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2023年06月19日

朝食のみを「低糖質ダイエット」にすると糖尿病リスクが低下 とくに肥満のある人で効果

 2型糖尿病の人は、朝食のみを「低糖質ダイエット」にすると、血糖管理を改善できるという研究が発表された。

 研究グループは、朝食の糖質の量を少し減らして、チーズやヨーグルトなどの乳製品、卵、魚類や肉類などのタンパク質を多く含む食品を加える食事スタイルを勧めている。

 「低糖質ダイエット」は、糖質に偏らないようにして、タンパク質と脂質も不足なくとる食事スタイル。

 朝食をしっかりとり、朝食のみを低糖質ダイエットに変えるのは、すぐに取り組めて、続けやすいことが魅力的だとしている。

朝食のみを「低糖質ダイエット」に切り替え

 とくに肥満のある2型糖尿病の人は、朝食を低糖質・高タンパクにすると、血糖管理が改善する傾向があるという研究をカナダのブリティッシュ コロンビア大学が発表した。

 「その日の最初の食事である朝食に簡単な工夫を加えることで、2型糖尿病とともに生きる人の血糖管理を改善できる可能性があります」と、同大学健康運動科学部のバーバラ オリベイラ氏は言う。

 西洋式の伝統的な朝食は、トーストやシリアル、オートミールなど、高糖質・低脂肪の傾向があるが、朝食の糖質の量を少し減らして、チーズやヨーグルトなどの乳製品、卵、魚類や肉類などのタンパク質を多く含む食品を加えることで、2型糖尿病の人はより適切に血糖管理できるようになるとしている。

糖尿病の人は糖質のとり方に注意深くなる必要が

 糖質は、体のエネルギー源として欠かせない大切な栄養素だか、とり過ぎると食後の高血糖や肥満につながりやすい。

 食事で摂取した糖質は、ブドウ糖として血管に入り、全身のエネルギー源になる。余分なブドウ糖は肝臓に取り込まれるが、ブドウ糖が過剰になると追いつかず、血液中にあふれて血糖値が高くなる。

 高血糖を放置していると、血管にさまざまなダメージがもたらされ、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞などのリスクが高まる。

 血糖値をもっとも早く上昇させるのは糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)なので、ご飯・パン・麺類・お菓子など、糖質を多く含む食品を減らすのは、とくに食後の血糖上昇を抑えるのに効果的とみられている。

 「1日の食事をすべて見直さなければならないわけではありませんが、2型糖尿病の人は、血糖値を早く上げやすい糖質のとり方に注意深くなる必要があります」と、オリベイラ氏は指摘する。

 「その日の最初の食事である朝食を見直して、糖質に偏らないようにして、タンパク質と脂質も不足なくとるようにすることは、血糖変動を抑えるための、すぐに取り組める簡単な工夫になりえます」としている。

関連情報

朝食のみを低糖質ダイエットにするとHbA1cがより低下

 研究グループは、平均年齢64歳の2型糖尿病の男女121人を対象に、ランダム化並行群間比較試験を実施。参加者を、高糖質の朝食をとるグループと、低糖質の朝食をとるグループに分けて比較した。

 朝食として、1つのグループには、[炭水化物8g・タンパク質25g・脂肪37g]を含む低糖質食をとってもらい、もう1つのグループには、[炭水化物56g・タンパク質20g・脂質15g]を含む高糖質食をとってもらった。両グループとも、朝食1食のカロリーを450kcalに調整した。

 その結果、12週間後に、体重・体格指数(BMI)・腹囲周囲径については、両グループであまり差はなかったが、朝食で低糖質食をとったグループでは、血糖値はより低下していた。

 低糖質食のグループは、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映し、血糖管理の指標になっているHbA1cが0.2%より低下した。さらに、低糖質食のグループは、1日の血糖変動の幅がより少なかった。

タンパク質と脂質もバランス良くとる

 「朝食のみを低糖質ダイエットにする戦略は、HbA1cを改善し、1日を通して血糖値の変動を安定させるのに有利であるという結果になりました」と、オリベイラ氏は言う。

 「低糖質ダイエットは近年流行しており、とくに肥満のある糖尿病患者さんによって、血糖や体重の管理を改善するための食事療法のひとつとして有用という報告は増えています」。

 「極端な糖質制限は勧められないにしても、糖質に偏らないようにして、タンパク質と脂質もバランス良くとることは重要です。タンパク質と脂質は、ブドウ糖を含まないため、短時間では血糖値をあまり上げません」としている。

 脂質はカロリーが高いと避けられがちだが、消化をゆっくりにすることから、質と量を意識して上手にとることも重要になる。

 ただし、低糖質ダイエットの長期的な効果と安全性を確かめた調査は少ない。すべての糖尿病患者に低糖質ダイエットが勧められるわけでもなく、また多くの人にとって低糖質ダイエットを長期的に続けるのは難しいという課題もある。

 そこでオリベイラ氏らが提案しているのは、まずは朝食だけを低糖質ダイエットに切り替えてみて、血糖変動や体重にどのような変化があらわれるかを試してみるというアイデアだ。

朝食のみの「低糖質ダイエット」は簡単で続けやすい

 「今回の研究で興味深かったのは、朝食を低糖質に切り替えた参加者では、その後の昼食などで、カロリーや糖質を少なめに摂取していたことです」と、オリベイラ氏は指摘する。

 「昼食と夕食も低糖質にするよう指示していたわけではなく、多くの参加者が自主的にそうしていたのです。朝食を低糖質にすると、それ以外の食事のスタイルにも影響があらわれる可能性があります」。

 朝食をしっかりとり、朝食のみを低糖質ダイエットに変えるのは、すぐに取り組めて、続けやすいことが魅力的だとしている。朝の高血糖に悩まされている患者にとっても、朝食のみを低糖質に変える食事スタイルは利益をもたらす可能性があるとしている。

Cutting breakfast carbs can benefit people with Type 2 diabetes (ブリティッシュ コロンビア大学 2023年5月31日)
Impact of a Low-Carbohydrate Compared with Low-Fat Breakfast on Blood Glucose Control in Type 2 Diabetes: A Randomized Trial (American Journal of Clinical Nutrition 2023年5月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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