ニュース
2020年11月26日
「歯周病」が糖尿病やメタボを悪化 筋肉での糖の取り込みが低下 サルコペニアの危険も高まる
東京医科歯科大学などは、歯周病菌に感染すると、筋肉(骨格筋)の炎症に関連する遺伝子が上昇し、脂肪化が進み、糖の取り込みも阻害されることを確かめたと発表した。
歯周病菌の感染が、筋肉の代謝異常を引き起こし、糖尿病・肥満・メタボリックシンドロームの危険因子となり、サルコペニアにもつながる可能性がある。
血糖コントロールを改善するために、歯周病の治療を受けることが重要であることが、あらためて示された。
歯周病菌の感染が、筋肉の代謝異常を引き起こし、糖尿病・肥満・メタボリックシンドロームの危険因子となり、サルコペニアにもつながる可能性がある。
血糖コントロールを改善するために、歯周病の治療を受けることが重要であることが、あらためて示された。
糖尿病の人は歯周病にとくに注意
歯周病は2型糖尿病やメタボ・肥満などの、さまざまな全身疾患を悪化させる原因になることが知られている。
日本人の中高年の80%は歯周病だとみられている。糖尿病の人にとって、歯周病はとくに深刻だ。歯周病は、慢性炎症として血糖コントロールに悪影響を及ぼし、重症化するほど血糖コントロールが難しくなることが知られている。
2型糖尿病の人では、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cが6.5%以上になると、歯周病菌に対する抵抗力が低下し、歯周病が悪化しやすくなるという報告がある。歯周病を改善するためには、血糖コントロールを改善するとともに、歯科で歯周病の治療を受けることが必要だ。
2型糖尿病や肥満の人の多くで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効果的に作用しなくなる「インスリン抵抗性」がみられる。インスリンは、血液中の糖を細胞が取り込むときに使われ、細胞内に取り込まれた糖はエネルギー源となるが、インスリン抵抗性のためにこの流れが滞ると高血糖になりやすくなる。
歯周病を治療することで、インスリン抵抗性が改善する可能性がある。2型糖尿病の人は、歯周病を治療することで、血糖が改善するという研究も報告されている。糖尿病の人は、歯周病の治療もきちんと受けることが重要だ。
歯周病になると、炎症を引き起こす「サイトカイン」と呼ばれる生理活性物質が増えやすくなるが、歯周治療をすることでサイトカインも低下するとみられている。
歯周病菌に感染すると骨格筋も変化 糖の取り込みが低下
歯周病菌が筋での糖の取り込みを阻害 腸内細菌叢も変化
出典:東京医科歯科大学、2020年
出典:東京医科歯科大学、2020年
歯周病菌の感染がメタボやサルコペニアの危険因子に
今回の研究により、肥満やメタボリックシンドロームの患者では、骨格筋脂肪化マーカーや、歯周病菌の血清抗体価が変化していることが明らかになった。
また、歯周病菌を投与したマウスでは、腸内細菌叢の変化をともない、骨格筋の炎症に関連する遺伝子群が上昇し、脂肪化が亢進し、インスリンシグナルの低下とともに糖の取り込みが阻害されていることも明らかになった。
研究成果は、歯周病菌の感染が骨格筋の代謝異常を引き起こし、糖尿病やメタボの危険因子となり、サルコペニアへとつながる可能性を示すものだ。
サルコペニアとは、加齢や病気により、筋肉量が減少することで、全身の筋力低下や身体機能の低下が起こっている状態。動作の俊敏性が失われ転倒しやすくなり、寝たきりや要介護の原因にもなる。
「今回の研究により、歯周病の治療をきちんと受けることが重要だと、あらためて確かめられました。糖尿病や肥満のある人では、歯周病はとくに深刻です。歯周病のさらなる危険性が注意喚起され、健康寿命の延伸へとつながることが期待されます」と、研究グループは述べている。
研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病分野の片桐さやか講師、日本学術振興会の渡辺数基特別研究員、岩田隆紀教授と、佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター高橋宏和特任教授の研究グループと、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター分子遺伝学研究部の廣田朝光講師、東京医科歯科大学教養部生物学教室の服部淳彦教授、同大医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、同大難治疾患研究所エピジェネティクス分野の松沢歩助教との共同研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」オンライン版に掲載された。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野Porphyromonas gingivalis impairs glucose uptake in skeletal muscle associated with altering gut microbiota (THE FASEB Journal 2020年11月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
食事療法の関連記事
- ダイエット飲料と加糖飲料はどちらもMASLDリスク
- フライドポテトは2型糖尿病のリスクを高める
- 科学的データで見る「ラーメンを食べる頻度」と「健康リスク」の関係
- 植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する
- 健康的な食事と運動は飲酒による肝臓のダメージを抑制して死亡を減らす
- GLP-1受容体作動薬で痩せるには生活習慣改善が大切
- 【コーヒーが糖尿病リスクを低減】コーヒーを飲んでいる人はフレイルや死亡のリスクも低下
- 糖尿病の人は「サルコペニア」にご注意 筋肉の減少にこうして対策 何歳からでも予防・改善が可能
- 野菜や玄米の「植物ステロール」が糖尿病や肥満を改善 コレステロールを低下させインスリン抵抗性を軽減
- 高血圧対策では減塩が必要 魚介系ラーメンは血圧を上げない? こんな食事は食塩が多くなりやすい

医療・健康情報グループ検索