ニュース
2006年08月29日
「リンゴはからだにいい」は本当の話
- キーワード
- 食事療法
リンゴにはビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富に含まれており、これらの供給源として貴重だ。
果物は、食べ過ぎると血糖コントロールが乱れるおそれがあるので注意が必要だが、さまざまなからだに良い効果をもらたす栄養素が含まれているので、毎日食べるのが望まれる。
果物は、食べ過ぎると血糖コントロールが乱れるおそれがあるので注意が必要だが、さまざまなからだに良い効果をもらたす栄養素が含まれているので、毎日食べるのが望まれる。
1日1/2個のリンゴは医者の仕事を減らす?
リンゴなどの果物に含まれる炭水化物は、ほとんどがグルコース(ブドウ糖)と同じ単糖で、体内への吸収(血中への放出)が早いという特徴がある。そのため食べ過ぎると血糖の上昇や血中の中性脂肪の増加をまねく場合があるので、糖尿病患者にとっては注意が必要とされている。
中性脂肪はからだの中でエネルギー源として使われるが、過剰に摂るとエネルギーとして使いきれず、余った分は脂肪細胞に蓄積される。血液中の中性脂肪などが多過ぎる状態を「高脂血症」と呼ぶ。糖尿病の人は特に中性脂肪が多くなりやすい。
一方で、リンゴが健康に良い効果をもたらすことが明らかになっている。欧州には「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という諺があり、実際にリンゴを毎日食べる人ではがん、高血圧、脳血管疾患、心臓病などの病気が少ないという研究が報告されている。
糖尿病の食事療法では、果物を1日80kcalを摂ることが勧められている。80kcalリンゴ半分(150g)にあたる。
リンゴは食物繊維が豊富
リンゴには、水溶性食物繊維であるペクチンが多く含まれている。ペクチンは人間の消化酵素によって消化吸収されることがなく、コレステロールの吸収を抑制する、ブドウ糖の吸収を穏やかにするなどの効果がある。
リンゴの消費が多い欧州では1960年代頃からペクチンについての研究報告が行われた。その多くで食事でリンゴを多く摂っている人の血中コレステロール値が、統計的に有為に減少すると報告された。
イタリアで行われた研究では、“悪玉コレステロール”と呼ばれる低比重リポ蛋白(LDL)が高い中年の高脂血症患者では、リンゴを食べることでコレステロールを抑えられるという結果が示された。
リンゴのペクチンを1日15g摂取するグループと摂取しないグループとを比較したところ、前者では有為に血中コレステロールと中性脂肪が低下し、“善玉コレステロール”と呼ばれる高比重リポ蛋白(HDL)が増加した *。
また、米国のデラウエア大学で行われた研究では、炭水化物の摂取による血糖値と満腹感の関連について調べたところ、リンゴをよく食べる人は食後の血糖値の上昇が少なく満腹感が続きやすい傾向があると示された。興味深いことに、日常習慣として運動を行いリンゴをよく食べる人では、食後の血糖値の上昇が最も少なかったという **。
ポリフェノールが中性脂肪値を抑制
リンゴに豊富に含まれるポリフェノール類をマウスに摂取させると、血中の中性脂肪値の上昇が抑制されたという実験結果を、アサヒビールが今年3月に発表した。ポリフェノールを食事と一緒に摂ることで、脂質の消化吸収を抑制する作用が得られるというリンゴは生で食べるのが一番
リンゴは、生のリンゴ、焼リンゴ、パイの上のスライスされたリンゴ、リンゴジュースなど、果物の中でも特に多くの食品形態がある。
干しリンゴや缶詰などは、ビタミンの含有量が少ないが糖度は高い。糖尿病の食事療法では嗜好食品として扱われる。濃縮還元ジュースなどは簡単に飲むことができるが、生のリンゴに比べてビタミンや食物繊維は少なめになる。エネルギーの摂り過ぎにもつながりやすいので注意が必要だ。できれば、生のリンゴを食べるのが望ましい。
また、リンゴの食物繊維のポリフェノールは皮の部分に特に多く含まれているので、できれば皮ごと食べるのが効果的だ。実だけでも十分に多く含まれている。「果物を皮ごと食べるのはどうも」という人は、実だけでよい果物をおいしく食べてガン予防・中性脂肪減少
●詳細はアサヒビール(株)のサイトへ(プレスリリース)
* Groudeva J et al. Application of granulated apple pectin in the treatment of hyperlipoproteinaemia. Folia Medica, 204:374-378, 1997.
** Krishnamachar S et al. The influence of different carbohydrate sources on blood glucose levels and satiety effect of physical activity on blood glucose response. Nutrition & Food Science. 41F: 29-40. 1987.
*** USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 18 (2005)、他
** Krishnamachar S et al. The influence of different carbohydrate sources on blood glucose levels and satiety effect of physical activity on blood glucose response. Nutrition & Food Science. 41F: 29-40. 1987.
*** USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 18 (2005)、他
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
食事療法の関連記事
- 「和食」が認知症リスクを低下 日本型の食事は脳の健康にも良い 糖尿病の人は認知症リスクが高い
- どんな食事スタイルの人が糖尿病リスクが高い? 食事を改善する簡単な方法「食べることに意識を集中」
- 暑い夏の水分補給 甘い飲み物を水に置き換えると糖尿病リスクは低下 食事改善にも役立つ「上手な水の飲み方」
- スマホで写真を撮ると食事改善がうまくいく 糖尿病の治療に活用 食事の振り返りができる
- 糖尿病の人は胃がんのリスクが高い どうすれば対策できる? 胃がんを予防するための6つの方法
- ブルーベリーが腸内環境を健康にして糖尿病や肥満を改善 メントールから抗肥満・抗炎症の化合物
- 糖尿病の人は腎臓病のリスクが高い 腎臓を守るために何が必要? 「糖尿病・腎臓病アトラス」を公開
- 緑茶を飲んでいる人は糖尿病リスクが低下 心臓病や脳卒中が減少 緑茶は歯周病の予防にも良い?
- 今年も猛暑に 「良い睡眠」で対策 睡眠不足は糖尿病を悪化 暑い夏の夜でもぐっすり眠る3つの方法
- 植物性食品が中心の食事スタイルが糖尿病リスクを低下 心臓血管病・がん・うつ病のリスクも減少