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2023年03月16日

糖尿病の人は「脳卒中」にご注意 「前触れ発作」が起きたときは、すぐに医療機関を受診

 脳卒中は、脳の血管が急にやぶれたり、つまったりして、脳の血液の循環に障害をきたし、さまざまな症状を引き起こす病気。

 脳卒中の「前触れ発作」が起きた場合は、たとえ症状がおさまっても、発症予防のための治療をただちに開始する必要がある。

 脳卒中の前触れ発作が起きた場合は、たとえ症状が1時間くらいでおさまったとしても、今後、脳梗塞を発症するリスクが高い危険な状態にある。

 日本人を対象とした調査で、糖尿病の人は脳卒中の発症リスクが2~3倍高いことが示されている。糖尿病とともに生きる人は、脳卒中にとくに注意が必要となる。

糖尿病や高血圧のある人は脳卒中にご注意

 脳卒中は、脳の血管が急にやぶれたり、つまったりして、脳の血液の循環に障害をきたし、さまざまな症状を引き起こす病気。

 脳卒中は、主に脳の血管がつまってしまう脳梗塞と、脳の血管がやぶれる脳出血の2種類ある。このうち脳梗塞は、動脈硬化で血管が狭くなったり、血管が老化したりすることが主な原因となる。心臓が原因で発症することもある。

 脳卒中の発症に大きく関わる危険因子として、▼高血圧、▼脂質異常症、▼糖尿病、▼心房細動などがある。体質も含め高血圧や糖代謝異常になりやすいという遺伝的要因に、食事や運動などの生活スタイル、ストレスなどが加わると、発症のリスクが高まる。

症状がすぐに消えた場合でも緊急の治療が必要

 米国脳卒中協会(ASA)の発表した新しい研究によると、脳卒中の「前触れ発作」が起きた場合は、たとえ症状がおさまっても、発症予防のための治療をただちに開始する必要がある。

 「脳卒中の前触れ発作が起きた場合は、たとえ症状が1時間くらいでおさまったとしても、今後、脳梗塞を発症するリスクが高い危険な状態にあります。ただちに救急車を要請してください」と注意を呼びかけている。

 この脳卒中の前触れ発作は、「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれている。TIAが起こると、一時的に脳に血流が流れなくなり、脳梗塞の症状が出るが、短時間でおさまり、やがて症状は消失する。

 しかし、適切な治療を受けずに放置していると、数日から数ヵ月で本格的な脳梗塞を起こす可能性の高い危険な状態だ。

 TIAの症状は、脳梗塞と同じで、▼急に手足に力が入らなくなったり、顔がまひする、▼言葉がしゃべりにくくなるなど。症状の持続時間は、5~10分程度から1時間以内であることが多い。

脳卒中の発症時に確認すべき「FAST」

 ASAでは、脳卒中の警告サイン「FAST」について、注意を呼びかけている。

 FASTとは、脳卒中発症時の症状である「顔の麻痺 (Face)」「腕の麻痺 (Arm)」「発語の障害 (Speech)」と、「時間 (Time)」の頭文字であり、それらの症状があらわれたら、「速やか (Fast)」に治療を受ける必要があることを端的に示すフレーズだ。

検査を受ければ脳卒中を早期発見・治療できる

 米国心臓学会(AHA)の発表によると、米国では年間に約24万人がTIAを経験しているが、症状が1時間以内に消失することが多いため、「多くの人が深刻な病気や発作ではない」と思い違いをしてしまう傾向があるという。

 しかし実際には、TIAが疑われる人の5人に1人は、3ヵ月以内に本格的な脳卒中を発症しており、さらに半分は2日以内に発症しているという。

 もしも詳しい検査を受けたなら、脳卒中を早期発見でき、治療できる可能性が高い。

 「高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常症、喫煙習慣などは、心血管疾患のリスク要因となります。これらのある人は、脳卒中やTIAのリスクが高くなるので、とくに注意が必要となります」と、コネチカット州にあるイェールニューヘブン病院の神経学・脳卒中部長のハーディク アミン氏は言う。

 「TIAのリスクを高めるその他の要因には、末梢動脈疾患、心房細動、睡眠時無呼吸症候群、冠動脈疾患などもあります。さらに、以前に脳卒中を発症したことのある人は、TIAのリスクが高くなります」としている。

糖尿病の人は脳卒中の発症リスクが2~3倍高い

 日本人を対象に実施されている大規模な調査である「JPHC研究」で、糖尿病のある人は、脳卒中と脳梗塞の発症リスクが高いことが示されている。

 糖尿病の人は、脳卒中と脳梗塞の発症リスクが高く、全脳卒中の発症リスクは、男性で1.64倍、女性で2.19倍に上昇することが示された。脳梗塞の発症リスクも、男性で2.22倍、女性で3.63倍に上昇した。

 この調査では「糖尿病」は、空腹時血糖値が126mg/dL以上、随時血糖値が200mg/dL以上、もしくは糖尿病治療中の人が判定された。

 「JPHC研究」は、日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で、国立がん研究センターを中心に実施されている多目的コホート研究。

 研究は、全国の40~69歳の男女約3万6,000人が協力し、平均12年間追跡して行われた。

脳卒中が疑われるとき、どんな検査を受けられるか?

 脳卒中が疑われたら、医療機関では、出血の有無を確認し、加えて脳梗塞の起こっている部位を特定するために画像診断が行われる。

 脳出血も脳梗塞も、場合によっては麻痺などの後遺症が残ったり、生死にかかわることもあるため、早急に検査を行うことが重要となる。

 脳卒中の検査では、「コンピュータ断層撮影(CT)」や「核磁気共鳴画像(MRI)」などの検査が行われている。

 このうち、CT検査は、X線撮影をコンピュータで解析して、脳の断層像(輪切り)を映し出し、脳卒中の有無や種類を判定するもの。

 また、MRI検査は、磁力を使って脳の断層像を映し出すもの。CTより鮮明な画像がえられ、出血部分、梗塞部分などを発症後すぐに描画できる。

全国に「脳卒中相談窓口」が

 脳卒中を発症し、麻痺などの後遺症に悩まされている人は多い。リハビリをどう進めるか、生活や仕事への不安、再発の恐怖など、さまざまな困難がある。

 日本では、そうした人に向けて、「脳卒中相談窓口」が公開され、患者や家族の対する情報提供や相談支援が行われている。

 日本脳卒中学会によると、「脳卒中相談窓口」は大学病院や中核病院に設置され、全国におよそ250ヵ所が設置される予定。

 対象となるのは、その施設に入院または通院していた患者やその家族だが、通院や入院をしていなくても受け付けてくれる施設もあるという。

 窓口では、脳卒中専門医の資格をもつ医師や、脳卒中に精通した看護師、日本脳卒中学会が主催する講習会を受講した「脳卒中療養相談士」などが相談に応じてくれる。

一般社団法人 日本脳卒中学会

一過性脳虚血発作は、早期に完成型脳梗塞を発症する可能性が高い (国立循環器病研究センター)

Stroke symptoms require emergency treatment even if they quickly disappear, new report says (米国脳卒中協会 2023年1月19日)
Diagnosis, Workup, Risk Reduction of Transient Ischemic Attack in the Emergency Department Setting: A Scientific Statement From the American Heart Association (Stroke 2023年1月19日)
Diabetes Mellitus and Risk of Stroke and Its Subtypes Among Japanese: The Japan Public Health Center Study (Stroke 2011年8月11日)

一次脳卒中センター(PSC)コアについて (一般社団法人 日本脳卒中学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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