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2011年10月07日
糖尿病と耐糖能異常が認知症のリスクを高める 久山町研究
久山町研究では1985年から65歳以上の高齢者を対象に老年期認知症と日常生活動作の実態調査が行われ、継続して疫学調査が行われている。今回発表された研究では、血液検査を受けた認知症と診断されていない60歳以上の男女1,017人を対象とした、15年にわたる長期調査が行われた。糖尿病と耐糖能異常(IGT)の判定は75g経口ブドウ糖負荷試験で行った。1988年から2003年におよぶ研究成果は、医学誌「Neurology」に9月20日付で発表された。
期間中に232人が認知症(アルツハイマー病、血管性認知症、全原因による認知症)を発症した。性別や年齢を調整し解析したところ、認知症の発症はあきらかに血糖値が正常の群よりも糖尿病型の群で多く、全原因による認知症は1.74倍、アルツハイマー病は2.05倍、血管性認知症は1.82に上昇していた。
研究を行った九州大学医学研究院教授の清原裕氏によると、今回の研究は糖尿病や耐糖能異常が、認知症発症の有意なリスクファクター(危険因子)であることを明確に示したものだという。糖負荷後2時間値が高い群で認知症の比率が高くなる傾向がみられ、この関連は空腹時血糖値よりも顕著だった。過去の研究でも糖尿病と認知症の関連が示されていたが、久山町研究は規模や追跡調査の精度、参加者の受診率の高さなどが世界的に高く評価されている。
国際糖尿病連合(IDF)によると、世界の糖尿病人口は3億6600万人に増えた。米国では2,600万人近くが糖尿病に罹患しており、うち700万人は未診断。さらに7,900万人が糖尿病前症(pre-diabetes)だという。清原裕氏は「追跡調査より脳血管性認知症やアルツハイマー病など病型別にみた認知症の発症率や危険因子があきらかになる。耐糖能異常および糖尿病は認知症の有意な危険因子であり、その影響は時代とともに増強している。糖尿病をコントロールすることは、今後ますます重要になる」と述べている。
Glucose tolerance status and risk of dementia in the community: The Hisayama Study
Neurology September 20, 2011 vol.77 no.12 1126-1134
九州大学大学院 医学研究院 環境医学分野
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