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2020年11月25日

糖尿病の人がウォーキングなどの運動をすると脳が良くなる 認知機能にプラスに影響

 ウォーキングなどの運動を行うと、体調を良くなるだけでなく、認知機能にもプラスの影響があらわれることが分かってきた。
 糖尿病の人が運動をすると、脳の血流が増え、認知能力に関わる灰白質が増えやすくなるという報告が発表された。
 激しい運動でなくとも、ゆっくりしたウォーキングやヨガでも、脳の機能の向上を期待できるという。
ウォーキングなどの運動は脳の血管や神経にも良い
 2型糖尿病の人の多くで、とくに肥満のある人では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効果的に作用しない「インスリン抵抗性」がみられる。

 インスリンは、血液中の糖を細胞が取り込むときに使われ、細胞内に取り込まれた糖はエネルギー源となるが、肥満などが原因でインスリン抵抗性があると、この作用がうまく働かなくなり高血糖になりやすい。

 最近の研究で、インスリン抵抗性は、脳の血管を障害したり、神経組織の変性にも関与している可能性があることも分かってきて、注目されている。

 運動を習慣として続けると、インスリンに対する体の感受性を高められ、血糖コントロールが改善するだけでなく、脳の血管や神経組織の障害も抑制できると考えられている。

 とくに高齢者では、運動により余分な体脂肪が減り、筋肉を増やせ、血管の状態も良くなるので、運動を行うことが強く勧められている。
食事と運動に取り組むと脳の血流が増える
 米国老年医学会が発表した研究では、2型糖尿病の人が、食事療法にあわせて運動療法も行い、身体活動を増やすと、脳の血流が良くなることが示された。

 ウェイクフォレスト大学医学部などの研究チームは、45~76歳の肥満のある2型糖尿病患者321人を対象に約10年間、食事療法と運動療法に取り組んでもらった。

 体重を減らすため、食事のカロリーを1日に1,200〜1,800kcalにコントロールし、活発なウォーキングなどの運動を週に175分行ってもらった。

 10年後、MRI(核磁気共鳴画像法)で検査したところ、食事と運動を続けた人では、脳内の血流が多いことが分かった。また、脳内の血流が多い人では、認知機能テストの成績も良い傾向がみられた。

関連情報
ウォーキングなどの運動が認知機能にプラスに影響
 また、米国のメイヨークリニックの研究では、ウォーキングやエアロバイクなどの有酸素運動を続けている人は、脳の灰白質の量が増えやすいことが分かった。灰白質は認知能力と深い関わりがある。

 研究には、ドイツ北東部の2つのコホートからの2,013人の中高年が参加。1997~2012年に、心肺フィットネスを行っているときの最大酸素摂取量や、MRIによる脳の検査などを行った。

 「ウォーキングなどの運動は、体調を良くするのに加えて、認知機能にプラスに影響する可能性があることが示されました」と、メイヨークリニックの神経内科医であるロナルド ピーターセン氏は言う。

 「中年期の人の脳にとって、運動にプラスの効果があることを示した研究はこれまでも報告されていますが、それだけでなく、運動は高齢者にとっても有益であることが示されました」。

 メイヨークリニックでは、
▼タバコを吸う人は禁煙をする。
▼健康的な食事スタイルを続ける。
▼健康的な体重を維持する、肥満のある人は体重を減らす。
▼血圧が高くなっている人は、血圧をコントロールする。
▼高コレステロールも改善する。
▼糖尿病の人は血糖値をコントロールする。高血糖は、時間の経過とともに心臓や脳、腎臓など体のさまざまな部位に障害をもたらす。
――といったことをアドバイスしている。
ゆっくりしたウォーキングやヨガでも脳の機能は向上
 軽い運動を短時間やっただけでも効果がある。もっとも危険なのは、体をまったく動かさず、座ったままの時間の長い生活を続けることだ。

 筑波大学の研究で、ゆっくりしたペースのウォーキングやヨガ、体操のような「超低強度運動」を10分間行うと、その直後に記憶力が向上することが明らかになった。

 運動により、脳の学習・記憶に関わる部位である海馬の活動が活発になり、記憶システム全体が向上することが、最先端の機能的MRIによって実証された。

 運動は、体力の維持・増進だけでなく、脳、とりわけ学習・記憶を担う海馬にも有益な効果をもたらすことが最近の研究で分かってきた。運動を認知症の予防策として利用する試みも注目されている。
軽い運動を短時間しただけで記憶力を高められる
 これまで、成体の脳では神経細胞は減少するのみで再生はしないと考えられてきたが、最近の研究では脳の限られた領域で、新しい神経細胞が産生されていることが確認されている。

 新たに生まれた神経細胞は、既存の神経回路に組み込まれることで、機能的に働き、学習・記憶能など重要な役割を担っていると考えられている。

 筑波大学体育系の征矢英昭教授らの研究グループは、「超低強度運動」により、海馬を中心とした記憶システムが活性化し、記憶力を向上できることを、ヒトを対象に行った実験で明らかにした。

 「超低強度運動」とは、最大酸素摂取量の37%以下の強度の運動のこと。心拍数は若齢者でおよそ100拍/分以下で、高齢者でおよそ90拍/分以下の、かなり楽だと感じる運動だ。
認知低下を予防するための運動プログラムを開発
 研究グループは、ヒトを対象に、米カリフォルニア大学の研究グループが開発した最先端の機能的MRI(核磁気共鳴画像法)の技術を使い、脳を高解像度で可視化した。

 健常の若齢成人36人を対象に、超低強度運動を10分間行った直後と安静後に、記憶課題に取り組んだ際の脳の活動を、機能的MRI技術により高解像度で可視化し比較した。

 その結果、超低強度運動が海馬を活性化し、とくに海馬歯状回を中心とした記憶システム全体を上方制御することで、記憶能を向上することが明らかになった。

 これにより、ゆっくりしたペースのウォーキングやヨガ、体操、太極拳のような軽運動により、海馬を刺激でき、機能を向上できることが示された。

 「学習の前に行う短時間の軽運動は、記憶力を高める脳のコンディショニング法として役立つ可能性が考えられます」と、研究者は述べている。

 「今後は、記憶力の低下した高齢者や低体力者でも行える、海馬をターゲットとした軽運動プログラムの開発が期待されます」としている。

For Older Adults With Diabetes, Losing Weight Through Diet And Exercise Can Improve Blood Circulation In The Brain(米国老年医学会 2017年10月30日)
Long Term Effect of Intensive Lifestyle Intervention on Cerebral Blood Flow(Journal of the American Geriatrics Society 2017年10月30日)
Expert Alert: Keep exercising: New study finds it's good for your brain's gray matter(メイヨークリニック 2020年1月2日)
Cardiorespiratory Fitness and Gray Matter Volume in the Temporal, Frontal, and Cerebellar Regions in the General Population(メイヨークリニック プロシーディング 2020年1月1日)
筑波大学 体育系 運動生化学研究室(征矢研究室)
Rapid stimulation of human dentate gyrus function with acute mild exercise(PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) 2018年10月9日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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