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2012年03月09日
世界腎臓デー 腎臓病の早期発見には血液検査と尿検査
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症

腎臓病は発症・進展に生活習慣が関わっており、生活習慣の改善や薬物療法などにより進行予防が可能な病気だが、現状では腎疾患患者は増加傾向にある。世界腎臓デーは、増え続けている腎臓病を防ぐため2006年に定められた。そして、腎臓病の早期発見と対策のために「慢性腎臓病」という新しい病気の概念も生まれた。
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世界腎臓デーに合わせてCKD啓発動画研究会が制作した。

腎臓が慢性的に障害されていたり、腎機能が慢性的に低下していたりする状態を総称して慢性腎臓病(CKD)という。慢性腎炎などの病気が原因のこともあるが、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム・脂質異常症などの生活習慣病や肥満が原因になる症例が増えている。
慢性腎臓病で腎機能が低下してしまうと、それを元の状態に戻すことは困難となる。そのため、早い段階で治療を開始し、腎機能の低下を抑えることが大切だ。「基本となるのは原因に対する治療で、糖尿病の人は食事療法や運動療法と併せて、必要に応じて薬物療法を行い、血糖値を適正にコントロールすることが腎臓病の予防にもつながる」と槇野博史・日本慢性腎臓病対策協議会理事長は強調する。
慢性腎臓病が起こると血液中の蛋白が尿中に漏れ出し、蛋白尿が出るようになる。また、腎機能が低下すると血液中の老廃物のひとつであるクレアチニンの血中濃度が高くなる。
慢性腎臓病の診断の指標となる検査値が「GFR値(糸球体ろ過量)」で、1分間に腎臓の糸球体をろ過してできる原尿の量を示す。90以上が正常。60未満は慢性腎臓病と診断され、専門医の治療が必要だ。
GFR値を正確に測定するには厳密な検査が必要だが、最近では定期健康診断の血液検査の項目でもある血清クレアチニン値より推定GFR値を計算することができるようになった。クレアチニンとは血液中の老廃物のひとつで、通常であれば腎臓でろ過され、ほとんどが尿中に排出される。しかし、腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に蓄積される。
検査結果の項目に推定GFR値が書かれていない場合は、日本慢性腎臓病対策協議会のホームページなどに自動換算機能が設けられている。血清クレアチニン値、年齢、性別を入力すると、推定GFR値を知ることができる。
糖尿病腎症は自覚症状のないまま、じわじわと進行していく。尿蛋白検査で陽性反応が出たり、体にむくみが出るなど自覚症状が起こったときには、かなり腎症が進んだ状態で、治療も腎症の進行を遅らせることが中心なってしまう。このため、できるだけ早期に腎症を発見する必要がある。
早期の腎症を発見するためには、微量アルブミン検査が有効だ。この検査は、非常に微量の蛋白(アルブミン)を、感度のよい方法で尿から見出だす比較的新しい検査方法。検査を受ける人にとっては、一般の尿検査の方法と変わらない。
一般に、腎症は血糖コントロールが悪いと、糖尿病の発病から10年ぐらいたつと発症するといわれているが、2型糖尿病の人では、いつ頃発病したのかを正確に知るのは難しい場合がある。一般的に、検査で陽性と診断された人は、腎機能が低下していないか血液検査をあわせて行って、年数回、この微量アルブミン尿検査を受けるのがよいとされている。
「糖尿病である人はすべて、血糖コントロールを良好に保っている人も含めて、予防の意味で少なくとも年1回、微量アルブミン尿の検査を受けてほしい」と日本慢性腎臓病対策協議会の槇野博史理事長は強調している。
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