ニュース

2016年02月24日

「糖尿病連携手帳」改訂3版で地域連携を支援 日本糖尿病協会

 公益社団法人日本糖尿病協会(理事長:清野裕・関西電力病院院長)は、糖尿病患者用の診療記録ノートである「糖尿病連携手帳」の内容を大幅に見直し、改訂3版としてこのほど全国での配布を開始した。
糖尿病地域連携をサポート
糖尿病とともにいかに豊かに暮らせるかを追及
 糖尿病診療は、基幹病院の専門医とかかりつけ医が役割分担する地域連携、医師と療養指導スタッフがチームを組んで治療にあたるチーム医療が基本となる。

 それらを支援するツールとして2010年に誕生したのが「糖尿病連携手帳」。日本糖尿病協会によると、すでに全国で年間200万部が利用されている。

 「糖尿病連携手帳」の3度目の改訂のポイントは次の通り――

1. 編集コンセプトとテーマ
 多種多様化する糖尿病患者の背景をもとに、今後の糖尿病診療は治療目標のみに固執するのではなく、連携手帳を通じて「糖尿病とともにいかに豊かに暮らせるかを追及すること」を編集の基本方針としている。また、糖尿病地域連携のツールとしての機能を重視しながら、“必要な情報が一目でわかること”をテーマに、基本情報や検査項目が見直された。

2. 一目でわかるページ構成
 患者の個人情報と病態、かかりつけ医などの受診状況をまとめた「基本情報」、1ページで検査結果6回分を一覧でき、長期の経過が一目瞭然となる「検査項目の集約」、眼科・歯科受診記録を見開きページに集約した「他科の受診状況」などから構成される。

3. 時代にあわせた新設ページ
 「合併症関連検査」のページでは、検査項目を1年間かけてすべて埋めれば、合併症の評価に漏れがなくなる。糖尿病に関連する種々の合併症の評価項目を一覧で確認でき、三大合併症の検査に加え、歯周病、下肢病変、頸動脈エコー、上腕足関節血圧比、脈波伝播速度などの検査についても記入できる。さらに腹部画像検査、便潜血など、糖尿病患者に多いとされるがんの早期発見を促す内容になっている。

 また、患者の高齢化に伴い、介護分野との連携が必要となることから、ケアマネジャーとの連携項目が新設された。さらに、日本糖尿病協会が制作した教育資材を用いての療養指導を受けた際の記録ページが新設された。
医療現場で将来にわたり必要とされる連携手帳を目指す
 今回の改訂を担当したのは、40〜50歳代前半の糖尿病専門医8名。1年かけて議論を重ね、日々の診療を通して感じている「日本の糖尿病診療をこうしたい」という思いが込められているという。

 編集委員長を務めた福岡大学医学部内分泌・代謝内科の野見山崇氏は、「連携手帳を持つ患者本位の視点で内容を検証し、より“自分の手帳”として愛着をもつことができるよう細部まで検討を行いました。この手帳が、患者さんにとって糖尿病と上手に付き合うための記録と記憶が詰まったカレンダーのような役割が果たせれば幸いです」と述べている。

 また、清野裕理事長は、「患者さんに良質な医療を提供する目的のもと、糖尿病医療の地域連携活性化支援を目指して、5年前に連携手帳を発行しました。現在では、都道府県が策定する医療計画の糖尿病領域において、本手帳を連携パスのツールとして活用する機運も高まってきており、発行当初の目的はある程度達成したと考えました。そこで、今回の改訂では、糖尿病診療の未来を担う若手医師の意見を大胆に採り入れ、連携手帳が将来にわたり、医療現場で必要とされる存在となることを目指しました。ぜひ、患者に新しい連携手帳をお使いいただき、糖尿病療養に役立てていただきたいと思います」と述べている。

 同協会では、連携手帳第3版の使用について広く感想を求めるため、パブリックコメントの募集も行っている。

公益社団法人日本糖尿病協会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲