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2023年06月06日

ウォーキングなどの運動は午後に行うと血糖値が大幅に改善 糖尿病の人は生活リズムも大切

 ウォーキングなどの運動は午後に行うと、より血糖値が低下しやすいことが、米国のブリガム アンド ウィメンズ病院やジョスリン糖尿病センターなどの研究で示された。研究成果は、「Diabetes Care」に掲載された。

 「ウォーキングなどの活発な運動は、1日のどのようなタイミングで行っても、血糖値を下げる効果を期待できますが、今回の研究では、運動は午後に行うと、とくに血糖管理を改善する効果が大きいことが分かりました」と、同病院神経内科のジンイー チエン氏は言う。

 「健康的な食事や、運動を習慣として行うなど、生活スタイルを改善することは、糖尿病をより良く管理するための効果的な方法になります」としている。

午後に運動をするとHbA1cがもっとも低下

 研究は、米国国立衛生研究所(NIH)が主導している「Look AHEAD」研究の成果を分析したもの。この研究は、生活スタイルをどのように改善すると、2型糖尿病や肥満のリスクを減少できるかを探る目的で実施された。

 研究には5,000人超の2型糖尿病患者が参加し、これまでに運動や食事などの生活スタイル改善に取り組むことで、血糖や血圧などの管理が良くなり、心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患のリスクを減らせることが示されている。

 今回の研究の対象となったのは、肥満や過体重のある平均年齢59歳2型糖尿病患者2,416人。参加者に、活動量計を7日間装着してもらい、運動をする時間帯によって血糖値にどのように影響があらわれるかを調べた。

 その結果、運動をしたグループでは、あまり運動をしなかったグループに比べ、1~2ヵ月の血糖値を反映し血糖管理の指標となるHbA1cは低下した。

 HbA1cの低下がもっとも大きかったのは、午後に運動をしていたグループで0.22%低下した。運動をしたグループのHbA1cの低下は、運動不足のグループに比べ大きかった。

 とくに午後に運動をしたグループでは、他の時間帯に運動をしたグループに比べ、HbA1cの低下は30~50%大きかった。

 さらに、運動習慣などの生活スタイルを改善し、体重減少に成功したグループでは、血糖降下薬などの糖尿病治療薬の服用を中止した割合が、午後に運動をしていた人では2倍以上高かった。

関連情報

午後に体を活発に動かすと血糖管理が改善しやすい

 米国では糖尿病の有病者は3,700万人以上とみられており、うち90~95%が2型糖尿病だ。糖尿病とともに生きる人が適切な治療を受けず、高血糖を放置していると、心臓病、脳卒中、視力障害、腎臓病などの合併症のリスクが上昇する。

 「運動を習慣として行うことを始めるのは、とくに運動不足の人にとってとても重要です。今回の研究では、運動を行うタイミングも影響することが分かりました」と、チエン氏は言う。

 「肥満のある2型糖尿病の人は、午後に活動的であり体を動かしていると、血糖管理がもっとも改善されやすいことが示されました」としている。

 糖尿病の管理を改善するための食事スタイルでは、朝食も大切だが、夕食は大きなポイントになる。多くの人にとって、夕食は「ビッグミール」とも呼ばれる。

 時間に制約がある朝食や昼食に比べて、夕食は1日の仕事が一段落した後ということもり、朝や昼よりも多く食べてしまいがちだ。

 朝や昼と違って、就寝中はあまりエネルギーを使わないので、夕食で食べ過ぎると、食事から得たエネルギーの多くを使えず、血糖値の上昇や肥満につながりやすい。

 血糖値は食後に急上昇しやすく、「血糖値スパイク」とも呼ばれている。食後に運動をすることで、血糖値を下げる効果がすぐにあらわれる。散歩程度の軽い運動でも良いので、食後に体を動かすことは大切だ。

食事や運動のタイミングは概日リズムに影響

 研究グループによる、2,035人の2型糖尿病患者を対象とした別の研究では、1日で運動を行うタイミングにより、心筋梗塞や狭心症などの冠状動脈性心疾患(CHD)のリスクや、心肺機能レベルにも違いが出てくることが示された。

 睡眠や体温、血圧、ホルモン分泌など体の基本的な機能はおよそ24時間のリズムを示す。この1日周期の睡眠と覚醒のリズムは「概日リズム」と呼ばれる。

 食事や運動などのタイミングは、概日リズムにも影響するので、これが狂わないようにするため、生活スタイルを調整することが重要であることが、最近の多くの研究で示されている。

 「運動を習慣として行うことは、健康に大きなメリットをもたらすため、チャンスをみつけて、できる限り運動するよう努めることが、すべての人に勧められます」と、ジョスリン糖尿病センターで患者教育などを教育しているローランド ミデルベーク氏は述べている。

 「しかし、食事療法や運動療法に取り組んでいて、なかなか成果をえられないという人は、夜にドカ食いをしていたり、夜遅くまで起きているなど、食事・運動・睡眠などの生活のリズムやタイミングについても見直すと、良い影響があらわれると考えられます」としている。

 「ただし、運動や食事などについて、どのタイミングが良いかについては個人差もあります。1人ひとりに合わせて最適化した生活指導を実現するため、今後さらなる研究が必要です」としている。

Afternoon exercise linked with greater improvements in blood sugar levels for patients with type 2 diabetes (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2023年5月25日)
Association of Timing of Moderate-to-Vigorous Physical Activity With Changes in Glycemic Control Over 4 Years in Adults With Type 2 Diabetes From the Look AHEAD Trial (Diabetes Care 2023年5月25日)
Among Men with Type 2 Diabetes, Timing of Daily Physical Activity Linked to Fitness Levels and Cardiovascular Risks (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2021年2月17日)
Association of Objectively Measured Timing of Physical Activity Bouts With Cardiovascular Health in Type 2 Diabetes (Diabetes Care 2021年2月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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