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2013年09月27日
β細胞が分泌する亜鉛の不足が糖尿病の原因 インスリン分泌が低下
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順天堂大学は、理化学研究所、杏林大学、慶應義塾大学との共同研究により、インスリンとともに「膵β細胞」から分泌される亜鉛が、肝臓を通って全身に送られるインスリン量を決める仕組みを解明したと発表した。膵β細胞内の亜鉛濃度を制御するタンパク質の働きを高める薬を開発すれば、2型糖尿病の新しい治療法になる可能性がある。
成果は、順天堂大大学院 医学研究科・代謝内分泌内科学の藤谷与士夫准教授、同・綿田裕孝教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米科学誌「Journal of Clinical Investigation」9月24日号に発表された。
肝臓でのインスリンの過剰な分解が糖尿病のリスクを高める
生命活動の維持には、タンパク質や炭水化物などのほかに微量の金属元素が必要であり、亜鉛はそのひとつだ。亜鉛が体内で不足すると、さまざまな病気を引き起こされる。そのため、細胞内の亜鉛濃度は、生体内の亜鉛輸送を担う亜鉛トランスポーターという膜タンパク質によって制御されている。また、亜鉛は細胞内で情報を運ぶ因子(細胞内シグナル伝達因子)として働くことが知られている。
最近の研究では、膵β細胞のインスリン分泌顆粒内に亜鉛を汲み入れる「亜鉛トランスポーター(ZnT8)」の機能が低下すると、2型糖尿病の発症リスクが高まることが報告されている。しかし、いくつもの研究チームがZnT8の機能低下がなぜ糖尿病に結びつくのかを調べてきたが、その理由をうまく説明することができなかった。
そこで、藤谷准教授と綿田教授の研究チームは今回、生体内の「亜鉛の流れ」に着目し実験を実施した。研究チームは、インスリンとともに蓄えられている亜鉛にどのような役割があるのか、ZnT8の機能が悪くなると、なぜ糖尿病のリスクが高まるのかについて調べた。
まず、膵β細胞でZnT8を欠損するマウスを作製した。すると、このマウスではインスリン分泌顆粒内の亜鉛が枯渇するために、正常なインスリン結晶構造が作られず、また糖を与えると軽い耐糖能異常を示し、その時の末梢血中のインスリン濃度は正常マウスに比べて低い値を示すことを確認した。
さらに、膵β細胞からのインスリン分泌を直接調べたところ、予想に反して、正常マウスよりも約2倍のインスリン分泌の上昇が認められた。研究チームは、ZnT8を欠損させたマウスの詳細な調査を行った。
その結果、膵β細胞からのインスリン分泌はむしろ高まっているのに、同時に亜鉛が分泌されないために、肝臓で過剰にインスリンが分解されてしまい、その結果、筋肉などの末梢組織に届く全身のインスリン量が減少することが判明した。
一方、正常なマウスでは、インスリンとともに分泌される亜鉛が門脈を介して肝臓へ流れ込む、いわゆる「亜鉛の流れ」があることが判明した。亜鉛があることで肝細胞へのインスリンの取り込みと分解が抑えられるという、末梢でのインスリン量を保つ新たなメカニズムがあることが明らかになった。
ヒトにおいてZnT8遺伝子は一塩基多型により2つのタイプがあり、そのうち機能が弱いほうのタイプを有するヒトでは、マウスと同様に肝臓でのインスリンの分解が亢進し、全身に送られる末梢血中のインスリン濃度が低くなってしまう。
そのために、正常な人たちと同じ程度のインスリン量を保つためには、膵β細胞がより多くのインスリンを分泌する必要があることが分かった。遺伝子変異による亜鉛の分泌量の低下が、インスリンを分泌する膵β細胞に慢性的に過剰な負荷をかけ、2型糖尿病のリスクを高めている可能性があるという。
これまで糖尿病の原因は、「膵β細胞からのインスリン分泌の低下」と「末梢組織でのインスリン感受性の低下」により説明されていたが、今回の研究により「亜鉛分泌が少ないことによって起こる肝臓でのインスリン代謝の亢進」も糖尿病発症に関わることがはじめて明らかになった。
インスリンを無駄なく全身で働かせることができるように、膵β細胞での亜鉛トランスポーターの働きを高める薬を開発できれば、糖尿病の新しい治療法に大きく貢献する可能性があるとしている。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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