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2023年12月14日

糖尿病薬「メトホルミン」が細い⾎管が障害される脳梗塞のリスクを減少 肥満のある人の体重管理にも有用

 メトホルミン(ビグアナイド薬)は、2型糖尿病などの治療に広く用いられている血糖値を下げる薬。

 メトホルミンが、細い⾎管が障害される脳梗塞である「脳⼩⾎管病」のリスクを減少することが、日本人を対象とした研究で確かめられた。

 メトホルミンは、体重増加があまり起こらず、心臓病や脳梗塞などの予防にも有用という報告も発表されている。

糖尿病の人に多い脳梗塞 予防が重要

 メトホルミン(ビグアナイド薬)は、2型糖尿病などの治療に広く用いられている血糖値を下げる薬。肝臓で糖がつくられる糖新生を抑えることで血糖を下げ、消化管からの糖の吸収を抑えたり、筋肉などでのインスリンの働きを高める作用などもある。

 メトホルミンは、他の薬と併用しなければ低血糖を起こす危険性は低く、体重を増やしにくい薬なので、肥満のある糖尿病の人にもよく利用されている。

 まれに乳酸アシドーシスと呼ばれる副作用を起こすこともあり、とくに脱水やお酒の飲みすぎなどに注意が必要となるが、糖尿病の治療に長く使われている実績があり、安全で薬価も安い薬だ。

 一方、糖尿病のある人にも多い脳梗塞は、脳の血管の一部が狭くなったり、詰まったりして、血液が流れなくなり、その部分の脳機能がダメージを受ける病気。

 適切な治療を行わないと、命が助かっても運動機能や言語機能などに障害が残ることがあり、日常生活に支障をきたすことも少なくない。

 脳梗塞は予防が重要で、糖尿病の人は血糖値をしっかり管理し、血圧が高くなっている人は下げることが大切となる。

「脳⼩⾎管病」は細い⾎管が障害される脳梗塞

 脳梗塞の治療は進歩している。脳の血管に血の塊(血栓)ができたり、あるいは心臓でできた血栓により脳血管が詰まったときは、詰まった血管を再開通させる治療が行われる。

 血栓を溶かす薬を注射したり、カテーテルを血管まで通し血の固まりをとって再開通させる血管内治療などが行われている。血を固まりにくくする薬も使われている。

 一方で、とくに脳⼩⾎管病は、脳梗塞のなかでも細い⾎管の閉塞によるもので、⼀般的に⾎管内治療を行うことができず、予防も難しいとみられている。そのため、脳⼩⾎管病の効果的な予防法や治療法が望まれている。

 新潟大学などの研究グループは今回、糖尿病患者で、脳梗塞発症前からメトホルミンを内服していると、脳⼩⾎管病を発症した際に、⼊院時の神経症状の重症度が軽減されることを明らかにした。

 脳梗塞発症前からのメトホルミン内服は、脳⼩⾎管病患者の退院時の機能予後を改善するとしている。

 メトホルミンは、近年では⾎糖調整作⽤に加えて、脳神経に対する保護作⽤を有し、脳⾎管障害のみならず、新型コロナの後遺症の予防や、認知症のリスク軽減に有効であることが報告されているという。

関連情報

メトホルミンを服用していると脳⼩⾎管病のリスクが減少

 研究グループは、⾎管内治療の適応がない2型糖尿病の脳梗塞患者で、脳梗塞発症前のメトホルミン治療が、神経症状の重症度と退院時の症状改善に関連するかなどを明らかにする調査を行った。

 新潟⼤学総合病院脳神経内科と国⽴循環器病研究センター脳神経内科に⼊院した、⾎管内治療の適応とならなかった脳梗塞患者で、⼊院前からメトホルミンを含めた何らかの糖尿病薬を内服していた160⼈を対象に調べた。

 その結果、脳梗塞発症前のメトホルミン治療が、とくに細い⾎管が障害される脳梗塞(脳⼩⾎管病)のタイプの患者で、神経症状の重症度軽減と退院時の症状改善に関係することを明らかにした。

 実際に、メトホルミンを内服している患者とそうでない患者を⽐べると、⾎液中の炎症を反映する指標(好中球/リンパ球⽐や炎症性サイトカインIL-6値)が、メトホルミンを内服している患者の⽅が低く、炎症が抑えられていることが示された。

脳梗塞発症前からのメトホルミン治療が、脳梗塞発症時の神経症状の重症度を軽減し、機能予後を改善することを明らかに

メトホルミン内服群は⾮内服群より、退院時に⽇常⽣活が⾃⽴している割合が多い

出典:新潟⼤学、2023年

 研究グループは、「糖尿病の治療は、⼼臓や腎臓の状態によっても治療の選択は異なります。すべての患者さんで有効ではないことは注意が必要です」としながらも、「脳梗塞発症前のメトホルミン治療が、とくに細い⾎管が障害される脳梗塞(脳⼩⾎管病)の患者さんで、神経症状の重症度の軽減と退院時の症状改善に関係することを明らかにしました」と述べている。

 「今後は、脳梗塞発症前の具体的なメトホルミンの投与量や投与期間を検討することが、実際の治療のために必要です。メトホルミンの投与期間と投与量に関する前向き検証研究を実施することを、今後の課題としています」としている。

メトホルミンは肥満のある人の
体重減少を維持するのにも役立つ

 メトホルミンは、体重を増やしにくい薬なので、肥満のある糖尿病の人に使われることも多い。

 米国内科学会(ACP)の発表した研究では、糖尿病予備群と判定された肥満のある人が、食事や運動などの生活スタイルの改善とともに、メトホルミンによる治療を受けると、体重減少を長期間維持でき、糖尿病リスクも減少することが示されている。

 血糖値が高いことや肥満、不健康な食事、運動不足などが、2型糖尿病を発症する危険因子として知られている。米国で実施された「糖尿病予防プログラム」(DPP)は、生活スタイルの改善とメトホルミンの服用により、糖尿病発症を予防または遅延させることができるかを調べた研究。

 3,234人を対象に15年追跡した結果、2型糖尿病のリスクがもっとも低かったのは、生活スタイルを改善し、メトホルミンの服用を続けたグループであることが明らかになった。

 とくに、試験の最初の1年で体重を5%減らすのに成功し、それを維持できていた人では、15年間の糖尿病リスクが低いことが分かった。

 減量を成功させるために、食事や運動などの生活スタイルの改善がともなうことが重要で、治療薬の服用のみを行い、生活改善にはあまり取り組むなかった人では、糖尿病リスクは減らなかった。

 メトホルミンなどのビグアナイド薬は、体重増加があまり起こらず、心臓病や脳梗塞などの予防にも有効であるという報告がある。肥満があり、肝腎障害や心不全などのない2型糖尿病の人の治療でよく使われている。

 なお、メトホルミンは主に2型糖尿病の治療薬として使用されており、医師が処方する「処方箋医薬品」に該当する。「ご自分の糖尿病や肥満が気になる人は、かかりつけ医に相談することをお勧めします」と、研究者は述べている。

新潟⼤学脳研究所 脳神経内科学分野
国⽴循環器病研究センター 脳神経内科
Neuroprotective effects of oral metformin before stroke on cerebral small-vessel disease (Journal of the Neurological Sciences 2023年12⽉2⽇)
Metformin may help patients maintain weight loss long-term (米国内科学会 2019年4月22日)
Long-Term Weight Loss With Metformin or Lifestyle Intervention in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study (Annals of Internal Medicine 2019年4月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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