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2023年05月23日

食後のわずか2分間のウォーキングで糖尿病リスクを減らせる 運動は自分のやりやすい方法で柔軟に

 食後にわずか2~5分間、軽いウォーキングをするだけでも、糖尿病リスクを減らすのに役立つという研究が発表されている。

 座ったままの時間が長く、体をまったく動かさないのは危険なので、時間が少し空いていれば、休憩をとり立ち上がって、体を動かすことが勧められている。

▼スマホや歩数計などで歩数を毎日カウントする、▼ときどきウォーキングの速度を上げてみる、▼15分間だけでも活発なウォーキングをしてみるなど、自分のやりやすい方法で運動に取り組むことがアドバイスされている。

座ったまま過ごす時間が長いのは危険 空いた時間に体を動かそう

 2型糖尿病のリスクのある人は、食後に軽く歩くだけでも、糖尿病リスクを減らすのに役立つという研究が発表されている。

 食後にわずか2~5分間、軽いウォーキングをするだけでも、座ったまま過ごすのに比べ、良好な血糖管理につながるという。

 「座ったまま過ごす時間が長引いたときは、ときどき立ち上がって、とくに食後は、短い時間でも歩いてみるだけで、驚くほど良い効果を得られます」と、アイルランドのリムリック大学体育・スポーツ科学部のエイダン バフィー氏は言う。

 たとえば、机に座ったりソファに腰を下ろしたりなど、座ったまま過ごす時間が長引いたときには、それを中断して、とくに食後にわずか2~5分の軽い運動をするだけでも、血糖管理を改善する効果を期待できるという。

食後に軽く歩くと血糖値の上昇を抑えられる

 これまで、食後血糖値を下げ、糖尿病合併症を防ぐために、最低でも15分間のウォーキングを続ける必要があると考えられていた。ウォーキングなどの運動を、週に合計して150分行うことが奨励されている。

 しかし、最近の研究では、細切れの時間に軽い運動をするだけでも、1日にそれを頻繁に行うことで、健康効果を得られることも分かってきた。

 「ウォーキングを食後に行うと、食後の血糖値の上昇を抑えることを期待できます。2型糖尿病の人の血糖管理を改善するために、食後の血糖値の上昇を抑えることは重要です」と、同大学人間・栄養学部のアンドリュー レイノルズ氏は言う。

 「とくに食事に糖質が多く含まれるとき、食後のウォーキングにより効果的に血糖値の上昇を抑えられるのは有用です。もっとも危険なのは、座ったままの時間が長く、体をまったく動かさないことです」。

 「食事の後に、時間が少し空いていれば、軽く歩いてみるなどして体を動かすことは、身体活動による優れた休憩になります」としている。

関連情報

スマホや歩数計で歩数をカウントすると血圧も下がる

 ウォーキングに慣れてきたら、少しずつ時間や歩数を増やしていくと、より効果的だ。

 スマホやスマートウォッチ、歩数計、活動量計などで歩数を毎日カウントしていると、ウォーキングを続けるうえで励みになり、やる気が出てくる。

 米国心臓病学会(ACC)が発表した別の研究では、歩数計やスマホで歩数を記録していて、その歩数の多い人は、少ない人に比べ、血圧が低いことが明らかになっている。

 「歩数を記録する機能の付いたスマートホンなどを、多くの人が持っています。こうしたデバイスを、運動や身体活動を増やすのに役立てれば、肥満の負担を軽減し、潜在的に血圧値や血糖値を下げることにつながると期待しています」と、カリフォルニア大学医学部循環器内科のマヤンク サルダナ氏は言う。

 「フラミンガム心臓研究」は、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を解明するために、米国で1940年代から行われている大規模研究。

 研究グループはこの研究に参加した平均年齢55歳の男女638人に、歩数をカウントできるスマートウォッチを持ち歩いてもらい、自宅では家庭用血圧測定器で血圧を測ってもらった。

 その結果、参加者は5ヵ月間で平均して7,531歩を歩いていた。参加者の収縮期(最高)血圧の平均は122mmHgで、拡張期(最低)血圧は76mmHgだった。

 1日の歩数が多い人は、最高血圧と最低血圧が低いことが明らかになった。1日の歩数が1,000歩増えるごとに、最高血圧は0.45mmHg低下し、最低血圧は0.36mmHg低下した。

 「将来的には、ウォーキングなどの運動や身体活動を促すために、スマートデバイスをどのように活用すれば良いかを解明したいと考えています」と、サルダナ氏は述べている。

自分のやりやすい方法で運動に取り組むと効果を得られる

 ウォーキングをどのように行うと高い効果を得られるかについて、日本でもさまざまな研究が行われている。運動は、個々人が自分のやりやすい方法をみつけて取り組むのが良さそうだ。

 徳島大学が、1年以上前に2型糖尿病と診断された14人の患者を対象に行った研究では、昼食の1時間後にウォーキングをすると、食後の血糖値が大きく低下し、血糖管理が改善することが明らかになっている。

 効果が高いのは、食後に行う30分のウォーキングに、通常の速さの歩行に加えて、速度を10%上げる早歩きと、20%上げるさらに活発な早歩きを取り混ぜて行う方法だという。

 名古屋大学などによる別の研究では、インスリンや飲み薬で治療をしている11人の2型糖尿病患者に、日を変えて食事の後に、15分間のウォーキングと30分間のウォーキングにそれぞれ取り組んでもらった。

 その結果、15分間のウォーキングでも、最大心拍数の40%以上にあたる運動強度であると、血糖値を下げる効果を得られることが分かった。これは、「ややきつい」と感じるくらいの活発なウォーキングに相当する。

 「毎日忙しくて、運動の時間を30分もとれない」という人も、細切れの時間をみつけて工夫して行うと、運動の効果を期待できる。

 血糖値は1日で上下に変動しており、上がり過ぎず、下がり過ぎないのが良い。研究では、CGM(持続血糖モニター)により、24時間の血糖変動も測定した。その結果、運動をすることで、血糖変動も改善していた。

Weekly Exercise Targets The magic number: 150 (米国糖尿病学会)
The Acute Effects of Interrupting Prolonged Sitting Time in Adults with Standing and Light-Intensity Walking on Biomarkers of Cardiometabolic Health in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis (Sports Medicine 2022年2月11日)
Step It Up: Higher Daily Step Counts Linked With Lower Blood Pressure (米国心臓病学会 2020年3月19日)
Association of Habitual Physical Activity With Home Blood Pressure: Insights From The Electronic Framingham Heart Study (Journal of the American College of Cardiology 2020年3月)
Acute effect of fast walking on postprandial blood glucose control in type 2 diabetes (Diabetology International 2015年6月27日)
Effect of postprandial moderate-intensity walking for 15-min on glucose homeostasis in type 2 diabetes mellitus patients (Diabetology International 2020年4月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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