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2019年11月14日

世界糖尿病デー 世界の糖尿病人口は4億6300万人に増加 糖尿病が大きな脅威に

IDF 糖尿病アトラス 第9版
 国際糖尿病連合(IDF)は、11月14日の世界糖尿病デーに、世界の糖尿病に関する最新の調査をまとめた「IDF 糖尿病アトラス 第9版」(9th Edition of IDF Diabetes Atlas)を発表した。
 世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2019年現在で糖尿病有病者数は4億6,300万人に上ることが明らかになった。
11人に1人が糖尿病 65歳以上では5人に1人
 国際糖尿病連合(IDF)の発表した「IDF 糖尿病アトラス 第9版」によると、世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2019年現在で糖尿病有病者数は4億6,300万人に上り、2017年から3,800万人増えた。

 糖尿病有病者数は、有効な対策を施さないと、2030年までに5億7,800万人に、2045年までに7億人に増加すると予測している。

 2019年の20〜79歳の成人の糖尿病有病率は9.3%で、11人に1人が糖尿病と推定されている。65歳より上では5人に1人が糖尿病だ。

 糖尿病を発症する危険性の高い耐糖能異常(IGT)の数は3億7,400万人に上り、2030年までに4億5,400万人に、2045年までに5億4,800万人に増加すると予測されている。
世界の糖尿病有病者の推定数の推移(20~79歳成人) IDF 糖尿病アトラス 第9版
日本を含む地域の糖尿病人口は世界最大
IDF 糖尿病アトラス 第9版
 「糖尿病アトラス」では、世界を7地域に区分し統計値を出している。日本が含まれる「西太平洋地域」は、世界でもっとも糖尿病人口の多い地域だ。

糖尿病有病者数の多い上位10ヵ国 IDF 糖尿病アトラス 第9版
 西太平洋地域の糖尿病有病数は1億6,300万人(有病率 9.6%)で、2045年までに2億1,200万人に増加すると予測されている。全世界の糖尿病人口の35%がこの地域に集中している。

 耐糖能異常(IGT)の割合は2019年には8.0%に上り、2045年には9.2%に上昇すると予測されている。

 この地域の糖尿病有病者の半数以上(56%)は、糖尿病と診断されておらず、深刻な合併症を発症する危険性が高い。

 世界で糖尿病人口がもっとも多い国の順位は(1)中国(1億1,640万人)、(2)インド(7,700万人)、(3)米国(3,100万人)となり、上位3ヵ国だけで2億人を超えている。(39頁)

 日本の成人の糖尿病有病者数は739万人。日本は2015年の調査では世界ランキングの9位だったが、2017年の調査では上位10位から外れた。

 日本は65歳以上の糖尿病人口が多く、2019年のランキングでは世界第6位の490万人となっている。
8秒に1人が糖尿病のために亡くなっている
 適切な糖尿病の治療を続けていれば、失明、足の切断、腎臓病、心臓病、脳卒中といった合併症の多くは予防が可能だが、そのために早期診断・治療が必要となる。糖尿病は初期の段階では自覚症状の乏しい病気なので、1年に1回以上は糖尿病の検査を受ける必要がある。

 2019年には糖尿病が原因で、世界で420万人が死亡した。8秒に1人が糖尿病のために亡くなっている計算になる。

 IDFは、患者、家族、社会を守るため、糖尿病合併症を予防するための適切な対処をすることと、糖尿病の予防を啓発する重要性を強調している。

 しかし現状では、世界の糖尿病を発症した成人の半分以上(50.1%)が診断を受けておらず、適切な治療を開始できていない。将来に合併症を発症する危険性が高い。
働き盛りの世代の糖尿病が大きな課題に
 2型糖尿病は、糖尿病全体の90%を占めている。社会・経済や環境、遺伝的な要因が複雑に絡まりあい、2型糖尿病の有病者数は増加している。都市化、高齢化、運動不足、不健康な食事、過体重や肥満の増加が主な原因だ。

 「糖尿病は世界的に深刻な問題になっており、その社会的・経済的な影響はとても大きい」と、IDF理事長のナム チョウ・ソウル国立大学教授は言う。

 「糖尿病の有病率が上昇しており、診断を受けていない人も多い。すべてのタイプの糖尿病を早期発見し、糖尿病合併症を予防し、2型糖尿病を予防するために対策が必要です。すべての糖尿病患者が、支払い可能な医療費で、途切れることなく、治療を受けられるようにするべきです」。

 20〜64歳の働き盛りの世代の糖尿病人口は、2019年には3億5,200万人に上り、全糖尿病患者の4人に3人に相当する。2030年には4億1,700万人に、2045年には4億8,600万人に増えるとみられている。糖尿病の治療と仕事の両立は、世界的な課題となっている。

 原因は不明だが、1型糖尿病も増えている。世界の小児・若年(0~19歳)の1型糖尿病患者数は110万人と推定されており、毎年12万8,900人が新たに1型糖尿病と診断されている。
糖尿病の医療費も過去最大に
 糖尿病関連の2019年の医療費は約83兆円(7,600億ドル)で、2017年から4.5%増加し、世界の主な国で全医療費の10%を占めている。糖尿病の医療費の負担は世界的に増大しているが、糖尿病や糖尿病合併症を予防するために費やされる予算は不足している。

 糖尿病の医療費が多い国の順位は、(1)米国(32兆円)、(2)中国(11.8兆円)、(3)ブラジル(5.7兆円)、(4)ドイツ(4.8兆円)、(5)日本(2.6兆円)となっている。

 「糖尿病はコントロールできる病気であり、適切な治療を続けていれば合併症を予防できます」と、IDF糖尿病アトラス委員長のリース ウィリアムズ教授は言う。

 「世界で糖尿病とともに生きる多くの人が生命を危険にさらす糖尿病合併症の影響下にいます。糖尿病は患者や家族にとって、生活の質(QOL)を大きく低下させるだけでなく、社会の医療経済にとっても大きな負担をもたらします」。

 「すべての国は、糖尿病とともに生きるすべての人が、健康改善、予防、治療、リハビリなどの医療サービスを、支払い可能な費用で受けられるよう、"ユニバーサル ヘルス カバレッジ(UHC)"を推し進める必要があります」としている。

IDF糖尿病アトラス(Diabetes Atlas)(世界糖尿病連合)
世界糖尿病デー(World Diabetes Day)
世界糖尿病連合(IDF)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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