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2023年08月07日
糖尿病の人は「アルコール」にご注意 適度な飲酒は健康的 連休中に飲みすぎないための7ヵ条

「酒は百薬の長」ということわざがある通り、ほどよいアルコールは健康に良いことが知られている。適度の飲酒は、ストレス解消やリラックスの効果をもたらし、さらには糖尿病のリスクを減少する可能性もある。
しかし、適量を超えてアルコールを飲みすぎてしまうと、その健康効果はすぐに打ち消されてしまう。アルコールを飲みすぎていると、糖尿病をはじめとする、さまざまな疾患のリスクが上昇する。
米国糖尿病学会(ADA)は、「安全にお酒を飲む方法についても、個別化する必要があります」と指摘し、糖尿病の人がアルコールを飲むときの注意点をアドバイスしている。
糖尿病の人はアルコールの飲みすぎにご注意
「酒は百薬の長」ということわざがある通り、ほどよいアルコールは健康に良いことが知られている。適度の飲酒は、ストレス解消やリラックスの効果をもたらしたり、人間関係を円滑にする。さらには糖尿病のリスクを減少する可能性もある。 しかし、適量を超えてアルコールを飲みすぎてしまうと、その健康効果はすぐに打ち消されてしまう。アルコールを過度に飲んでいると、糖尿病をはじめとする、さまざまな疾患のリスクが上昇する。 アルコール摂取量と糖尿病や関連する疾患のリスクは、「Uカーブ」の関係にあることが示されている。つまり適度な飲酒をしていると、血糖コントロールの状態はむしろ良くなり、糖尿病合併症も減るという報告がある。 日本人を対象とした大規模調査「NIPPON DATA」でも、2型糖尿病では、適度な飲酒をする習慣のある人は、まったく飲まない人に比べ、心血管疾患などの死亡リスクはむしろ低いという結果が報告されている。アルコールを飲みすぎると健康効果は打ち消される

アルコールを飲むときの7ヵ条
米国糖尿病学会(ADA)は、「糖尿病とともに生きる人々が安全にお酒を飲むときの方法については、すべての人にあてはまる普遍的なルールがあるわけではありません。"適度な飲酒"についても個別化するべきです」と指摘している。 「ご自分の飲酒習慣について、かかりつけの医師や医療スタッフにぜひ相談してください。お酒を飲むときにどう注意したら良いか、ヒントやコツを教えてくれます」としている。糖尿病の人はアルコールの飲みすぎにご注意
- アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により、血糖値に影響を与えます。飲みすぎは糖尿病のリスクも高めるので注意が必要です。
とくにインスリンや、SU薬などの経口血糖降下剤で薬物治療をしている人は、アルコールの急性効果として低血糖を起こしやすくなります。アルコールの代謝にともない、糖新生(肝臓での糖の産生)が抑制されるなど、血糖が下がりやすくなります。 - 食事をとらずに飲酒するのは避けるべきです。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともないます。
良質のタンパク質が多く含まれる魚や肉、大豆製品、ミネラルや食物繊維を多く含む野菜、とくに緑黄色野菜、海藻、キノコなどを食べることが勧められます。 - アルコールには利尿作用がありトイレが近くなります。排出された水分を補わないと、脱水状態になりやすいので、お酒を飲むときは、水分も補給するようにしましょう。
- 2型糖尿病の治療に広く用いられているビグアナイド薬(メトホルミン)は、アルコールを過度に飲むと、副作用である乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。
とくに過度の飲酒を続けている人では、肝臓での乳酸の代謝能が低下しているおそれがあるので、注意が必要です。吐気・嘔吐・腹痛などの胃腸症状や呼吸が苦しいなどの症状がある場合は、かかりつけの医師に相談してください。 - SGLT2阻害薬は、血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるタイプの治療薬。過度のアルコールを摂取したり、感染症にかかったり、脱水の状態にあると副作用が起こりやすくなります。
このタイプの薬を飲んでいるときにも、アルコールの飲みすぎには注意が必要です。脱水にならないよう水分を十分にとるなど、事前に医師や薬剤師に相談して、注意点を聞いておきましょう。 - お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておくことも大切。とくに日本人の半数はお酒に弱い遺伝子をもっているとされます。
- 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用しましょう。
宴会やパーティーなどの目的は、食べたり飲んだりではなく人との会話や交流と、割り切って考えることも大切。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは切実な問題です。
「適度な飲酒」のアルコール量は1日に20~25g
カナダのトロント大学などの研究では、アルコール(純アルコール量)を1日に25~30gまで摂取していると、糖尿病の発症リスクはむしろ低くなることが示された。 しかし、少しでもアルコールを飲みすぎると、その効果はすぐに打ち消されてしまうという。 日本人でも「適度な飲酒」は、男性でアルコール量が1日に20~25gぐらいまでだと考えられている。 アルコール量20gは、ビール(ロング缶)1本(500mL)、チューハイ(レギュラー缶)1本(350mL)、日本酒1合(180mL)、焼酎1杯(100mL)、ワイン2杯(120mL)、ウイスキー2杯(60mL)に相当する。 なお、女性は男性に比べて、アルコール分解速度が遅いことが多いので、男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされている。もちろん、お酒を飲む習慣のない人には、健康効果を期待して飲酒をすることは勧められない。
Alcohol intake and 19-year mortality in diabetic men: NIPPON DATA80 (Alcohol 2009日12月)
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes:A systematic review and meta-analysis (Diabetes Care 2009年11月)
The relationship between alcohol consumption and glycemic control among patients with diabetes:the Kaiser Permanente Northern California Diabetes Registry (Journal of General Internal Medicine 2008年3月1日)
More than 1 drink a day could raise blood pressure in adults with diabetes (米国心臓学会 2020年9月9日)
Moderate drinking of alcohol associated with reduced risk of heart disease and death from all causes, landmark study of older people reveals (モナッシュ大学 2021年11月8日)
Alcohol consumption and risks of cardiovascular disease and all-cause mortality in healthy older adults (European Journal of Preventive Cardiology 2021年10月28日)
Alcohol may be more risky to the heart than previously thought (欧州心臓病学会 May 2022年5月22日)
Moderate alcohol consumption is associated with progression of left ventricular dysfunction in a European stage B heart failure population (欧州心臓病学会 May 2022年5月22日)
In young adults, moderate to heavy drinking linked to higher risk of stroke: Risk increases with more years of drinking (米国神経学会 2022年11月2日)
Cumulative Alcohol Consumption Burden and the Risk of Stroke in Young Adults: A Nationwide Population-Based Study (Neurology 2022年11月2日)
Overweight or obesity worsens liver-damaging effects of alcohol (シドニー大学 2021年6月1日)
Joint associations of adiposity and alcohol consumption with liver disease-related morbidity and mortality risk: findings from the UK Biobank (European Journal of Clinical Nutrition 2021年5月31日)
Alcohol use: Weighing risks and benefits (メイヨー クリニック 2021年12月11日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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