下 先進国・途上国ともに
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「運動を習慣的に行うと心臓血管疾患の危険性が低下することは、これまでに多くの研究で確かめられているが、今回の研究では世界的な視野で調査した。運動や身体活動を行う環境を、仕事中と余暇時間に分け、心臓発作の発生率に及ぼす影響を調べた大規模研究は前例がない」とスウェーデン・ウプサラ大学のClaes Held教授(心臓学)は話す。
Held教授ら研究チームはカナダと米国で、1万43人の心臓発作の既往歴のある人と、1万4217人の健康な人(対照群)を対象に、仕事時間と余暇時間の運動習慣など生活習慣について調査した。
勤務中の身体活動については、▼ほとんど座ったままで体を使わない、▼立ち歩きをする(軽度の身体活動)、▼歩いたり階段の昇降をする(適度の身体活動)、▼重い荷物の上げ下げなどが伴う重労働、とったランク付けを行った。
余暇時間の身体活動については、▼読者やテレビ鑑賞など静座したままで体を使わない、▼ウォーキングや魚釣り、ヨガなどの軽い運動(軽度の運動)、▼活発なウォーキングやサイクリング、昼間のガーデニングなど中程度の運動を週に4時間以上(適度の運動)、▼心拍数が上昇するランニングやフットボール、水泳など積極的な運動、という選択肢から選んでもらった。
その結果、仕事中は座ったまま過ごす時間の多い人に比べ、軽度〜適度の運動を取り込む人では、心臓発作の危険性が11〜22%低下することが分かった。余暇時間でも、運動に取り組む人で心臓発作の危険性は低下した。軽度の運動で13%、適度な運動で24%、心臓発作のリスクが減少していた。
自動車、オートバイ、ラジオ・ステレオ、テレビ、コンピュータ、土地・家畜などの所有についても調査した。興味深いことに、自動車とテレビも心臓発作の危険に密接に関連していることもあきらかになった。車とテレビの所有者は、どちらも所有していない人と比較して心臓発作のリスクが27%増加していた。「自動車やテレビを所有すると、体を動かさずに安静に過ごす時間が増え、運動不足に陥りやすくなる」と研究者らは説明している。
自動車とテレビを所有している割合は、低・中所得国では全体の4分の1、高所得国では3分の2だった。経済成長の著しい国で自動車とテレビの所有率は急速に伸びている。「今後は先進国だけでなく世界的に、運動不足が蔓延するおそれがある。適度な運動を毎日続けることで心臓病の予防が促されることを、広く認知させる必要がある」と研究者らは指摘している。
Global study sheds more light on role played by exercise, cars and televisions on the risk of heart attacks(欧州心臓学会 2012年1月11日)
Physical activity levels, ownership of goods promoting sedentary behaviour and risk of myocardial infarction: results of the INTERHEART study
European Heart Journal: 2012, doi 10.1093/eurheartj/ehr432
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