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2023年03月22日
「低炭水化物ダイエット」は植物ベースだと糖尿病に良い 1万人以上を34年調査

2型糖尿病とともに生きる人の食事を改善するために、植物性食品をベースにした「低炭水化物ダイエット」は、ひとつの選択肢になるという研究が発表された。
研究は、米国のハーバード公衆衛生大学院によるもので、植物ベースの低炭水化物ダイエットは、糖尿病の人の全体的な死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がんによる死亡リスクの低下に関連していた。
「糖質を制限するだけでなく、運動を習慣として行い、お酒を飲み過ぎず、タバコを吸わないなど、さまざまな健康的な生活スタイルを組み合わせることで、高い健康効果を期待できます」と、研究グループでは述べている。
「低炭水化物ダイエット」は糖質を制限する食事法
低炭水化物ダイエットは、糖質制限ダイエットとも呼ばれている、「食事から糖質を摂取するのを制限する食事法」。 糖質はもっとも血糖値を上げやすい。糖質の摂取量を減らすことで、血糖上昇を抑えることを期待できることから考えられたのが低炭水化物ダイエット。 カロリー制限食に比べてメニュー作りが簡単で取り組みやすく、満腹感を得やすいというメリットがある。 日本でも、1食で摂取する糖質量を20~40gに調整する(コンビニおにぎり1個に含まれる糖質は約40g)、穏やかな糖質制限を勧める食事法が提唱されている。糖尿病を発症した1万人以上の男女を34年調査
米ハーバード公衆衛生大学院の発表した新しい研究によると、植物性食品をベースにした低炭水化物ダイエットは、2型糖尿病の人の早期死亡のリスクの低下に関連している。 研究グループは、2型糖尿病と診断された人々の、炭水化物摂取量と死亡率との関係を調べる、前向きコホート研究を実施した。 「精製され、高度に加工された炭水化物を避けることは、2型糖尿病の発症リスクを下げるために広く推奨されてきましたが、今回の研究は、低炭水化物ダイエットが糖尿病の進展を抑えるのに、どのように役立つかを調べたはじめての研究です」と、同大学院栄養学部のヤン フー氏は言う。 研究グループは、米国で実施されているコホート研究である「看護師健康調査」に参加した7,224人の女性と、「医療従事者追跡調査」に参加した2,877人の男性の、34年間の医療データを分析した。 参加者の全員が、期間中に2型糖尿病を発症していた。参加者に、食事や運動などの生活スタイルと、病歴についての、アンケート調査に回答してもらった。 参加者の食事内容について、動物性のタンパク質と脂肪、植物性のタンパク質と脂肪、高品質の炭水化物、低品質の炭水化物などの摂取状況についてスコアを付けて評価した。 関連情報野菜・全粒穀物・大豆・マメ類・ナッツ・果物などの植物ベースの食事は健康的

食事や運動などの生活スタイル全体を工夫することが大切
「植物性食品を中心に、糖質を制限するのに加え、運動を習慣として行い、適度のアルコール摂取をしない、タバコを吸わないなど、いろいろな健康的な生活スタイルを組み合わせている人は、もっとも強い健康上のベネフィットをえられることも示されました」と、フー氏は述べている。 ただし、低炭水化物の食事スタイルが、すべての糖尿病患者に勧められるわけではなく、食事全体の摂取カロリーと栄養バランスを調整する食事スタイルにも利点はあるとみられるという。食事スタイルも、それぞれの人に合わせて個別化する必要があるとしている。 「今回の研究は、2型糖尿病を管理しリスクを抑制するために、食事スタイルを選択する際に、参考になるものです。毎日の食事は質が重要であることを、あらためて強調しています。今後は、低炭水化物ダイエットがどのような人に勧められるかを解明する研究も必要です」と、同大学院栄養疫学部門のチー スン准教授は述べている。 Plant-based low-carbohydrate diet linked with lower risk of premature death for people with type 2 diabetes (ハーバード公衆衛生大学院 2023年2月28日)Low-Carbohydrate Diet Scores and Mortality Among Adults With Incident Type 2 Diabetes (Diabetes Care 2023年2月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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