ニュース

2024年06月18日

夕方から夜のウォーキングが血糖値を下げる 糖尿病や肥満のある人に運動がおすすめ 睡眠も改善

 2型糖尿病や肥満のリスクがあり、1日に座ったまま過ごす時間が長い人は、夕方から夜にかけてウォーキングなどの活発な運動をすると、血糖値を下げるのに効果的だという調査結果が発表された。

 就寝の3~4時間前に運動をすると、睡眠の質が良くなることも分かった。

 「日中に運動をする時間をとれなかったり、暑くてできないという人には、夕方や夜に運動をすることをおすすめします」と、研究者は述べている。

夕方から夜に活発な運動をすると血糖値を下げるのに効果的

 2型糖尿病や肥満のリスクがあり、1日に座ったまま過ごす時間が長い人は、夕方から夜にかけてウォーキングなどの活発な運動をすると、血糖値を下げるのに効果的だという調査結果を、米国肥満学会(TOS)が発表した。

 血糖値を下げるホルモンであるインスリンが働きにくくなり、血糖値が上がりやすくなった状態は、インスリン抵抗性と呼ばれている。食べすぎや運動不足が原因で肥満になると、インスリン抵抗性になりやすいことが知られている。

 「中強度から高強度の運動や身体活動を行うのを習慣にすると、インスリン抵抗性が改善し、血糖値を一定に保つ恒常性が高まることが、さまざまな研究で確かめられています」と、スペインのグラナダ大学で運動生理学を研究しているジョナタン ルイス教授は言う。

 「ウォーキングなどの運動は、ご自分の行いやすい時間に行うことがすすめられますが、多くの人は日中に働いています。運動をする時間をとれるのは午後6時以降という人は多いだろうと思います」。

 「そうした場合は、夕方から夜にかけて適度な運動をすると、効果を期待できます。とくに夕食後に少し時間をおいて運動をすると、食後の血糖値の上昇を抑えられます」としている。

午後から夕方に運動をすると血糖値が全体的に低下しやすい

 研究グループは、平均年齢が46歳で、体格指数(BMI)の平均が32.9の過体重や肥満のある成人186人を対象に、ランダム化比較試験を実施した。

 参加者に、活動量計を持ち歩いてもらい、CGM(持続血糖モニター)を装着して、14日間にわたり運動や身体活動が血糖変動にどう影響するかを調べた。CGMにより24時間連続して、高血糖や低血糖、血糖の上下動などをモニターすることができる。

 その結果、午後から夕方にかけて活発な運動をしている人は、男女ともに、もっとも血糖値が全体的に低下しやすいことが示された。夜間に運動をすると、運動をしないときに比べて、血糖値の平均値は平均して2.16mg/dL低下した。

 「今回の研究は、高血糖・高血圧・高コレステロールなどの代謝障害がひとつ以上ある、肥満・過体重の方を対象としてものですが、今後は糖尿病のある方などを対象に、1日のどのタイミングで運動を行うと効果的かを解明したいと考えています」と、ルイス教授は述べている。

夜に運動をすると睡眠の質が低下する?
「いえいえ、そんなことはありません」

 夜に激しい運動をすると、その晩に眠れなくなり、睡眠の質が低下するのではないかと心配している人もいる。

 しかし、就寝の3~4時間前に運動をすると、睡眠の質は良くなることが、スイスのチューリッヒ工科大学の研究で示されている。

 ただし、就寝前の1時間以内に激しい運動をすると、心拍数が下がりにくくなり、十分な回復を得られなくなり、寝つきが悪くなるおそれがある。眠る直前に運動を行うのはすすめられないとしている。

 「日中に運動をする時間をとれないので、夕方や夜に運動をしたいが、睡眠に悪い影響が出るのが心配という人には、ためらうことなく運動をすることがすすめられます」と、同大学運動生理学研究所のクリスティーナ スペングラー所長は言う。

 「就寝の直前でなければ、夜にウォーキングなどの中強度の運動を行うのは、睡眠障害の原因にならないことが分かりました。もしも余裕があれば、疲労を残さないようにするために、運動の後にストレッチなどのクールダウンを行うこともおすすめします」としている。

 研究グループは、夜間の運動と睡眠の関連を調べた23件の研究を解析した。夕方から夜にかけて適度な運動をすると、睡眠時間の21.2%を深い睡眠で占められるのに対し、運動をしなかった夜には、深い睡眠は19.9%に減ることが示された。

 なお、ウォーキングなどの中強度の運動は、息は弾むが会話はぎりぎりできるくらいの運動で、運動を続けていると脈拍が落ち着いてきて、薄っすらと汗をかくくらいが目安になるという。

Physical activity in the evening shown to improve glucose regulation in overweight and obese adults (グラナダ大学 2024年6月14日)
Study: Physical activity in the evening lowers blood sugar levels (米国肥満学会 2024年6月10日)
Impact of lifestyle moderate-to-vigorous physical activity timing on glycemic control in sedentary adults with overweight/obesity and metabolic impairments (Obesity 2024年6月10日)
Physical activity in the evening does not cause sleep problems (チューリッヒ工科大学 2018年12月13日)
Effects of Evening Exercise on Sleep in Healthy Participants: A Systematic Review and Meta-Analysis (Sports Medicine 2018年10月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲