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2016年06月29日

慢性腎臓病における心血管障害 〜L-FABPの可能性〜

第80回 日本循環器学会学術集会(ファイアサイドセミナーより)

慢性腎臓病における心血管障害 〜L-FABPの可能性〜
慢性腎臓病(CKD)が心血管障害のリスクファクターであることが明らかになり、循環器領域においてもCKDを念頭に入れた診療が望まれるようになった。また、脳や心臓に生じる臓器障害あるいは下肢を中心とする末梢動脈疾患は、それぞれ個別に治療するのではなく、全身性の血管病‘polyvascular disease’として診る姿勢が求められる。このような病態の基盤には血管石灰化、微小循環障害があり、さらにその上流にインスリン抵抗性や内皮機能障害が存在しており、CKDではそれらすべてがモザイク状に関連し血管障害を進展させていく。血管障害の進展を抑止するポイントは言うまでもなく早期診断・早期介入であり、それを可能とするためのバイオマーカーの開発が進められてきた。
本セミナーでは、腎臓内科の立場からpolyvascular diseaseに関する貴重な知見を報告されてきた小林修三氏に、心血管障害とCKDの連関、そして早期診断バイオマーカーの「尿中L-FABP」の有用性を講演いただいた。
※L-FABP:L-type fatty acid binding protein (尿中 L 型脂肪酸結合蛋白)
柏原 直樹 氏(川崎医科大学腎臓・高血圧内科学主任教授)

座長:柏原 直樹 氏(日本腎臓学会
理事長/川崎医科大学腎臓・高血圧
内科学主任教授)

小林 修三 氏(湘南鎌倉総合病院副院長/腎臓病総合医療センター長)

演者:小林 修三 氏(湘南鎌倉総合病院副院長/腎臓病総合医療センター長)

 循環器の先生方に向けて慢性腎臓病(CKD)の講演をする際、最初に申し上げたいことは、みなさん採血検査はよくされるのだが採尿検査をあまりされないという点だ。CKDが血管障害の独立した危険因子であることは既によく知られており、我々腎臓内科医は健常な腎が荒廃し腎不全に至る過程を診るというより、そこを足場として全身の血管病‘polyvascular disease’を診療している。心血管障害の治療には末梢微小循環障害を早期に捉えなければならず、そのためのバイオマーカーとしての尿検査の重要性を、本日ご理解いただけた らと思う。

 さて、polyvascular diseaseは、冠動脈、脳血管、末梢動脈の疾患を複数あわせもつ病態と定義されており、一般外来でこうした症例に遭遇することは少なくない(図1)。このような心血管障害の‘非古典的’なリスクとして、AHA(American heart association 、米国心臓協会)のステートメントには、アルブミン尿、脂質異常、リン代謝、細胞外液、酸化ストレス、炎症、低栄養、凝固能など多くの因子が掲げられているが(図2)、これらすべてを「CKD患者に認められる所見」として一括りにすることも可能だ。つまり、polyvascular diseaseの上流にCKDが位置していると言える。

 そこでここからは、CKDに伴う、脳、心臓、末梢動脈の血管障害を順にみていきたい。

図1 Polyvascular diseaseの現状

日本を含む44カ国の45歳以上の外来患者67,888例を2年間追跡した登録研究「REACH Registry」の患者背景から、多くの患者は複数の血管障害を併発していることが明らかになった。

〔Bhatt DL, et al. JAMA 295:180-189,2006より作図〕

図2 心血管障害の非古典的危険因子

米国心臓協会(AHA)のステートメントに掲げられている心血管障害の危険因子のうち、‘非古典的’なものは、慢性腎臓病(CKD)に認められる所見としてまとめられる。

〔Sarnak MJ, et al. Circulation 108:2154-2169,2003〕

次は...脳とCKD

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日本医療・健康情報研究所

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