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2022年01月17日

運動をしていると心臓病のリスクは低下 安全に運動をするために何が必要?

運動は安全?――AHAニュース

 米国では最近、運動にともなう心臓突然死が話題になった。そのきっかけは、67歳の俳優Chris Noth(クリス・ノース)が、運動後に心臓発作を起こして亡くなる役を演じたことだ。それはドラマの中での話だったが、人々はそのようなリスクが現実にも起こり得るのではないかと心配した。

 しかし、米カリフォルニア大学アーバイン校のElizabeth Dineen氏は、「ドラマでの突然死のシーンを見た後に、愛用のトレーニングシューズを見つめて、それをいつものように履くべきか否か躊躇する必要はない」と語る。

 運動中に致命的な心臓発作が起きるリスクは非常に低く、一般的には、座ってばかりいる人に比べて定期的に運動している人の方が、そのようなリスクは低いという。

 2020年に米国心臓協会(AHA)発行の「Circulation」に発表された、運動のメリットをまとめた報告によると、中高年成人の運動に関連する心臓突然死のもっとも多い原因は、プラークの蓄積を特徴とするアテローム性動脈硬化症だ。ただし、運動中の心臓突然死の頻度は年間10万人あたり0.31~2.1回であり、多いものではない。

 運動習慣のない男性がもっともハイリスクであり、定期的に運動している男性や女性はローリスクだ。またその研究では、身体的に活動的な人々は50歳時点での平均余命が7~8年長いことも示された。

 「心臓発作の一般的なリスクは、運動習慣のある人よりも運動をしていない人の方がはるかに高い。週に1~2回の運動でもリスクは少し低くなるが、週に5日以上運動している場合、リスクは有意に低下する」とDineen氏は解説する。

 クリス・ノースがドラマで演じたキャラクターは、発作前から心臓病を患っていたという設定だった。しかしDineen氏によると、心臓発作やバイパス手術、弁手術を経験した人、また心不全患者にとっては、心臓リハビリテーションとしての運動が欠かせないという。

 そのような場合の運動は、週に数日の低強度の運動から始めて、徐々に頻度と強度を高めていくとのことだ。そして、「カウチポテトな生活習慣の人が、ある日突然5km走ろうとすると、トラブルが発生する可能性がある」と警告している。

 米カリフォルニア大学デイビス校のUCデイビスヘルスでスポーツ医学部長を務めるBrandee Waite氏は、「人々が新たに運動を習慣的に始めようとする場合、医師の許可を得ることが重要だ」と述べる。

 この点は心臓病や喘息、糖尿病などの慢性疾患のある人では特に重要であり、米国スポーツ医学会も注意を喚起している。Waite氏によると、ポイントはその人の健康状態であって、年齢はあまり関係ないという。

 一方、同氏は、「過去約1年以内に受けたメディカルチェックで医学的な問題がないことが確認されている場合、改めて医師の許可を得ることなく、軽度~中等度の運動を開始して問題ない」と話す。ただし、自分のペースを守って継続し、仮にいつものように運動しているのに胸痛や息切れを感じたら、運動強度を下げるか中止すべきだ。

 万一の場合、周囲の人の対応が鍵となる。話題になったドラマでは、意識を失った夫を主人公である妻が必死に助けようとするシーンが大きな見せ場だった。Dineen氏によると、このような場合には「911(日本の119)に電話すべきであって、自分で病人を搬送しようとすべきでない。

 また、心臓病を経験した人のそばにいる人は、自動体外式除細動器(AED)の設置場所を確認しておく必要がある。場合によっては自宅用にAEDを購入したり、トレーニング中に持ち歩くことも可能だ」とアドバイスする。

 ドラマの中のクリス・ノースは、自転車エルゴメーターでトレーニングをする一方、葉巻愛好家として描かれていた。喫煙は、心臓発作につながる動脈硬化や慢性炎症のリスク因子だ。

 ドラマでは表現されることの少ない、高血圧や脂質異常症、糖尿病などもリスク因子として挙げられる。それらが除外すべき因子であるのに比べて、「運動は間違いなく安全で楽しいものとすることができる」とDineen氏は語る。

 最後に同氏は、「大切なことは、医師から『運動をしてはいけない』と言われない限り、人々は運動をすべきだということだ。また、医師による運動の制限も通常は一時的なものだ。大多数の人にとって、標準的な運動をしている限り心配する必要はない」と、このトピックの結論をまとめている。

[American Heart Association News 2021年12月15日]

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Photo Credit: vgajic/E+, Getty Images.

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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