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2023年03月23日

「たった5分の運動」でも糖尿病を改善できる 30分ごとに体を動かして血糖や血圧を低下

 座ったまま過ごす時間が長引いたときは、30分ごとに立ち上がり、わずか5分間まわりを歩くだけで、血糖値や血圧値の上昇を抑えられ、健康増進につながることが、米コロンビア大学医療センターの新しい研究で明らかになった。

 「勤務時間でも、休憩をとって、なるべく体を動かすようにすると、2型糖尿病や心臓病などのリスクを大幅に低下できる可能性があります」と、研究者は述べている。

座ったままの時間が長い生活は有害

 座ったまま過ごす時間が長引いたときは、30分ごとに立ち上がり、わずか5分間まわりを歩くだけで、健康増進につながることが、米コロンビア大学医療センターの新しい研究で明らかになった。

 現代生活では、仕事ではデスクワークが増え、家ではテレビやパソコン、スマホなどの画面を見ているスクリーンタイムが長くなっている。そのため、長時間の座りっぱなしの生活をしている人は多い。

 長時間座ったまま過ごす時間が長い生活スタイルは、たとえウォーキングなどの運動を毎日していたとしても、健康に有害であることを示した研究が増えている。

 「多くの医師は成人に対し、なるべく座ったままの時間を減らし、体をより多く動かすことを心がけるようアドバイスしています」と、同センターで行動医学を研究しているキース ディアス氏は言う。

 「しかし、どれくらいの頻度で椅子から立ち上がる必要があるのでしょうか? また、運動の時間はどれくらいあれば良いのでしょうか?」。

30分ごとに体を動かすと血糖と血圧が大幅低下

 そこで研究グループは、11人の成人を対象に、研究室で人間工学にもとづき設計された椅子に8時間座ってもらい、トレッドミルでのウォーキングやトイレ休憩など以外は立ち上がらないよう指示した。

 参加者はふだんは、運動を過度にしていたり、運動不足ではなかった。参加者の血圧値や血糖値など、心臓血管の健康を知るうえでの指標となる検査を行った。

 研究グループは、座ったままの時間を中断して行う、ウォーキングや体操などの身体活動を「スナック運動」と呼んでいる。

 その結果、もっとも最適な「スナック運動」は、30分ごとに立ち上がり、5分間歩くことであることが明らかになった。

 この「スナック運動」により、血糖値と血圧値の両方が大幅に低下した。さらには、ウォーキングなどによる「スナック運動」は、食後の血糖値の上昇を抑えるためにも効果的であることが分かった。

 立ち上がって運動をすることで、1日中座ったままの場合に比べ、食後の血糖値の急上昇は58%減少した。

疲労や気分も大幅改善 気分が良くて楽しい行動であれば続けられる

 「座ったままの時間が長引いた場合は、30分ごとに立ち上がり、たった5分間でも体を動かすことで、収縮期血圧(最高血圧)は4~5mmHg低下しました」と、ディアス氏は言う。

 さらに、座位時間を中断して体を動かすことで、参加者の疲労感は大幅に減り、気分も大幅に改善したと報告している。

 「運動により、気分と疲労にも良い影響があらわれるのは重要です。人は気分が良くて楽しい行動であれば、繰り返し続けられるようになる傾向があります」と、ディアス氏は指摘する。

 なお、30分ごとの1分間のウォーキングや、60分ごとのウォーキングでは、あまり効果はみられなかったという。

 「座ったままの時間を中断し、体を動かすことを毎日の習慣にすると、6ヵ月でさらに大きな効果を期待できるとみています」としている。

 今回の研究の参加者は40代~60代の男女だったが、今後は、糖尿病や高血圧などの慢性疾患のある人や、より幅広い層の人を対象とした研究も計画しているという。

 血糖管理を改善したい糖尿病の人などは、30分ごとの「運動スナック」に加えて、より積極的に運動をする習慣も必要となる可能性も考えられるという。

運動はメンタルヘルスを改善するために薬よりも効果的

 糖尿病とともに生きる人々は、自分の体の状態をよく理解し、健康を維持し、糖尿病合併症を予防するために、食事や運動などの生活スタイルを改善し、医師から処方された薬をきちんと服用したり、インスリン注射や血糖測定を行うなど、毎日の自己管理が欠かせない。

 こうした自己管理の必要性が、糖尿病の人にとって精神的負担になることも多い。糖尿病の人のうつ病のリスクは、糖尿病でない人に比べ、2~3倍に上昇するという報告もある。

 そうした人にとってウォーキングなどの運動は、メンタルヘルスを改善するために、薬よりも効果的という研究を、南オーストラリア大学が発表した。

 「今回の研究で、運動はどのような疾患をもつ人とっても、うつ病や不安症を大幅に軽減するのに効果的であることが示されました」と、同大学ヘルス & ヒューマン パフォーマンス部のベン シン氏は言う。

 「ウォーキングのような有酸素運動だけでなく、筋力トレーニング、ピラティス、ヨガ、ダンス、体操など、あらゆる種類の運動や身体活動は有益であることも分かりました。また、そうした運動は、短時間に集中して行うものでも効果があります」としている。

 研究グループは、1,039件の試験を対象とした97件の研究論文に対し、包括的レビューを行った。対象となった参加者の数は12万8,119人に上る。

 「運動がメンタルヘルスを改善するのに役立つことはこれまでも報告されていますが、多くのエビデンスがあるにもかかわらず、運動療法は第一選択の治療法として広く採用されていません」と指摘している。

 「うつ病や不安症などのメンタルヘルスの不調を管理するための主要なアプローチとして、運動や身体活動を促進する介入プログラムを開発する必要があります」としている。

Rx for Prolonged Sitting: A Five-Minute Stroll Every Half Hour (コロンビア大学アービング医療センター 2023年1月12日)
Breaking Up Prolonged Sitting to Improve Cardiometabolic Risk: Dose-Response Analysis of a Randomized Cross-Over Trial (Medicine & Science in Sports & Exercise 2023年1月12日)
Exercise more effective than medicines to manage mental health (南オーストラリア大学 2023年2月24日)
Effectiveness of physical activity interventions for improving depression, anxiety and distress: an overview of systematic reviews (British Journal of Sports Medicine 2023年3月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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