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2015年12月02日
「正しい食事療法」は人によって異なる トマトで血糖値が上昇する人も
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 血糖自己測定(SMBG) 食事療法

グリセミックインデックス(GI)は、食品に含まれる糖質の吸収の度合いを示す指数だ。糖質を摂取すると、消化管でブドウ糖に分解され血液に入る。血中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が上昇するが、その食品の消化から吸収までの速度は食品によって異なる。
GI値が低いほど糖質の吸収がおだやかになり、血糖値の上昇もゆるやかになる。逆に高GIの食品を食べると、一気に血糖値を上昇させるため、血中のブドウ糖を処理するために多量のインスリンが分泌されたり、分泌が追いつかなくなくなると考えられている。
例えば、全量全粒粉を使ったパンは、精製された小麦粉を使った白パンよりGI値は低い。ジャガイモ、インスタントのシリアル、一部の果物なども血糖値を上昇させやすい。また、精白米や小麦粉などの糖質よりも、野菜や牛乳の糖質の方がGI値は低くなる。
「これまではGI値は食品に固有のもので、同じ食品を食べれば血糖値の変動は誰にとってもさほど変わらないと考えられていましたが、今回の研究で実際には個人差が大きいことが分かりました」と、ワイツマン研究所のエラン シーガル氏は言う。
パンを例にとっても、食べても血糖値がほとんど変わらない人がいる一方で、血糖値が大きく上昇する人もおり、バター付パンのほうがより血糖値が上がりやすい人もいたという。一般的には炭水化物に脂肪を加えると血糖値の上昇を抑えられると考えられているが、それが当てはまらない人もいるという。
研究には800人の肥満や過体重のある2型糖尿病患者が参加した。参加者は、身体計測、血液検査、CGMによる測定、便検査などを受け、スマートフォンのアプリを使って食事を写真により記録を保存・報告した。報告された食事は4万6,898食分に及んだ。さらに数回の規定食を朝食として受け取った。
その結果、年齢やBMI(体格指数)が上昇すると、食後血糖値が高くなる傾向がみられたが、食後の血糖値の上昇は、同じ食品を食べても人によって反応が大きく異なることが判明した。
例えば、肥満ではないが糖尿病前症と判定された中年女性は、体重を減らそうとさまざまなダイエットに挑戦しては失敗を繰り返してきた。今回の調査で、意外な食品が食後高血糖に影響していることが判明した。
その女性は、トマトを食べると食後の血糖値が高くなることが判明した。通常はトマトは低カロリーな野菜で、健康的な食品とされているが、その女性ではトマトを食べるごとに血糖値が上昇することが確認された。
「他の人にとって健康的な食品が、あなたにとって良い食品とは限りません。逆のケースもありえます。この女性の場合は、トマトは食べるときには注意が必要となる可能性があります」と、シーガル氏は言う。

研究チームは食品に対する反応に個人差がある原因を探るために、参加者の腸内細菌の検査も行った。研究チームは便検体からマイクロバイオーム解析を実施し、ある種の細菌が食後高血糖に関わっていることを発見した。
腸内細菌のバランスを改善することが、肥満、耐糖能異常、糖尿病などの治療に効果的という研究報告が増えている。今回の研究では、26名の参加者に個別化ダイエットを実施した結果、腸内細菌叢が食後血糖値に影響することが分かった。
「今回の研究で、これまで行われてきた糖尿病や肥満の食事指導は再考が必要であることが示唆されました」と、シーガルは言う。
「しかし実際には、アドバイスを遵守しているにも関わらず、結果につながらない患者も多いのです。その場合はアドバイスを考え直す必要があります」と、シーガルは指摘する。
シーガル氏らは、患者の腸内細菌叢を分析することで血糖値を上げない食べ物を同定し、これに体重や身長、年齢といったデータを加えることで、個別化された適確な食事療法をアドバイスできるようにすることを目標としている。
「栄養士や医師は糖尿病や肥満の患者に対して、個別化された食事療法が必要であることを知っておくべきです。標準化された共通の食事指導が効果的でない場合は、患者によって食品に対する反応が異なっている可能性があります。患者1人ひとりに合った食事を見つけて指導する必要があります」と、シーガルは言う。
Personalized Nutrition by Prediction of Glycemic Responses(セル 2015年11月19日)
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