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2011年02月25日

アルコールは適度であれば2型糖尿病の危険性を減らす? 米研究

 適度な飲酒により、2型糖尿病の発症の危険性が低下するという研究が発表された。ただし、ビール、ワイン、リキュールなどのお酒を、1日に1〜2杯で切り上げられる場合に限るという。それ以上の飲酒量になると危険性はむしろ高まる。
「飲酒量を増やさず、適量を続けられる」が条件
 過度の飲酒は、糖尿病の治療や合併症の予防上、さまざまな悪影響をもたらす。原則として好ましくない食品とされ、肝疾患や合併症などのある患者では禁酒とされることも多い。

 しかし、適度な飲酒であれば、むしろ体に良いという研究が発表された。ハーバード公衆衛生大学院やオランダ応用科学研究所などの研究者らにより行われたこの研究は、米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes」1月号に発表された。

 「アルコールの摂取パターンによっては、2型糖尿病の危険性に影響することがあるが、1日に1、2杯で切り上げられる場合には、まったく飲まない人に比べ糖尿病の危険性はむしろ低下するという結果になった。ただし、飲酒量が適量を超えて増えると、危険性を減らす効果はみられなかった」とオランダのワーゲニンゲン大学のMichel Joosten氏は話す。

 研究者らは研究について「適度な飲酒をした方が2型糖尿病の危険性を低下させるので良いという解釈はできない。2型糖尿病の危険性の高い人は生活習慣を改善し、減量し、運動を増やし、健康的な食事をとるのが効果的であることがあらためて確かめられた」としながらも、「同時に適量の飲酒であれば、続けていれば良い効果をもたらすことが示唆された」と述べている。

 研究では1986〜2006年まで20年間、「保健指導者フォーローアップ研究(HPFS)」に登録された3万8031人の中年の米国人男性の健診データなどを解析した。アルコール摂取については4年ごとに食事に関するアンケートを行い調査した。1990年時点で2型糖尿病と診断されていなかった男性のうち1905人が糖尿病を発症した。

 体重、運動、喫煙習慣、食事など、糖尿病の危険性に影響する要因や、4年間のアルコール摂取費の変化が、2型糖尿病の発症にどのように影響するか調べた。その結果、男性の約75%はアルコール摂取量が安定しており、飲酒量が適度であるとまったく飲まない人に比べ、2型糖尿病の危険性が4年間で約25%低下することが分かった。

 米農務省などの「米国人のための食事ガイドライン」では、ビール、ワインなどのアルコールについて、1日に男性は2杯まで、女性は1杯までを適度な量としている。1杯はビールは12オンス(約340mL)、ワインは5オンス(約142mL)、蒸留酒は1.5オンス(約43mL)程度。

 アルコールが糖尿病の危険性を減らす生理メカニズムについて、さまざまな議論が行われている。研究者は「さらなる研究が必要だが、適度な飲酒は過去2〜3ヵ月の平均血糖値を示すHbA1Cの低下や、脂肪細胞から分泌されインスリン感受性を改善するとされるアディポネクチンというホルモンの増加につながるという報告もある」と指摘している。

Moderate Alcohol Intake May Decrease Men's Risk for Type 2 Diabetes(ハーバード公衆衛生大学院、2011年2月15日)
Changes in Alcohol Consumption and Subsequent Risk of Type 2 Diabetes in Men
Diabetes January 2011 60:74-79; doi:10.2337/db10-1052

関連情報
アルコールは糖尿病の人にとって妙薬か毒か 糖質ゼロなら大丈夫?(糖尿病NET)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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