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2023年12月18日

「座りすぎの生活」の悪影響が世界的に注目される理由 立ち上がって体を動かし糖尿病リスクを低下

 長時間の座位行動(座りすぎ)がもたらす健康への悪影響が、世界的に注目されている。

 1日に8時間以上を座ったまま過ごしていて運動不足の人は、肥満や糖尿病が多く、死亡リスクも高いことが示されている。

 1日のうちで座っている時間を減らして、立ち上がって体を動かす時間に置き換えることで、糖尿病を改善できることも分かっている。

 1日の座位行動を減らすための具体的な対策が提案されている。

座りすぎの生活は体に悪い 日本人は座位時間がもっとも長い

 長時間の座位行動(座りすぎ)がもたらす健康への悪影響が、世界的に注目されている。

 「座位行動」とは、座っていたり、テレビを観たりしている状態のこと。多くの人は仕事中に座ったままデスクワークをして、車などによる移動や通勤時も座っていることが多く、余暇時間もテレビ視聴やネット・ゲームなどの娯楽を、座ったまま楽しんでいる。

 運動や身体活動の強度は、メッツ(METs)という単位であらわされる。厚生労働省によると、通常の歩行の運動強度は3メッツくらいだが、座位行動は1.5メッツ以下と少ない。

 世界の20ヵ国の座位時間を調べた調査では、日本人は座位時間がもっとも長く、座りすぎのリスクが高いことが示された。

座りすぎはなぜ良くない? 肥満や糖尿病のリスクが上昇

 米国のメイヨークリニックによると、座ったまま過ごす時間の長い生活スタイルは、高血圧・高血糖・内臓脂肪の増加・コレステロール値の上昇などを引き起こす。座ったままの生活は、肥満や2型糖尿病、心血管疾患、がんなどのリスクを高めるという。

 研究グループは、座位時間と活動レベルについて調べた13件の研究を分析した。その結果、1日に8時間以上を座ったまま過ごしていて運動不足の人は、肥満が多く、死亡リスクも高いことが判明した。

 7万人近くの看護師を対象に調査した研究でも、テレビの視聴時間が長いと、運動習慣のあるなしにかかわらず、2型糖尿病のリスクが1.7倍に上昇することが示されている。

座っている時間を減らして運動に置き換え

 1日のうちで座っている時間を減らして、わずか数分間のウォーキングなどの運動に置き換えるだけで、心臓の健康が目に見えて改善することが、英国のユニバーシティ カレッジ ロンドンなどの研究で明らかになった。

 座ったまま過ごす時間を減らして、中強度の活発な運動を行うと、心臓を健康にする高い効果をえられることが分かった。逆に、座ったまま過ごす時間が長いことは、心臓の健康に悪い影響をもたらす。

 「座ったまま過ごす時間を減らして、わずか5分間でも歩いてみるなど、強度を高めた運動をすることが、健康に大きな効果をもたらすことが分かりました」と、同大学スポーツ・運動・健康研究所のジョー ブロジェット氏は言う。

 「1日のうちで座ったまま過ごす時間の長い人は、立ち上がって、早歩きや階段のぼりなど、心拍数を上げて呼吸を少し速めるような活発な運動を、たとえ1分や2分でも良いので行うことをお勧めします」としている。

座っている時間を減らす対策が必要

 「座ったまま過ごす時間をなるべく減らして、体をより多く動かすようにすると、健康状態を改善できることが、多くの研究で示されています」と、メイヨークリニック スポーツ医療センターの所長であるエドワード ラスコウスキー教授は言う。

 「機会をみつけて、座位時間を中断して、立ち上がって体を使うことをお勧めします」としている。

 100万人以上を対象とした研究では、ウォーキングなどの活発な運動を1日60分から75分行うことで、座りすぎがもたらす悪影響を打ち消されることが示されている。

 1日の座ったままの時間を減らすために、ラスコウスキー教授は次のことを勧めている。

  • 座位時間が30分続いたら、立ち上がって休憩をとる。
  • 電話で話したり、テレビを視聴しているときは、なるべく立つようにする。
  • たとえゆっくりとした歩行であっても、座位行動に比べれば身体活動の強度を上げられる。歩くことで、体はより多くのカロリーを消費でき、体重が減り、血糖を下げるインスリンの働きを高めることを期待できる。
  • 会議や打ち合わせは、会議室で座って行うのではなく、立ったまま行ったり、歩きながら行うようにする。
  • 自宅での余暇時間にスマートフォンやパソコンの画面を見るときは、トレッドミル(歩行マシン)を設置して、歩きながら見るようにする。
  • デスクワークをしている人は、立ったまま仕事ができるスタンディングデスクを試してみる。高さのあるハイテーブルでも代用できる。

立ち上がって体を動かすと糖尿病リスクは減少

 フィンランドのトゥルク大学などの研究では、1日立ったまま過ごす時間を増やすと、血糖値の調節やエネルギーの代謝で重要な働きをする大切なホルモンであるインスリンの作用を高められることが示されている。

 インスリンの働きを高めることで、糖尿病や肥満、心血管疾患などのリスクを減少できる。

 しかし、肥満などが原因で、体がインスリンに良く反応しなくなり、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が起こると、血糖値を正常に保つのが難しくなる。

 「1日に立ったまま過ごす時間が多いことは、インスリンの効きやすさを示すインスリン感受性に関連していることが判明しました」と、同大学健康科学部のタル ガースウェイト氏は言う。

 「運動不足を指摘されていても、なかなか目標となる運動量をこなすことができないという人も、毎日の座ったまま過ごす時間を減らし、立ち上がって体を動かす時間に置き換えることで、健康を改善できる可能性があります」としている。

 研究グループは、肥満やメタボリックシンドロームがあり、2型糖尿病と心血管疾患の発症リスクが高いと判定された40~65歳の中年男女64人に活動量計を身につけてもらい、4週間の日常での身体活動を計測した。

 さらに、グルコースクランプ検査や、空腹時のインスリン値や血糖値から算出されるHOMA-IRにより、インスリン抵抗性を評価した。

 その結果、立ったまま過ごす時間が長い人は、肥満や過体重、身体活動レベル、心肺機能などに関係なく、インスリン感受性が良好である傾向が示された。

座位行動 (厚生労働省)
What are the risks of sitting too much? (メイヨークリニック 2022年7月13日)
Any activity is better for your heart than sitting (ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2023年11月10日)
Device-measured physical activity and cardiometabolic health: the Prospective Physical Activity, Sitting, and Sleep (ProPASS) consortium (European Heart Journal 2023年11月10日)
Researchers Observed Association between Standing and Insulin Sensitivity - Standing More May Help Prevent Chronic Diseases(トゥルク大学 2021年9月10日)
Standing is associated with insulin sensitivity in adults with metabolic syndrome(Journal of Science and Medicine in Sport 2021年8月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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