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2024年05月14日

食事のカロリー制限は効果がある 細胞の老化を抑制し糖尿病や肥満が改善 1日にわずか300kcal減らしただけで効果が

 「カロリーコントロール」は、必要な栄養素を十分にとりながら、食事のカロリーを適正にコントロールしようという考え方。糖尿病の食事療法や、体重を減らす目的で多く行われている。

 食事でとるカロリーを1日あたり300kcal減らすと、血糖値・血圧値・コレステロール値などが改善するとことが、米国のデューク大学の研究で明らかになった。

 食事のカロリー制限により、細胞の老化を抑制でき、長寿遺伝子を活性化することも分かってきた。

1日にわずか300kcal減らしただけでも効果がある

 「カロリーコントロール」は、必要な栄養素を十分にとりながら、食事のカロリーを適正にコントロールしようという考え方。糖尿病の食事療法や、体重を減らす目的で多く行われている。

 多くの人は年齢を重ねるにつれ、2型糖尿病や肥満、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まっていくが、カロリーコントロールはそれを抑制するのに効果的とされている。

 肥満と判定されていない人も、カロリーコントロールにより多くの健康上のメリットを得られることが、米国のデューク大学医学部の研究で明らかになった。

 食事でとるカロリーを1日あたり300kcal減らすと、血糖値・血圧値・コレステロール値などが改善するという。過体重の人や普通体重の人も、摂取カロリーを少し減らすのは効果があるとしている。

カロリーコントロールにより体重と体脂肪が減少

 研究は、カロリー制限食の効果を調べるために行われている「CALERIE」研究の一環として行われたもの。研究グループは、50歳未満で体格指数(BMI)が22~27.9の成人218人を対象にランダム化比較試験を実施した。

 研究グループは、参加者を食事の1日のカロリー摂取量を25%カットすることを目標としたグループ(カロリーコントロール群)と、ふだんどおりの食事をしたグループ(対照群)にランダムに割り付け、2年間追跡して調査した。

 その結果、カロリーコントロール群では、目標とした25%カットには届かなかったものの、カロリー摂取量が平均して12%(およそ300kcal)減少した。

 カロリーコントロール群では、体重が平均7.5kg、体脂肪は平均5.3kg、それぞれ減った。減らした体重の71%は体脂肪の減少によるものだった。

 さらに、血糖値、血圧値、ウエスト周囲径、コレステロール値、中性脂肪値なども改善し、血糖値を下げるインスリンの効きやすさが反映されるHOMA-IRも大幅に改善した。体で起きている炎症を示すC反応性タンパク(CRP)の値も減少した。

 一方、対照群ではエネルギー摂取量は平均で0.8%減少し、体重は0.1kg増加した。

カロリー制限は肥満でない人にも効果がある

 「適度なカロリー制限により、2型糖尿病や心臓病のリスクが低下することが分かりました。カロリー制限は、肥満でない人にも効果があります」と、デューク大学医学部のウィリアム クラウス教授は述べている。

 「摂取カロリーを少し減らすのは難しいことではありません。食べ方に少し気を付けて、動物性脂肪をとりすぎない、野菜などの植物性食品を食べる、ゆっくりとよく噛んで食べる、夕食の後に間食しないなど、ちょっとした工夫で実現できます」としている。

 なお、300kcalはおよそ、ごはん1.5杯(180g)、チーズバーガー1個、ポテトチップス0.5袋(54g)、コーラ2杯(670mL)、缶ビール2本(700mL)に相当する。

カロリーコントロールにより細胞の老化を抑制

食事のカロリー制限が長寿遺伝子を活性化

 食事のカロリー制限は、寿命を延ばすのに有用であることは、多くの研究で報告されている。近年、さまざまな老化の要因を抑える長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の解明が進み、カロリー制限が影響していることが分かってきた。

 長寿遺伝子には、血糖値を下げるインスリンの分泌を促し、糖や脂肪の代謝をよくするなど、老化や寿命のコントロールに深く関与しているものがある。

 長寿遺伝子を活性化すると、細胞内でエネルギーを作りだす、体内の"エネルギー産生工場"とも呼ばれるミトコンドリアの機能低下を改善したり、体に有害な活性酸素を除去するなど、糖尿病や動脈硬化などの予防・改善にもつながるとみられている。

 ペンシルベニア州立大学はこのほど、食事のカロリー制限がテロメアの長さと生物学的老化に影響することを明らかにした。

 「テロメア」は、染色体の末端にキャップのようにくっついていて、DNAを守る役目をしており、健康長寿のカギを握るものとして注目されている。

 体の細胞は、分裂し新しく生まれ変わることで、正常な機能を維持しているが、分裂できる回数には限度がある。これは、テロメアがすり減っていくためで、細胞分裂を繰り返すたびにテロメアは短くなる。テロメアは加齢とともに短くなっていく。

カロリー制限によりテロメアの減少が遅くなる

 「寿命を延ばすメカニズムのひとつとして、細胞内の代謝が考えられます。細胞内でエネルギーが消費されると、そのプロセスで出てくる老廃物が酸化ストレスを引き起こし、DNAに損傷を与えたり、細胞を壊す可能性があります」と、同大学で生物健康学を研究しているウェイロン ヘイスティングス氏は言う。

 「しかし、食事のカロリー制限によりこの老廃物を減らすことができ、細胞が壊れるのを抑制できる可能性があります」としている。

 研究グループは、「CALERIE」研究の2年間のデータを解析し、175人の参加者のテロメアを調べた。うち3分の2はカロリー制限食をとり、3分の1は従来どおりの食事をした対照群だった。

 その結果、2年間の追跡期間に、カロリー制限を行った参加者は対照群よりも、体重が減少し、テロメアの減少も遅いことが示された。

 「2年間という短い期間は、食事のカロリー制限のベネフィットを解明するのに十分ではありませんが、研究は10年間続けられる予定であり、今後はいろいろなことが分かってくると思います」と、ヘイスティングス氏は述べている。

Even in Svelte Adults, Cutting About 300 Calories Daily Protects the Heart (デューク大学医学部 2019年7月11日)
2 years of calorie restriction and cardiometabolic risk (CALERIE): exploratory outcomes of a multicentre, phase 2, randomised controlled trial (Lancet Diabetes & Endocrinology 2019年7月11日)
Calorie restriction study reveals complexities in how diet impacts aging (ペンシルベニア州立大学 2024年4月17日)
Effect of long-term caloric restriction on telomere length in healthy adults: CALERIE 2 trial analysis (Aging Cell 2024年3月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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