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2023年04月19日

「不健康な食事」が世界で糖尿病リスクを高めている 質の悪い糖質を摂り過ぎ 184ヵ国の食事を調査

 世界184ヵ国の食事を調査した研究で、不健康な食事スタイルが、2018年に1,410万人の2型糖尿病の原因になっていることが明らかになった。新たに2型糖尿病と診断された人の70%以上に、不健康な食事が関与しているという。

 世界で2型糖尿病の発症の増加にとくに大きく影響している不健康な食事の特徴は、▼玄米や麦ごはん、全粒粉パンなどの「全粒穀物」が足りていないこと、▼精白された米や小麦を過剰に摂取していること、▼ハムやウィンナー、ベーコンなどの動物性の加工肉の食べ過ぎていることだという。

「不健康な食事」が世界の1,410万人の糖尿病に影響

 世界184ヵ国の食事を調査した研究で、不健康な食事スタイルが、2018年に1,410万人の2型糖尿病の発症に影響していたことが明らかになった。新たに2型糖尿病と診断された人の70%以上に、不健康な食事が関与しているという。

 国際糖尿病連合(IDF)によると、世界で糖尿病とともに生きる人の数は5億3,700万人に達し、いまや世界の成人の10人に1人が糖尿病だ。また、5億4,100万人が将来に2型糖尿病を発症するリスクの高い糖尿病予備群とみられている。

 研究は、米国のタフツ大学栄養科学政策大学院によるもの。研究グループは、「グローバル食事データベース(GDD)」に登録された、1990年と2018年のデータを比較し、世界の地域ごとに、どのような食事要因が2型糖尿病の負担を増大させているかを調べた。研究成果は、「Nature Medicine」に発表された。

 同データベースは、同大学が中心となり構成されるグローバル栄養政策コンソーシアムが運営するもので、世界中の数百人もの公衆衛生と栄養の専門家が協力し、世界各国の食事・食品・栄養について、とくに消費レベルから詳しく調査している。

糖尿病の増加に影響する「不健康な食事」の特徴は?

 その結果、世界で2型糖尿病の増加にとくに大きく影響しているのは、次の3つのことであることが明らかになった。

世界で2型糖尿病の原因となっている不健康な食事の特徴

全粒穀物が足りていないこと
 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、外皮(ふすま)、胚芽、胚乳などの部位を取り除いていない穀物。未精製の穀類として、玄米、分づき米、麦ごはん、雑穀、ライ麦パン、全粒粉パン、ふすまパンなどがある。
 たとえば玄米には、不足しがちな食物繊維・ビタミンB群・マグネシウム、さらには健康に有用な働きをする植物成分であるフィトケミカルが、白米よりも多く含まれている。

精白された米や小麦を過剰に摂取していること
 精製された白米や小麦粉は、糖質の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなる。

加工肉を過剰に摂取していること
 ハムやウィンナー、ベーコン、チキンナゲットなどの動物性の加工肉の食べ過ぎにより、体に悪いコレステロールや飽和脂肪酸を増やしてしまうおそれがある。

 「今回の研究で、国によって、また時間の経過とともに変動はあるにしても、世界的に質の悪い炭水化物、とくに糖質の摂り過ぎが、食事に起因する2型糖尿病の主な原因であることが示唆されました」と、同大学栄養科学政策大学院のダリウシュ モザファリアン教授は言う。

 「この新しい研究成果は、世界で糖尿病による壊滅的な負担を軽減するために、国民の栄養を改善することが、各国が取り組むべき重要な課題になっていることを示しています」としている。

 なお研究では、フルーツジュースを飲み過ぎや、ジャガイモ・トウモロコシ・サツマイモなどのデンプン質の多い野菜の食べ過ぎ、ナッツ類をあまり食べてないことなどは、糖尿病の発症にはあまり影響していないことも示された。

関連情報

糖尿病はありふれた病気 誰が発症しても不思議ではない

 今回の調査の対象となった184ヵ国のすべてで、1990年から2018年にかけて2型糖尿病の症例は増加しており、患者・家族・医療制度への負担が増大していることも示された。

 2型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの分泌の低下や、インスリンの効果を発揮できなくなるインスリン抵抗性により、インスリンが十分に働かなくなり、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増え過ぎてしまう病気。

 糖尿病はありふれた病気であり、誰が発症しても不思議ではない。いまは糖尿病と診断されていなくても、将来に発症するリスクの高い人も多い。

 血糖値が高い状態を、何年間も放置していると、血管が傷つき、将来的に心臓病や脳卒中、失明、腎不全、足の切断といった、合併症を発症するリスクが高まる。

 「2型糖尿病を放置し、発症率が上昇すると、多くの人々の健康、経済生産性、各国の医療体制のキャパシティに影響をもたらし続け、世界中で健康の不平等をさらに促進することになります」と、同大学院のメーガン オハーン氏は言う。

 オハーン氏は、不健康な食事をしている人々の栄養を改善するために、食品・農業企業による革新的な技術の開発を促す目的で活動している、非営利機関と営利目的の基金である「Food Systems for the Future」の仕事もしている。

 「とくに低所得のコミュニティに属する人の食事を改善することが望まれます。各国の臨床医・政策立案者、民間部門の関係者が、糖尿病の世界的な流行に対応し、健康的な食事を奨励するため協力するべきです」としている。

不健康な食事スタイルが世界レベルで糖尿病リスクを高めている

 研究グループは今回、複数のデータベースからの人口統計、世界の2型糖尿病発症の推定値、食事スタイルが2型糖尿病や肥満症の発症にどのように影響するかを調べた主要な研究論文と、グローバル食事データベースの情報を合わせて、予想モデルを作成した。

 その結果、不健康な食事スタイルが世界レベルで、男性・女性、若者・高齢者、都市部・農村部の住民で、2型糖尿病の発症リスクを大きく高めていることを明らかにした。

 地域別にみると、とくに中央・東ヨーロッパと中央アジア、また食事で赤身肉・加工肉・ジャガイモを多く摂っているポーランドやロシアなどで、食事に関連する2型糖尿病の発症例が多かった。

 糖尿病の発症率がもっとも高いのは、ラテンアメリカとカリブ海諸国で、とくにコロンビアとメキシコでは、糖質の多い飲料や食品、加工肉の消費量が多く、全粒穀物の摂取量が少ないことが示された。

 日本は、国立がん研究センターのデータなどが解析され、不健康な食事は比較的少ないことが示されている。インド・ナイジェリア・エチオピアでも、不健康な食事に関連する2型糖尿病の発症は少なかった.

 過去の研究では、世界の2型糖尿病患者の40%が不健康な食事に起因していると推定されており、今回の研究で報告された70%よりも低い。

 研究グループはこれについて、今回の研究の新しい分析では、農業データからの推定ではなく、世界の個人レベルの食事調査にもとづいた食生活に関する最新のデータを使用していることを説明している。ただし、より新しい正確なデータが望まれており、引き続き研究を続ける必要があるとしている。

Study Links Poor Diet to 14 Million Cases of Type 2 Diabetes Globally: Researchers from the Friedman School of Nutrition Science and Policy estimate 7 out of 10 cases of type 2 diabetes worldwide in 2018 linked to food choices
Incident type 2 diabetes attributable to suboptimal diet in 184 countries (Nature Medicine 2023年4月17日)
Global Dietary Database (タフツ大学)

IDF Diabetes Atlas 10th Edition (世界糖尿病連合)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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