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2016年04月11日
大豆を食事療法に活用 日本食が良い理由は「大豆を食べるから」
豆腐、納豆、みそ、しょうゆなど、日本食にも欠かせない大豆。大豆には、糖尿病、脂質異常症、がん、骨粗鬆症、更年期障害などを改善する多くの作用があるとされている。
日本が長寿国となった理由も、大豆をうまく食生活にとりいれたことを抜きには考えられない。
「天然のサプリメント」
大豆はアミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富で、「天然のサプリメント」といわれるほど栄養価が高い。栄養面で注目したいのが以下の点だ。
・ タンパク質
大豆は「畑の肉」といわれるように豆類の中でもタンパク質の含有量が多く、しかもアミノ酸の組み合わせが動物タンパクによく似ている。
豆腐、納豆、煮豆、枝豆、おからなどの大豆食品は、優れたタンパク源であり、動物性タンパク質と組み合わせることにより、理想的なアミノ酸バランスになる。
また、大豆には体に良い一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が含まれる。食品の脂肪分をバランス良く調整でき、結果的に低脂肪、低カロリーのメニューを実現できる。
・ カルシウム
豆腐にはカルシウムが豊富に含まれている。牛乳コップ1杯(200mL)に約220mgのカルシウムが含まれるが、木綿豆腐半丁(150g)では約130mgのカルシウムをとることができる。
また、豆腐は消化吸収が良く、良質のタンパク質と一緒にとることもできるので、カルシウムの摂取に有用な食品だ。
食事摂取基準では1日に約600mgのカルシウムを食品でとる必要があるとされているが、男性で14%、女性で20%も不足しているのが現状だ。これを補うのに必要な量を逆算した場合、1日に豆腐を3分の1丁(カルシウム86mgを含有)を食べれば良いことになる。
・ 食物繊維
大豆といえばタンパク質やイソフラボンなどが注目されることが多く、食物繊維が多いという印象は薄いかもしれない。実際には大豆に含まれる食物繊維は、きのこ類や野菜類に比べても多い。
例えば食物繊維が多い野菜として知られるゴボウには100gあたり6.1mgの食物繊維が含まれている。ゆでた大豆にはゴボウよりも多い6.6mgの食物繊維が含まれている。
・ イソフラボン
イソフラボンは、大豆胚芽に含まれるフラボノイドの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)によく似た構造をしている。そのため「植物エストロゲン」の異名があるが、その作用は女性ホルモンの1,000分の1程度とおだやかだ。
大豆に含まれるイソフラボンには、コレステロールを下げる効果がある。イソフラボンは豆腐半丁に40mg、納豆1パックに36mg、豆乳1パックに48mg含まれている。
国立健康・栄養研究所の調査で、大豆イソフラボンを1日100mg、1~3ヵ月間摂取すると、血中総コレステロールと「悪玉コレステロール」とされているLDLコレステロールがそれぞれ平均3.9mg/dL、5.0mg/dL低下することが確認された。
また、大豆を食べる人ほど、がんの発症が少なく、イソフラボンが予防効果をもつことを示した研究は多く発表されている。国立がん研究センターが40~59歳の女性約2万人を対象とした調査で、大豆、豆腐、油揚、納豆を毎日食べる女性では、乳がんの発症率が2割減ることが明らかになった。
閉経後の女性に限ると、イソフラボンをたくさん食べると、乳がんなりにくい傾向がより強まった。閉経後の女性でイソフラボンの血中濃度が高いと、乳がんの発症が半数以下に減っていた。
これ以外にも、大豆に含まれる脂肪酸のリノール酸やリノレン酸、レシチンには、抗酸化作用(活性酸素を抑え、体の老化・酸化を防ぐ作用)があり、また豆腐などの苦味成分であるサポニンにも抗酸化作用があるとみられている。
「植物エストロゲン」と聞くと、「イソフラボンが女性の健康に効果的なのは知っているが、男性ではどうなのか」という疑問を感じる人も多いだろう。国立がん研究センターの調査が約4万3,000人を対象とした調査では、大豆をよく食べている61歳以上の男性では、摂取量がもっとも多いグループで、もっとも少ないグループと比べ、前立腺がんの発症が半分に減るという結果が出た。
男性の前立腺では、治療の必要がない微少ながんが加齢とともに増加することが知られている。日本人でもがんに進行して臨床的に発見される例が増えているが、欧米人に比べると少ない。「大豆を日常的に食べる」食生活が定着しているからではないかと指摘されている。
前立腺がんは、男性ホルモンの働きが影響し発症するがんだが、女性ホルモンに似た作用をもつイソフラボンをとっていると、男性ホルモンの過剰な働きを抑え、前立腺がんができにくく、できても進行が抑制されると考えられている。
国連食糧農業機関(FAO)は、2016年を「国際豆年」に定め、体に良い大豆などの豆類を食べることを奨励している。大豆などの豆類を食べると、体重を適正に維持するのに役立つことが明らかになった。豆類を1日あたり130g食べていると、0.34kgの減量につながるという。
「グリセミック指数」(GI)は、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、それを基準に、同量摂取したときの食品ごとの血糖上昇率をパーセントで表した指標。GI値が低い食品ほど食後の血糖値を上げにくくなる。
大豆は代表的な低GIの食品で、ゆっくりと消化されるので血糖値を上げにくい。また、体に良い植物性タンパク質と脂肪酸を含み、悪玉コレステロールを減らすというメリットもある。
カナダのセントミカエル病院研究所のラッセル デ ソウザ博士らは、大豆などの豆類の摂取について調査した21件の研究を解析した。その結果、豆類を1日あたり130g食べていると、0.34kgの減量につながり、減量後のリバウンドも少ないことが明らかになった。
「大豆は健康に良い効果をもたらしますが、大部分の人の1日の摂取量は130gに足りていません。豆類を食事に取り入れることで、体重を減らし適正にコントロールできるようになります」と、デサウザ氏は言う。
日本では大豆や加工品を含む「豆類」の1日の摂取量は、2013年の調査によると40歳代で51g、50歳代で64gとなっており、10年前(2003年)に比べて減少している。
「大豆を食べると満腹感が3割以上増え、食べ過ぎの防止にも役立つことが分かっています。1日平均130gの豆類をとっていると、悪玉コレステロールが5%減り、心血管疾患のリスクが低下します。大豆などの豆類を毎日の食事に取り入れるべきです」と、デサウザ氏は指摘している。
血中イソフラボン濃度と乳がん罹患との関係(国立がん研究センター 2008年3月7日)
大豆製品・イソフラボン摂取量と前立腺がんとの関連(国立がん研究センター 2007年3月16日)
Eating beans, peas, chickpeas or lentils may help lose weight and keep it off(セントミカエル病院 2016年3月30日)
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