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2020年11月09日
糖尿病の人はがんリスクが高い ウォーキングなどの運動で体と心を健康に どんな運動が良いのか?
運動を習慣として行い、座ったまま過ごす時間が短い高齢者は、身体と精神の状態が良好であることが、米国がん学会(ACS)の新しい研究で明らかになった。
同学会は、糖尿病や肥満、がんなどを予防・改善するために、ウォーキングなどの中強度以上の活発な運動(MVPA)を週に150分以上行うことを勧めている。
同学会は、糖尿病や肥満、がんなどを予防・改善するために、ウォーキングなどの中強度以上の活発な運動(MVPA)を週に150分以上行うことを勧めている。
糖尿病の人はがんのリスクが高い
糖尿病の医療は進歩しており、糖尿病とともに生きる人が長寿を実現できるようになってきた。一方で、糖尿病のある人は、がんのリスクが高いことが分かっている。日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会の調査によると、2型糖尿病の人はがんリスクが20%ほど高い。
糖尿病のある日本人の死因の第1位はがんだ。2型糖尿病とがんの両方に共通する危険因子として、加齢、男性、肥満、不健康な食事、運動不足、喫煙、アルコールの飲み過ぎなどがある。
食事療法と運動療法は、糖尿病の治療の両輪とされている。糖尿病を改善するための運動が、がん予防にも役立つ可能性がある。
また、日本を含み全世界的に高齢者人口が増えており、医療も進歩しており、がんを体験したがんサバイバーの数も増えている。米国にも1,690万人近いがんサバイバーがいる。そうした人々の生活の質(QOL)を向上するための戦略も必要だ。
座ったまま過ごすのをやめて、もっと体を動かそう(Move More: Stop Sitting)
米国心臓協会(AHA)が公開しているビデオ
米国心臓協会(AHA)が公開しているビデオ
体をより多く動かし、座ったまま過ごす時間はより短く
米国がん学会(ACS)のエリカ リース-プニア氏らの研究チームは、ACSが実施している「がん予防研究II栄養コホート」に参加した7万7,826人(平均年齢77.8歳)のデータを解析した。参加者の中には、がんを体験したがんサバイバー7,966人も含まれていた。
研究グループは、グローバル フィジカル ヘルス(GPH)とグローバル メンタル ヘルス(GMH)という2つの尺度を使い、参加者の身体と精神の状態を調べた。
その結果、がんの病歴に関係なく、身体活動量がもっとも多い高齢者は、もっとも少ない高齢者に比べ、身体スコアが平均で6.39高く、精神スコアが4.34高かった。また、座ったまま過ごす時間がもっとも少ない高齢者は、もっとも多い高齢者に比べ、身体スコアが3.75高く、精神スコアが2.74高かった。
COVID-19の影響を受け多くの人が不活発に
「より多く体を動かし、座ったままの時間をより少なくすることが、身体と精神の健康の両方のために必要であることが分かりました。運動による恩恵は、年齢やがんの既往歴などに関係なく得られます」と、リース-プニア氏は言う。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を受け、多くの人が外出を自粛し、家にいる時間が増え、なかには孤立したり落ち込んだりしている人もいます。そうした人にこそ、散歩や自宅での運動など、身近な場所でできる身体活動が必要です。運動はあなたの心と体のために良いのです」。
米国がん学会(ACS)は、糖尿病や肥満、がんなどを予防・改善するために、ウォーキングなどの中強度以上の活発な運動(MVPA)を週に150~300分行うこと、または75~150分の高強度の運動を行うことを勧めている。
運動を始めるのが遅すぎることはない
年齢を重ねるごとに体力は低下していくので、とくに高齢者にとって運動は必要だ。しかし実際には、米国立衛生研究所(NIH)の調査によると、運動を習慣として行っている人の割合は、45~64歳で30%、65~74歳で25%、85歳以上では11%となっており、高齢になるにしたがい運動をしている人の割合は減っていく。
「運動を始めるのが遅すぎるということはありません。年齢を重ねた人にとっても、運動は多くの恩恵をもたらしてくれます。高齢になったときに備えて、日常の作業を容易にし、老後に自立した生活を維持するために、運動を習慣として行うことが必要です」と、米国がん学会のステーシー サイモン氏は言う。
「ウォーキングや筋トレなどの運動を行い、日常生活でも体を活発に動かすことを心がけることで、体力が向上し、バランス能力が改善し、ストレスも解消できます」。
運動により、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が改善し、2型糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、うつ病などもコントロールしやすくなる。運動をしていて身体活動量が多い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなるという報告もある。
自宅でできる運動
米国心臓協会(AHA)が公開しているビデオ
米国心臓協会(AHA)が公開しているビデオ
どんな運動が勧められているか
米国がん学会は高齢者に次の4種類の運動を行うことを勧めている。
■ ウォーキングなどの有酸素運動活発なウォーキングなどの有酸素運動により、持久力が高まり、心臓や肺など循環器系の健康が向上する。これにより、芝生を刈ったり、階段を上ったりといった日常の身体活動も楽になる。
75〜84歳の高齢者の歩く速さと10年後の生存率を調べた研究で、歩くのが速い人は長く生きられることが示された。歩行速度は筋肉量と関係しているため、筋肉の量が多いほど健康に生きられることをあらわしている。 ■ 自宅での筋力トレーニング
ゴム製のトレーニングチューブを使った「チューブトレーニング」や、ダンベルやマシンなどを使わず自分の体重を使って筋肉に負荷をかける「自重トレーニング」など、筋力トレーニングは自宅など身近な場所でできる。
30分~1時間程度の筋トレを週2回行っただけでも効果がある。筋力を高めることで、階段の昇降や買い物袋の持ち運びなど、日常での活動も楽になる。
糖尿病や高血圧などをもっている人は、運動を行う前に、運動を安全に行えるかどうかを医師に相談することも大切だ。 ■ バランス運動
体のバランスを整えるバランス運動は、転倒防止に役立つ。高齢者の転倒は、骨折や寝たきり状態にもつながるリスクの高い事故なので、それを防ぐためにバランス能力を高めることは重要。
片足でバランスをとりながら、脚の筋肉を鍛える運動などがある。 ■ ストレッチ運動
ヨガやストレッチなどや柔軟性を高められるエクササイズで、萎縮して固くなっている筋肉をやわらかくできる。筋肉の柔軟性を保つことで、運動をスムーズにできるようになる。関節の可動域を広げることで、ケガも予防できる。
ウォーキングや筋トレをする前にも、ストレッチ運動を行うことが大切。
世界保健機関(WHO)は、ウォーキングなどの活発な運動を、
週に150分以上行うことを勧めている。 WHOは2018年に「運動推進グローバル行動計画」を立ち上げ、
運動不足の解消を呼びかけている。
Study shows active older adults have better physical and mental health(米国がん学会 2020年10月20日)週に150分以上行うことを勧めている。 WHOは2018年に「運動推進グローバル行動計画」を立ち上げ、
運動不足の解消を呼びかけている。
Self-Reported Physical Activity, Sitting Time, and Mental and Physical Health Among Older Cancer Survivors Compared With Adults Without a History of Cancer(Cancer 2020年10月20日)
Best Types of Exercise for Older Adults(米国がん学会 2018年9月20日)
Every move counts towards better health - says WHO(世界保健機関 2020年11月25日)
Physical activity(世界保健機関)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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