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2021年08月26日

高カロリーの甘い飲み物が糖尿病リスクを上昇 心筋梗塞や脳卒中が増えて死亡リスクも上昇

 コーラやサイダーなどの清涼飲料、ジュース、缶コーヒー、ドリンク剤などの高カロリーの甘味飲料を飲み過ぎていると、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクが上昇し、死亡リスクも1.15倍高くなることが、日本人7万人超を約17年間追跡した調査で明らかになった。
 高カロリーの甘味飲料は、血糖値やインスリン濃度を上昇させる目安となるグリセミック インデックス(GI)が高く、肥満や2型糖尿病のリスクを上昇させ、心血管系や代謝系の機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
日本人の甘味飲料の摂取と心筋梗塞や脳卒中などの関連を調査
 高カロリーの甘味飲料の飲み過ぎは、体重増加や2型糖尿病、がん、脳血管疾患の罹患などと関連していることが知られている。

 海外で行われた研究で甘味飲料の摂取と死亡リスクとの関連が報告されている一方で、アジアで行われた研究では関連がないという報告もあり、結果が一致していない。

 そこで国立がん研究センターなどの研究グループは、日本人を対象とした疫学研究を行い、甘味飲料の摂取量と死亡リスクとの関連について調査した。

 「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。

 研究グループは、1995年と1998年に、岩手、秋田、長野、沖縄、東京、茨城、新潟、高知、長崎、大阪の11保健所管内に在住していた45~74歳の男女7万486人を対象に、2015年まで追跡して調査した。

 甘味飲料の摂取量は、食事アンケート調査で、清涼飲料水(コーラなど)、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、缶コーヒー、乳酸菌飲料、β-カロチン含有飲料、カルシウム飲料、ドリンク剤の摂取量の合計で算出した。

関連情報
高カロリーの甘味飲料を飲むと死亡リスクが上昇
 甘味飲料の摂取量を少ない順に並べて、人数が均等になるよう5グループに分け、もっとも摂取量が少ないグループと比較して、その他のグループの、その後の全死亡およびがん、循環器疾患、心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患による死亡リスクを調べた。

 その結果、平均17.1年間の追跡調査中に、1万1,811人が死亡した。死因は、がんが4,713人、循環器疾患が2,766人、心疾患が1,412人、脳血管疾患が1,088人、呼吸器系疾患が888人、消化器系疾患が433人だった。

 解析した結果、甘味飲料の摂取量がもっとも少ないグループに比べ、もっとも多いグループでは、全死亡リスクが上昇していた。さらに、循環器疾患や心疾患による死亡リスクもやはり上昇した。

 甘味飲料の摂取量がもっとも多いグループでは、全死亡で1.15倍、循環器疾患は1.23倍、心疾患は1.35倍、それぞれ死亡リスクが高くなった。一方で、がん、脳血管疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患では、関連はみられなかった。

甘味飲料の摂取量と死亡別リスク
高カロリーの甘味飲料を飲み過ぎていると、心筋梗塞や循環器疾患などの発症が増えて死亡リスクも上昇する。

出典:国立がん研究センター、2021年
高カロリーの甘味飲料は血糖値を上げやすい
 このように、日本人を対象とした大規模な調査でも、甘味飲料の摂取量が多いほど死亡リスクが高くなることが分かった。また、循環器疾患や心疾患による死亡リスクでも、同様の関連がみられた。やはりこうした高カロリーの飲み物は、飲み過ぎないようにした方が良さそうだ。

 高カロリーの甘味飲料の飲み過ぎにより、循環器疾患や心疾患による死亡リスクが増加する理由としては、こうした飲料の多くは、血糖値やインスリン濃度を上昇させる目安となるグリセミック インデックス(GI)が高く、心血管系や代謝系の機能へ悪影響を及ぼす可能性があることが考えられる。

 一方、海外の調査では、欧米やアジアの研究では異なる結果が出ているが、研究グループは「甘味飲料を飲んでいる割合の違いが影響しているのではないか」と述べている。欧米の研究では、甘味飲料を月に1度以上飲んでいる割合が58~76%であるのに対して、アジアでの研究では26%だった。

 今回の研究では、甘味飲料を月に1度以上飲んでいる割合は85%であり、日本人の甘味飲料の摂取状況は欧米に近いと考えられる。

 研究の限界として、甘味飲料の摂取量が自己申告にもとづくものであることや、研究開始時に2型糖尿病などの慢性疾患のある参加者は、甘味飲料の摂取量を少なく報告する傾向があることなどを挙げている。

 「今回得られた結果は、日本ではじめての報告で、アジアからの報告も少ないため、甘味飲料の摂取とがんや死亡リスクとの関連を確認するためには、さらなる研究の蓄積が必要です」と、研究グループは述べている。

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
Association of sugary drink consumption with all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study(Preventive Medicine 2021年4月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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