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2015年12月02日

「DPP-4阻害薬」が動脈硬化を抑える 心筋梗塞や脳梗塞を予防

 2型糖尿病の治療薬である「DPP-4阻害薬」が動脈硬化を抑制することが、日本人を対象とした研究で明らかになった。
糖尿病が心血管イベントのリスクを上昇させる
 糖尿病治療薬「DPP-4阻害薬」が2型糖尿病患者の動脈硬化を抑制することを、順天堂大学などの研究グループが明らかにした。

 糖尿病患者では、血糖値が高い状態が続くと、血管壁が傷つき動脈硬化が進行しやすくなる。動脈硬化は「心血管イベント」を引き起こす。

 「心血管イベント」とは、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系の病気のこと。糖尿病患者では心血管イベントによる死亡が多いため、これを予防することが治療において重大な課題となっている。

 DPP-4阻害薬は、インクレチン濃度を上昇させることで、膵β細胞からインスリン分泌を促進させ、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖値を低下させる治療薬。日本では2009年から治療に使われている。

 インクレチンは、食事をして糖などが吸収されると小腸から出てくるホルモンで、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を増やす。インクレチン関連薬はインクレチンの作用を高めることにより血糖を低下させるタイプの薬剤。

DPP-4阻害薬が頚動脈の動脈硬化を抑制
 今回の試験には、日本全国の糖尿病専門医が診療する11施設の心血管イベントの既往のない2型糖尿病患者341人が参加した。研究チームは、DPP-4阻害薬である「アログリプチン安息香酸塩」を投与する患者172人(DPP-4阻害薬群)と、通常の治療を受ける患者169人(通常治療群)に無作為に割り付けた。

 動脈硬化の指標として、頸動脈を超音波検査で測定する「頸動脈内膜中膜複合体肥厚度」(IMT)を用いた。

 動脈壁は、内膜、中膜および外膜の3層で構成されている。動脈硬化が進行すると内膜と中膜の部分が肥厚する。超音波により頸動脈を観察し、動脈硬化の進行具合を調べるのがIMT検査。

 IMTが厚い人ほど将来に心筋梗塞や脳卒中などを発症する危険性が高い。IMT検査は簡単に行え、体を傷つけることがないので、動脈硬化のスクリーニング検査として臨床の現場で広く行われている。

 その結果、試験を開始してから2年後に、DPP-4阻害薬群は通常治療群に比べ、頚動脈のIMTの進展が有意に抑制されていることが分かった。

糖尿病合併症を予防する有用な治療法に
 この研究は、順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループが大阪大学などと共同でおこなったもの。詳細は米国糖尿病学会が発行する医学誌「ダイアベティス ケア」オンライン版に発表された。

 心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを発症すると、寿命が短くなり、生活の質(QOL)が大きく損なわれる。医療費などの経済的な負担も増加する。

 2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬に血糖値を下げる効果に加えて、動脈硬化の進展を抑制する効果があり、心血管イベントを抑制することが明らかになれば、糖尿病合併症を予防する有用な治療法となる。

 「今後の課題としては、DPP-4阻害薬が実際に心血管イベントの発症を減らすことを検証する必要がある。動脈硬化が進行する前の早い段階よりDPP-4阻害薬を投与すれば、心血管イベントの発症リスクを低下できる可能性がある」と研究者は述べている。

順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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