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2024年05月13日

糖尿病の人は「フレイル」のリスクが高い タンパク質を食べ筋肉を増やし対策 3つの質問でリスクが分かる

 「フレイル」とは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それにより健康障害を起こしやすくなっている状態。糖尿病のある人は、そうでない人に比べ、フレイルが多いことが知られている。

 しかし、食事の多様性が高い、タンパク質を含むさまざまな食品を食べている人は、フレイルになりくにいことが、日本の高齢者を対象とした研究で示されている。

 1日のタンパク質の摂取量が推奨量を満たしていた糖尿病患者は、食事の質が全体的に高いという調査結果も発表された。

 フレイルに関連する骨折のリスクは、3つの質問により知ることができる

食事でタンパク質を十分にとりフレイルを予防

 「フレイル」とは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それにより健康障害を起こしやすくなっている状態。

 運動機能や認知機能が衰えたまま年齢を重ねると、ストレスに対する回復力が低下し、高齢になって介護の必要な状態におちいるリスクが高まる。心身が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになる人も少なくない。

 フレイルを進行させないために、栄養状態に気をつけることが重要となる。食事でタンパク質を十分にとり、運動をすると、フレイルの進行をとめられ、健康な状態を取り戻せることが分かっている。

 タンパク質は、人間が生きていくうえで必要な栄養素で、筋肉や内臓など、体のあらゆる組織が、タンパク質でできており、また人間が活動するためのエネルギー源にもなっている。

 タンパク質を多く含む食品は、肉・魚介類・大豆・大豆製品・卵・乳製品など。日本の食事ガイドラインでも、食事でとるエネルギーの20%以下を、タンパク質からとることが推奨されている。

 糖尿病のある人は、そうでない人に比べ、フレイルが多いことが知られている。しかし、食事の多様性が高い、つまりさまざまな食品を食べている人は、フレイルになりくにいことが、日本の高齢者を対象とした研究で示されている。

 「良質なタンパク質を摂取し、運動をして、筋肉量を維持し、機能的な可動性を維持することが重要です」と研究者はアドバイスしている。

タンパク質が足りている人は食事の質が高い

 糖尿病とともに生きる人の多くは、食事でタンパク質を十分にとっておらず、それが炭水化物の摂取量を増やし、食事の質を下げている可能性があるという報告が発表されている。

 米オハイオ州立大学などが、2万3,000人以上の米国人のデータを解析した結果、糖尿病のある米国の成人の半数は、タンパク質の1日あたりの推奨摂取量を下回っており、食事の質が低下しているおそれがあることが明らかになった。

 1日に推奨された量のタンパク質を摂っていなかった糖尿病患者の多くは、「かがむ」「しゃがむ」「ひざまずく」「長時間立つ」「大きな物を押したり引いたりする」といった基本的な動作を行うのが難しいなど、身体的な制限がみられた。

 一方、1日のタンパク質の摂取量が推奨量を満たしていた糖尿病患者は、食事の質が全体的に高かった。野菜、全粒穀物、乳製品などの1日の推奨量をかなり満たしていた。

 「糖尿病のある人は、食事や運動などの健康的な生活スタイルを続けることで、筋肉量の低下を防ぎ、転倒やケガの危険性を下げることを期待できます」と、同大学健康リハビリテーション科学部栄養学科のクリストファー テイラー教授は述べている。

糖尿病の人はフレイルや骨折にご注意
3つの質問で転倒や骨折のリスクが分かる

 フレイルになると、心身の機能や活力が低下し、転びやすい状態になる。また、フレイルのある人は、筋肉や骨をつくるための栄養が足りていないことが多い。

 とくに高齢者は、つまずいたり、足をすべらせたときに、とっさの対応ができずに倒れ、大腿骨を骨折する場合が多い。骨折のなかでも、大腿骨の骨折は、寝たきりや要介護の原因になる。

 3つの質問に対する回答が、1年以内の骨折のリスクと関連していることが、東京大学の研究で明らかになった。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」に発表された。

 その3つの質問は次の通り。
▼ 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
▼ この1年間に転んだことがありますか?
▼ ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?

 3つの質問に対して「はい」と回答した数が多いほど、骨折の発生率が高いことが分かった。該当なしの場合の骨折発生率が3.9%であるのに対して、1項目該当では7.1%、2項目該当では10.2%、3項目該当では17.4%だった。

 研究グループは、フレイル健診を受け、データ欠落のない1万1,683人を対象に解析した。うち7.9%(927人)が新たに骨折を経験した。

たんぱく質含有食品の提供および運動の複合的介入によるフレイル予防効果-介護保険サービス利用者を対象として- (日本健康医学会雑誌 2022年10月17日)
Low Dietary Variety and Diabetes Mellitus Are Associated with Frailty among Community-Dwelling Older Japanese Adults: A Cross-Sectional Study (Nutrients 2021年2月16日)
Low Protein Intakes and Poor Diet Quality Associate with Functional Limitations in US Adults with Diabetes: A 2005-2016 NHANES Analysis (Nutrients 2021年7月27日)
Association between subjective physical function and occurrence of new fractures in older adults: A retrospective cohort study (Geriatrics & Gerontology International 2024年2月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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