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2024年11月11日

脳の健康を守る8つの生活習慣 糖尿病や合併症のリスクが減少 良い睡眠をとることも大切

 中年期に、不健康な食事・運動不足・睡眠障害など、悪い生活スタイルが続くと、とくに糖尿病・高血圧・高コレステロールなどのある人は、年齢を重ねると脳卒中・認知症・うつ病など、脳の健康が損なわれる可能性が高くなることが明らかになった。

 中年期に寝つきが悪い、眠りが浅いなど、睡眠の質が悪い人は、年齢を重ねると、脳の健康状態が悪い兆候があらわれやすいことも分かった。

 健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」を実行している項目が多い人ほど、脳の健康が保たれており、脳卒中、認知症、老年期うつ病などの神経疾患の発症が少ないことが明らかになった。

健康的な生活スタイルによりで脳の健康が改善

 中年期に、不健康な食事・運動不足・睡眠障害など、悪い生活スタイルが続くと、とくに糖尿病・高血圧・高コレステロールなどのある人は、年齢を重ねると脳卒中・認知症・うつ病など、脳の健康が損なわれる可能性が高くなることが明らかになった。

 研究は、米国神経学会(AAN)が発表したもので、米国国立衛生研究所(NIH)の支援を得て行われた。研究グループは、平均年齢56歳の31万6,127人の中高年を5年間追跡して調査した。

 「すべての人にとって脳の健康を維持することは、幸福に年齢を重ねるために必要です。中年期に健康的な生活スタイルを選ぶと、その後の人生で脳の健康に好ましい影響があらわれます」と、米イェール大学で老年学を研究しているサンティアゴ クロッキアッティ-トゥオッツォ氏は言う。

8つの健康的な生活スタイル「ライフ エッセンシャル 8」

 米国心臓学会(AHA)は、健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」を提案している。その8項目とは、▼食事を改善する、▼運動不足を解消する、▼健康的な体重を維持する、▼コレステロールを下げる、▼血圧値を下げる、▼血糖値を下げる、▼睡眠の質を高める、▼タバコを吸わない。

 研究グループは、この「ライフ エッセンシャル 8」の実行度が、中高年者の健康にどのように影響するかを調べた。

 その結果、8項目のうち実行している項目が多い人ほど、脳の健康が保たれており、脳卒中、認知症、老年期うつ病などの神経疾患の発症が少ないことが明らかになった。

 もっとも多く実行している人は、神経疾患の発症する可能性が0.7%に抑えられていたが、もっとも実行していない人は、リスクは1.8%と2倍以上に上昇した。

 「8つの健康習慣は、脳の健康に潜在的なメリットをもたらすことが示されました。脳の健康を守るための取り組みは、すぐにはじめることができます」と、クロッキアッティ-トゥオッツォ氏は指摘している。

 なお、今回の研究は観察研究で、「ライフ エッセンシャル 8」の実行度と神経疾患の発症の関連について、因果関係が証明されたわけではなく、社会環境や人種・民族などの社会的要因の影響も考えられるので、今後さらに研究を続ける必要があるとしている。

睡眠を改善することも大切
中年期の睡眠不足は脳の老化を早める

 米国神経学会が発表した別の新しい研究では、中年期に寝つきが悪い、眠りが浅いなど、睡眠の質が悪い人は、年齢を重ねると、脳の健康状態が悪い兆候があらわれやすいことが明らかになった。

 「睡眠障害を放置していると、中年期の早い段階で、脳の老化が3年近く早まることが分かりました」と、米カリフォルニア大学で精神医学を研究しているクレマンス カヴァイレス氏は言う。

 「脳の健康を保つために、睡眠を改善することが大切です。睡眠障害が、老後の思考力や記憶力の低下と関連し、認知症のリスクが高めることは、これまでの研究でも示されています」としている。

 研究グループは、研究開始時に平均年齢が40歳だった589人の成人を対象に、睡眠に関するアンケート調査に答えてもらい、脳スキャンなどの検査も行い、15年間追跡して調査した。

 参加者に、「ふだん寝つきが悪いですか?」「夜中に何度も目が覚めますか?」「とても早い時間に目覚めることがありますか?」といった質問に答えてもらい、▼睡眠時間が短い、▼睡眠の質が悪い、▼寝つきが悪い、▼眠り続けるのが難しい、▼早朝に目が覚める、▼日中に眠気があるという6つの睡眠障害の特徴を特定した。

 その結果、5年間にわたり一貫して睡眠の質が悪かった人は、睡眠を十分にとれている人に比べ、脳の老化が平均して2.6年近く早まることが明らかになった。

 「睡眠を改善し脳の健康を保つために、睡眠スケジュールを調整する、運動を習慣化する、就寝前にカフェインやアルコールを摂取しない、ストレス解消やリラクゼーションの方法を学ぶなど、若いうちから対策することが重要です」と、同大学神経科学研究所のクリスティン ヤッフェ氏は述べている。

 「今後の研究では、睡眠の質を改善する新しい方法の開発や、とくに若い人の脳の健康に対する睡眠の長期的な影響などを調査する予定です」としている。

Live Well, Think Well: Research Shows Healthy Habits Tied to Brain Health (米国神経学会 2024年10月23日)
Life's Essential 8 and Poor Brain Health Outcomes in Middle-Aged Adults (Neurology 2024年11月26日)
Could Poor Sleep in Middle Age Speed Up Brain Aging? (米国神経学会 2024年10月23日)
Association of Self-Reported Sleep Characteristics With Neuroimaging Markers of Brain Aging Years Later in Middle-Aged Adults (Neurology 2024年10月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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