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2014年10月31日
世界糖尿病デーは11月14日 ブルーサークルで世界につながろう
世界糖尿病デーが、国際糖尿病連合(IDF)とIDFに加盟する組織が中心となり、11月14日に開催される。この日を中心に、世界のさまざまな場所でイベントやキャンペーンが開催される。
糖尿病の脅威は世界的に拡大
世界糖尿病デーは、糖尿病の脅威が世界的に拡大しているのを受け、世界規模で糖尿病に対する注意を喚起しようと、IDFと世界保健機関(WHO)によって1991年に開始され、2006年には国連の公式の日になった。
2014年の世界糖尿病デーのテーマは「糖尿病とともに健康に生きる(Healthy Living and Diabetes)」。2014年から3年間続けられる共通テーマで、今年は最初の年にあたる。
11月14日は、1921年にチャールズ ベストとともにインスリンを発見したフレデリック バンティングの誕生日にあたる。インスリンの発見により、糖尿病治療は飛躍的な進歩をとげた。
糖尿病合併症は、健康的な生活スタイルと適切な治療を続けることで、ほとんどの場合で予防が可能だ。そのことを世界規模で呼びかけるため、「糖尿病:私たちの未来を守ろう(Diabetes: protect our future)」というスローガンが掲げられている。
世界の糖尿病有病者の数は、2013年現在で3億8,200万人で、2035年までに5億9,200万人に増加するとみられている。うち1億7,500万人は糖尿病と診断されておらず、自分が糖尿病であることに気付いていない。糖尿病が原因で死亡した人の数は2013年には510万人に上り、6秒に1人が亡くなっている計算になる。
IDF理事長のマイケル ハースト氏は「糖尿病がもたらす脅威は世界中で拡大しています。いますぐ糖尿病に対し行動をはじめてください。世界糖尿病デーには、160以上の国や地域の200を超える団体が参加し、糖尿病患者、その家族、医療従事者、指導者が中心となり、糖尿病への認知を高める行動を世界規模で拡げています。あなたが新たな行動に踏み出すことが、世界中の糖尿病に関わる人々に勇気を与えます」と述べている。
ブルーサークルを世界中で共有
世界糖尿病デーのシンボルとなっているのは「ブルーサークル」だ。2006年に国連で「糖尿病は世界的な脅威であり、実効的な対策が必要だ」と採択されたのがきっかけに、ブルーサークルは糖尿病のシンボルに掲げられた。ブルーは国連の旗の色、サークルは「団結」「生命」「健康」を意味する。
IDFは、ブルーサークルの認知を拡げるために、「セルフィー」(selfie)というアプリケーションソフトを配信している。スマートフォンなどでセルフィーを起動し、カメラで自分や家族、グループを撮影すると、ブルーサークルが画像に自動的に表示され、同時にサーバーに送信される。ブルーサークルの位置やサイズは自由に変えられるようになっている。
世界中でブルーサークルを共有できる仕組みになっており、10月31日の時点で世界各地で撮影された画像4,437枚が集められている。ソフトはアンドロイド版とアイフォン版があり、無料で配布されている。
ブルーサークル セルフィー
画面をクリックするとスライド表示が始まります。
画面をクリックするとスライド表示が始まります。
世界中の「健康的な朝食」を集めてブルーサークルを作ろう
IDFは、世界糖尿病デーに合わせて「朝食でブルーを実行しよう」(Go Blue For Breakfast)というキャンペーンを展開している。糖尿病患者にとって理想的な朝食を撮影し、画像を特設ページで登録するよう呼びかけている。
特設ページでは、世界各地の糖尿病患者、その家族、医療スタッフから寄せられた朝食の画像を見ることができる。画像の点数が増えると、画面にブルーサークルが形作られる仕組みになっている。
健康的な朝食は、良好な血糖コントロールに不可欠だ。朝食を規則正しくとることで、1日の摂取エネルギーを三食に均等に振り分けられることができ、午前中の基礎代謝も向上する。朝食をとらないと肥満になりやすくなることが、多くの研究で確かめられている。インスリンや血糖降下薬で治療をしている患者では、低血糖を予防するためにも、朝食がとりわけ必要だ。
世界糖尿病デーのシンボル ブルーサークルとブルーライトアップ
11月14日を中心に、世界の80を超える国の1,000ヵ所以上で、有名な建造物が世界糖尿病デーのシンボルカラーであるブルーにライトアップされる。その目的は、糖尿病のシンボルである「ブルーサークル」の認知を草の根で広めて、糖尿病対策の推進の必要性を訴えることだ。世界糖尿病デーを中心に、糖尿病に関わる患者と医療者へのサポートの必要性が、世界に向けて呼びかけられる。
日本でも、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会の「世界糖尿病デー実行委員会」が中心となり、全国各地で関連イベントやブルーライトアップが開催される。
世界中で一斉に運動して血糖値をはかろう ビックブルーテスト
現在、世界糖尿病デーに合わせて、糖尿病ネットワークの対策を啓発するためのキャンペーン「ビックブルーテスト(Big Blue Test)」が実施されている。世界中の糖尿病患者や医療スタッフに、インターネットを通じて参加が呼びかけられている。
ビックブルーテストは、世界中で糖尿病患者が一斉に血糖測定を行い、続いて14〜20分間の運動を実施の、その後でもう一度血糖測定を行い、その結果をインターネットを通じて、世界中の人々と共有しようというもの。
運動をすることで、体のブドウ糖や脂肪が使われ血糖値が低下する。血糖測定を行うことで、運動の効果をあらためて確かめ、運動の習慣化がもたらす恩恵を世界に向けてアピールしようという狙いがある。
キャンペーンは2010年に、糖尿病ハンズ財団が中心となり始めて実施され、これまで4万人以上が参加している。運動によって血糖値が、インスリン治療を行っている患者では平均で35.2mg/dL、インスリン治療を行っていない患者では23.0mg/dL低下したことが確かめられた(Diabetes Care, 36(2), e21, 2013)。
参加者からは「近所をぐるりと散歩するだけの簡単な運動であっても、血糖値が下がることが実感できた」などと賞賛の声があがったという。
糖尿病のヒーローを探せ
糖尿病合併症を防いだり発症を遅らせるために、医療従事者には「科学的根拠に基づく医療(エビデンス ベースド メディスン)」を推進することが求められる。患者はより熱心に治療に取り組むことが求められる。
糖尿病に対策するために、患者や医療機関だけでは十分ではなく、糖尿病との関わりの深い人々が声を出し合い、社会の注意を喚起する必要がある。そこで、中心的な役割を担う人々を「世界糖尿病デー ヒーロー」としてインターネットに登録するプログラムも始められた。
「世界糖尿病デー ヒーロー」にはその中心となる役割が期待されている。患者団体のリーダー、糖尿病療養を推進する医師や医療スタッフ、糖尿病とともに生きスポーツ選手として活躍する患者、発症して間もない1型糖尿病の子供など、現在までに世界各地から35人が登録されている。
糖尿病ケアに対し実行力のある人々が、糖尿病についてより良く理解しコントロールしていく必要について、インターネットを通じ世界中に呼びかける試みが行われている。
世界糖尿病デー(World Diabetes Day)
国際糖尿病連合(IDF)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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