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2024年10月01日

糖尿病の治療をしっかり行うと歯周病も改善 糖尿病と歯周病は密接に関連 糖尿病の「医科歯科連携」とは?

 糖尿病の治療を行い、血糖管理を改善すると、糖尿病の人がかかりやすい歯周病の炎症も改善することが、大阪大学の新しい研究で明らかになった。

 これまで、歯周病を治療することで、糖尿病の血糖管理も改善することが示されていたが、今回の研究により、糖尿病をしっかり治療することで、歯周病にも好ましい影響があらわれることが分かった。

 糖尿病のある人の歯周病を改善するためにも、早期から糖尿病の治療をしっかり行うことが重要であることが示された。

糖尿病のある人は歯周病のリスクが高い

 糖尿病の治療を行い、血糖管理を改善すると、糖尿病の人がかかりやすい歯周病の炎症も改善することが、大阪大学の新しい研究で明らかになった。

 糖尿病のある人は歯周病になりやすく、歯周病になると血糖管理がより難しくなるという悪循環におちいることが知られている。

 糖尿病のある人の歯周病の発症率は、糖尿病のない人に比べて2~3倍高いことが示されている。

 一方、歯周病を治療することで、血糖管理の指標であるHbA1cが低下し、糖尿病が改善することが、これまでの研究で明らかになっている。

 歯周病は気づかぬうちに進行し、進行すると歯が抜けてしまうこともある、おそろしい病気だ。歯周病はある日突然、重度の症状がでるのではなく、徐々に進行していく。

 炎症が歯肉に起こる「歯肉炎」は、歯周病の初期段階で、この段階では痛みがあまりない。しっかり治療していれば、症状はおさまっていくが、放置していると、歯を支えている歯槽骨が破壊されて歯を失う原因になる「歯周炎」に進行してしまう。

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糖尿病の治療をしっかり行うと歯周病の炎症も改善

 大阪大学の研究グループは今回、同大学附属病院に入院した2型糖尿病のある41~73歳の成人29人を対象に、糖尿病の集中治療を行い、糖尿病の治療の前後の全身的な臨床指標や、歯科的指標を調べた。期間中に、歯科的な介入は行わず、糖尿病治療のみを行った。

 その結果、糖尿病の治療により、2週間の血糖管理の状態を反映するグリコアルブミンが改善しただけでなく、歯周炎の評価指標である「PISA」も改善した。

 さらに、PISAの改善度の大小により、参加者を2群に分けて比較したところ、PISAが大きく改善した群では、糖尿病治療前のインスリン分泌能を示すCペプチドが有意に高値を示し、さらに糖尿病性神経障害の指標や末梢血管障害の指標も高値(低い重症度)を示した。

 このことから、糖尿病があり歯周病が大きく改善した群は、インスリン分泌能が高く、糖尿病性神経障害や末梢血管障害の重症度が低いという特徴があることが明らかになった。

糖尿病の治療により血糖管理が良くなると歯周炎も改善
出典:大阪大学、2024年

糖尿病患者を診療している内科と歯科が連携 より良い治療を実現

 歯周病は糖尿病の6番目の合併症と言われるほど、糖尿病と歯周病はたがいに影響を与えあうことが分かっている。

 そのため、糖尿病患者を診療している医療機関と、歯科の医療機関が、それぞれ糖尿病や歯周病のある患者を相互に紹介し、協力しながらケアしていく「医科歯科連携」が進められている。これにより、糖尿病と歯周病の早期発見と治療、重症化予防が可能になると考えられている。

 歯科で治療を受けることは、ただ歯を治すだけでなく、糖尿病などの内科の予防・改善にも役立つと考えられている。糖尿病や歯周病のある人は、内科と歯科の両方を受診することが勧められている。

 今回研究は、大阪大学大学院歯学研究科の井上萌氏、久保庭雅恵教授、医学系研究科の片上直人氏、西澤均准教授、下村伊一郎教授、工学研究科の福﨑英一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に掲載された。

 「今回の研究で、糖尿病を治療することで、血糖管理だけでなく、歯周病の炎症状態の指標であるPISAも改善することを明らかにしました」と、研究者は言う。

 「PISAの改善には、糖尿病治療前のインスリン分泌能や、糖尿病合併症や併発症の重症度が関与していることも明らかになりました」としている。

 「これらの結果から、糖尿病のある人の歯周病を改善するために、早期の糖尿病治療が重要であることが分かりました。研究により、糖尿病と歯周病の相互関係のメカニズムが解明され、糖尿病初期からの医科歯科連携が促進されることが期待されます」と、研究者は述べている。

大阪大学歯学部・大学院歯学研究科
Periodontal tissue susceptibility to glycaemic control in type 2 diabetes (Diabetes, Obesity and Metabolism 2024年8月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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