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2023年05月22日
糖尿病の人は脳の老化が速い? 血糖値を下げると認知症リスクは大幅に低下 予防のための「7つの生活スタイル」
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- メンタルヘルス 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
2型糖尿病とともに生きる人は、糖尿病のない人に比べ、脳の老化が26%速いという気になる調査結果が発表されている。
ただし、糖尿病とともに生きる人が治療を続けて、血糖値を下げて適正に管理できていると、認知症リスクを大幅に下げられることが、25万超を対象とした別の調査で示された。
米国神経学会(AAN)が発表した研究では、血糖管理に含めて、同学会が提唱する「7つの健康的な生活スタイル」を実行していると、認知症のリスクを大幅に低下できることが明らかになっている。
血糖値が高いと脳の老化が促される
50歳~80歳の男女2万人超を対象とした調査で、2型糖尿病とともに生きる人は、糖尿病のない人に比べ、脳の老化が26%速いという気になる結果が出ている。 「2型糖尿病があり高血糖の期間が長いと、脳の老化が促されるおそれがあり、その影響は糖尿病と診断される何年も前から始まっている可能性もあります」と、米ニューヨーク州立大学生物医工学部のボットンド アンタル氏は言う。 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を対象に追跡して調査している大規模研究。血液やDNAサンプル、食事や身体活動などの生活習慣などとの関連を調べている。 研究グループは、英国バイオバンクに参加した、2型糖尿病のある1,012人を含む50歳~80歳の男女2万314人のデータを解析した。データにはMRIスキャンを使用した脳の検査の結果なども含まれていた。糖尿病の治療を行わないでいると脳の老化が加速
その結果、血糖値が高い状態が続き、それに老化が加わると、「作業記憶」「学習能力」「柔軟な思考」などの実行機能と、「脳の処理速度」に悪影響がもたらされることが明らかになった。 糖尿病のある人は、糖尿病でない同年齢の人に比べて、加齢による影響を受けやすく、実行機能は13.1%より低下し、処理速度は6.7%より低下していた。ニューロン(神経細胞)が集まっている灰白質も、6.2%より減少していた。 「脳機能に対するこうした深刻な影響は、糖尿病の罹病期間が長くなるにつれて強まり、適切な治療を行わないで糖尿病が進行すると、脳の老化が26%加速することと関連することが示されました」と、アンタル氏は述べている。 「認知症と診断された時点の数十年前から、脳に異常タンパクが蓄積され、認知症の前兆がはじまっていることが分かっています。若いうちから生活スタイルを見直して、認知症のリスクを減らす対策を開始することが大切です」としている。血糖値を適正に管理できていると認知症リスクは大幅に低下
「HbA1c 7%未満」を目標にして合併症を予防
その結果、1~2ヵ月の血糖値を反映し、血糖コントロール目標になっているHbA1cが、6%以上8%未満に管理されていた患者では、認知症の発症リスクが低下していた。 とくに、HbA1cが6%~7%未満と、良好な血糖管理を維持できている患者では、認知症リスクは0.79倍に大きく低下した。 糖尿病の合併症を予防するための血糖コントロール目標は、HbA1c 7%未満とされている。 ただし高齢者では、薬が効き過ぎて低血糖になったり、薬が多くなり相互作用などが起こるのを防ぐために、HbA1cの目標は7%未満から8%未満と緩く設定されることがある。認知症を予防するための「7つの健康的な生活スタイル」
認知症を予防するための7つの健康的な生活スタイル
▼ 健康的な食事 |
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野菜、全粒穀物、大豆、魚、豆類、ナッツ類、海藻、果物などの健康的な食品をバランス良く食べ、糖質や脂肪の多い加工食品や、動物性脂肪の多い加工肉や赤身肉は食べ過ぎない。
朝食を毎日食べ、高カロリーの食品の間食はしない。適正な体重を維持する。 |
▼ 運動を習慣として行う |
運動には「血糖値が下がる」「血圧を下がる」「中性脂肪が減る」「肥満を改善できる」など、さまざまな効果がある。
ウォーキングなどの中強度の運動を週に2.5時間(1日30分程度)以上、または75分間の高強度の運動を行うのが目標。 |
▼ 座ったまま過ごす時間を減らす |
運動以外にも、仕事や家事などで、なるべく体を活発に動かすようにする。
座ったまま過ごす時間が長引いたときには、ときどき立ち上がって体を動かす。テレビの視聴時間は1日4時間未満に制限する。 |
▼ 適度なアルコール摂取 |
適度なアルコール摂取量は、男性は1日2ドリンク(純アルコール換算で20g)まで、女性は1日1ドリンク(同10g)まで。
アルコール量20gは、ビール(ロング缶)1本(500mL)、チューハイ(レギュラー缶)1本(350mL)、日本酒1合(180mL)、焼酎1杯(100mL)、ワイン2杯(120mL)、ウイスキー2杯(60mL)に相当する。 お酒を飲む習慣のない人は無理して飲まない、飲まない人には勧めないことも大切。アルコールの適量には個人差があるので、どの程度のお酒の量で自分がどんな状態になるかを知っておくことも必要。 |
▼ 睡眠をしっかりとる |
睡眠時間は1日に7~9時間が理想的。
不眠・睡眠不足が続くと、日中の活動に支障をきたすだけでなく、うつ病や動脈硬化、糖尿病などのリスクも高まる。 寝つきの悪さは生活スタイルを見直すことで改善できる。不眠に悩む人は専門家に相談を。 |
▼ 社会的交流を活発にする |
さまざまな人と頻繁に社会的に接触し、身体活動や知的な活動を増やす。
社会活動への参加は、認知機能とメンタルヘルスの改善と関連がある。社会的なつながりを深めることで、認知機能の低下のリスクを防げる可能性がある。 |
▼ タバコを吸わない |
タバコは、動脈硬化や腎臓病、がんなど、さまざまな病気のリスクを高める。もちろん糖尿病にも良くない。
禁煙すればリスクは減る。タバコを吸う習慣のある人は、いまさらやめても遅いと諦めず、禁煙外来を利用するなどして、禁煙に取り組むことが大切。 |
Association of Combined Healthy Lifestyle Factors With Incident Dementia in Patients With Type 2 Diabetes (Neurology 2022年9月14日)
Type 2 diabetes accelerates brain aging and cognitive decline (eLife 2022年5月24日)
Type 2 diabetes mellitus accelerates brain aging and cognitive decline: Complementary findings from UK Biobank and meta-analyses (eLife 2022年5月24日)
Glycemic Control Over Multiple Decades and Dementia Risk in People With Type 2 Diabetes (JAMA Neurology 2023年4月17日)
Can Healthy Living Habits Keep Your Brain Youthful ? (米国神経学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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