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2019年07月25日
集中治療領域における急性腎障害マーカーL-FABPの有用性と課題
- キーワード
- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
ICU領域における血液浄化療法の評価としても有用な可能性がある
最後に、当院ICUにおける血液浄化療法施行時の尿中L-FABPの活用例を提示する。
血液浄化療法による治療経過の評価に活用した症例
急性間質性肺炎の79歳男性。ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)療法*の治療経過を尿中L-FABPの推移で観察した。PMX-DHP療法の経過中eGFRは100mL/min/1.73m2以上を維持しており、明らかな腎不全の進行がみられない状況であったが、炎症や呼吸不全により尿中L-FABPが変動する可能性が示唆された。注目すべきは、尿中L-FABPと乳酸値がほぼ同様の挙動を示した点である(図5)。間質性肺炎による呼吸不全の変化が各臓器虚血に影響した結果、腎虚血マーカーとしての尿中L-FABPも変動した可能性が示唆された。
*記述の疾患には保険適用はございません。
右側結腸切除術後、急性汎発性腹膜炎を発症した84歳男性。このような症例では、AKI、多臓器不全を起こすことを踏まえ、尿中L-FABPを測定して早期にAKIを発見することが重要である。PMX-DHP療法を施行したところ、施行前後における尿中L-FABPと乳酸値が同じ挙動を示し、これに合わせて全身状態も改善し、治療経過の評価における尿中L-FABP測定の有用性が示唆された。
血液浄化療法の開始・中止時期の評価に活用した症例
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)後に急性膵炎を発症した63歳女性。膵炎による敗血症性ショックがある中で、腎不全の進行がなく尿中L-FABPの上昇がありAKIの懸念があったためPMX-DHP療法を実施した。その結果、尿中L-FABPが低下し、AKIは生じなかった。尿中L-FABPを指標にして急性血液浄化の必要性を検討することの意義を実感した。
弓部大動脈とopen stent吻合部にみられた感染性仮性動脈瘤で敗血症性ショックを呈した68歳男性。本症例では、L-FABP POCキットによる尿中L-FABP値を指標にすることで、持続的血液濾過透析(CHDF)の施行および離脱のタイミングの判断が可能となった。尿中L-FABPは、透析施行および離脱の是非を判断する際のマーカーの1つになりうると考えられる。
左肺癌に対する上葉切除術後にみられた急性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の73歳男性。クレアチニン値にかかわらず、尿中L-FABPが1,000ng/mLと高値を呈した段階で早急に腎代替療法(RRT)を開始すべきと判断した。その結果、徐々にL-FABPが低下し、最終的に透析離脱が可能となり、離脱時期に関してもPOCキットでL-FABPの低下を確認して判断した。
急性腎盂腎炎、敗血症性ショックを呈した91歳男性。尿中L-FABPは基準値よりやや高めであったが大きな変動を示していなかった。高齢者では、体外循環の施行により慢性化あるいは腎機能が悪化してしまった経験を踏まえ、あえてCHDF等を実施しないという判断に至った症例である。
原因不明の急性膵炎、多臓器不全を呈した72歳女性。CHDFを開始したが、膵炎悪化時、クレアチニンに変動は認められなかったが尿中L-FABPに大きな変動が持続的に認められため、CHDFを継続している。
まとめ
以上述べてきたように尿中L-FABP検査は、糖尿病性腎症の病期分類、治療評価から敗血症などの全身疾患におけるAKIのリスク評価にも有用と考えられる。また、ICU領域では、血液浄化療法の間接的な評価としても有用である可能性がある。今後、症例を積み重ね、データの精度を高めていくことが重要だと考える。
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