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2016年02月19日

糖尿病患者は何歳まで生きられる? 糖尿病と寿命に関する調査結果

 糖尿病患者の平均寿命は糖尿病でない人に比べ短いという調査結果が発表された。ただし、医療の進歩にともない、過去40年で糖尿病患者の寿命は伸びていることも明らかになった。今後は糖尿病による平均寿命の短縮は少なくなると予測されている。

 日本は世界でもトップの長寿国だ。厚生労働省の調査によると、2014年の日本人男性の平均寿命は80.50歳、女性は86.83歳。進んだ医療体制や保険制度、健康的な食生活など、長寿を支える要素は多い。

 一方で、糖尿病は国民的な病気として認知され、患者数も増えている。糖尿病は寿命にどの程度の影響を与えているのだろうか。そして糖尿病を発症したら、寿命を全うできないのだろうか。
糖尿病患者の平均寿命は4.6年短いという調査結果
 米国疾病予防管理センター(CDC)の研究チームが、50歳以上の米国人2万人以上を1998〜2012年追跡して調査した。研究の目的は、糖尿病と身体機能の障害、および日常生活の自立度との関連性について調べることだった。この研究は、米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

 その結果、糖尿病をもつ人はそうでない人に比べ、4.6年早く死亡し、「日常生活動作」(ADL)などの障害が6~7年早く進行することが明らかになった。ADLは、移動や食事、更衣、排泄、入浴など生活を営む上で必要な基本的行動をさす。糖尿病をもつ人は、ADLが障害された状態が1~2年長く続くことも示された。

 また、糖尿病をもつ高齢の男性は、3項目以上の身体障害をもつ頻度が20~24%に上り、糖尿病でない男性の12~16%よりも高かった。
健常者と変わらない寿命を全うするために
 一般的に、糖尿病のそのものが原因となり死亡リスクが上昇するわけでなく、多くの場合は糖尿病の合併症や、糖尿病に起因する(関連性が疑われる)疾患によっと死亡するケースが多いと考えられている。

 日本人の死因は、年度によって多少の変動はあるものの、「がん」(悪性新生物)、「心疾患」(心筋梗塞、狭心症など)、「脳血管疾患」(脳卒中、脳梗塞など)が上位を占めている。このうち、糖尿病は心疾患と脳血管疾患のリスクを大きく高める。最近の研究では糖尿病はがんの発症リスクを高めることが分かったきた。

 上位3つ以外でも、死因の上位である「腎不全」は、糖尿病が原因で発症することが多い。さらに、血糖コントロールが不良の状態が続くと体全体の抵抗力が弱まるので、肺炎などの「呼吸器疾患」などの死因となるおそれもある。

 このように糖尿病患者は短命という言葉は、決して誇張ではない。しかしみてきたように、その理由は糖尿病だけが直接の原因ではない。つまり適切な治療と、食事療法・運動療法を続けて症状の改善を行えば、「死に至る病」を避けられ、健常者と変わらない寿命を全うすることも可能だ。
1型糖尿病患者の寿命は延びている
 糖尿病の患者の寿命は短い傾向があることは他の調査でも明らかになっている。スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になった。

 ただし、1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は27年短いとされていたので、糖尿病患者の寿命はかなり改善されている。1型糖尿病の血糖コントロールは、新しいインスリン製剤の開発やインスリンポンプの普及などの医療の進歩にともない、21世紀に入って劇的に改善している。今後は、1型糖尿病と一般人口の寿命の差がどんどん縮まっていくことは明らかだ。

 ダンディー大学の調査では、70歳まで生存すると予測される割合は、糖尿病のない一般集団では男性の76%と女性の83%であるのに対し、1型糖尿病では男性の47%と女性の55%にとどまった。

 1型糖尿病における死因の第1位は、心筋梗塞などの虚血性心疾患(CVD)で、1型糖尿病の心臓病への影響は男性で36%、女性で31%に上ることが示された。また糖尿病腎症も寿命の減少に影響しており、失われる余命は男性で8.3年、女性で7.9年であることが示された。

 CVDや糖尿病腎症は早期発見し適切な治療を行えば、死亡リスクを大きく下げられる疾患だ。糖尿病合併症を予防し、適切な治療を行えば、糖尿病患者の寿命を大きく伸ばすことが可能だ。

 健康な人と変わらぬ年月を生きることが可能であれば、少しでも健康的な状態で生活を謳歌したい。糖尿病は症状が悪化すると日常生活動作が悪化し、健康的な状態の時間が奪われ、生活の質(QOL)が大きく低下してしまう。

 何よりも早期からの予防と治療、生活習慣の改善が寿命を延ばすための秘訣となる。

Disability-Free Life-Years Lost Among Adults Aged ≥50 Years, With and Without Diabetes(Diabetes Care 2015年12月30日)
Scottish Study Finds Improvement in Life Expectancy for Patients with Type 1 Diabetes(ダンディー大学 2015年1月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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