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2016年02月24日

1型糖尿病の「根治」を目指す研究に助成 日本IDDMネットワーク

 1型糖尿病の根治を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」(井上龍夫代表)は、「1型糖尿病研究基金」の9回目となる研究費助成課題を採択したと発表した。
一刻も早く「根治」を実現し1型糖尿病の患者と家族を解放
 膵臓のβ細胞が破壊されインスリンを作る能力が失われることで発症する1型糖尿病は、生活習慣が一因となる発症する2型糖尿病と原因も治療法も異なる。インスリン療法を一生続ける必要があり、インスリンの頻回注射やインスリンポンプによる継続的なインスリン補充が現在の治療法となる。

 日本IDDMネットワークは、1型糖尿病の社会的な認知度の向上と理解を促し、一刻も早い「根治」の実現により患者と家族を生涯の苦痛から解放することを目的に活動している。同NPO法人は2005年、「1型糖尿病研究基金」を設立、2008年以降合計17件(2,100万円)に先進的な研究に取り組む研究者や団体へ研究費の助成を行ってきた。

 9回目となる今回は助成金総額を900万円とし、「iPS細胞による再生医療」を重点課題として課題を募集した。その結果、以下の3件を採択した。

 採択における選考には、有識者や学識経験者の助言を得て同NPO法人の理事が選考したという。同基金による研究助成実績は累積件数で20件、3000万円に達した。

研究課題 iPS細胞由来組織前駆細胞を利用した動物体内での膵臓作成法の開発
研究代表者: 東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 山口智之 特任准教授
助成金額:100万円
研究概要 膵島移植は1型糖尿病の有効な治療法の一つですが、一方で、慢性的なドナー不足は非常に大きな問題です。この問題を解決すべく、我々はブタなどの動物体内でヒトiPS細胞からヒトの膵臓を再生させ、膵島移植治療に用いることを目標に研究を行っています。そして、小動物(マウスーラット)を用いた研究では、iPS細胞から動物体内に膵臓を再生し、膵島移植による糖尿病治療のモデルを示すことに成功しました。本研究では、この手法を応用したヒトの糖尿病治療を実現するために、より安全性の高い膵臓再生技術の開発を目指します。

研究課題 ヒトiPS細胞から膵島の作製と機能を維持する培養方法の開発
研究代表者:東京工業大学 大学院生命理工学研究科 粂 昭苑 教授
助成金額:600万円
研究概要 1型糖尿病の治療には、膵島移植が有効な治療法ですが、ドナー不足が大きな問題です。そこで、試験管内でヒトiPS細胞からインスリンを産生する膵臓β細胞を作り出す方法と分化した膵臓β細胞を培養する方法を開発します。同時に、ヒトの体内において、膵臓β細胞の分化、膵臓β細胞の量とその機能維持がどのような制御を受けているかについて解析を進めます。得られた成果を培養方法に還元させることにより、ヒトiPS細胞から機能の高い膵臓β細胞を得るための分化誘導方法および、機能を維持するための培養方法の開発を目指すものです。

研究課題 1型糖尿病に対する再生医療開発のためのiPS細胞由来移植用膵細胞の高効率分化誘導法と純化法の開発
研究代表者: 京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 長船健二 教授
助成金額:200万円
研究概要 私たちは、iPS細胞から作った膵臓細胞を移植することによって1型糖尿病を治す再生医療の開発を研究しています。その目標達成のために、iPS細胞から効率よく膵臓細胞を作ることと、膵臓以外の細胞を取り除いて膵臓細胞だけを移植する技術が必要です。本研究では、最近、開発された1つ1つの細胞の遺伝子を調べる技術を用いて、移植用の膵臓細胞だけを見分ける目印となる遺伝子を見つけることを行います。そして、その目印を使いiPS細胞から移植用の膵臓細胞をより効率よく作る技術と膵臓以外の細胞を取り除く技術を開発します。

 日本IDDMネットワークでは「今後も本研究助成を継続して行い、多くの研究者、研究グループの方々の協力のもと1型糖尿病の“根絶”を実現させていく取り組みを進めていく」と述べている。

 今回の助成の財源は佐賀県庁の協力による寄付先指定の「日本IDDMネットワーク指定のふるさと納税」を財源としているという。佐賀県のふるさと納税は、応援したいNPOを指定して寄付することができ、寄付額の95%が指定されたNPOへ交付される仕組み。「自分がした寄付を有効に使って欲しい」と望む寄付者にとって支援を可視化できるメリットがある。

認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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