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2013年09月27日

インスリンポンプ療法は注射療法より効果的 小児患者を長期調査

 インスリンポンプを使った持続皮下インスリン注入(CSII)療法は、インスリン頻回注射によるインスリン頻回注射(MDI)療法に比べ、低血糖の出現などが少なく、血糖コントロールをより効果的に行えることが、小児1型糖尿病患者を7年間にわたりフォローアップした研究で明らかになった。
インスリンポンプが小児1型糖尿病の血糖コントロールを改善
 インスリンポンプ療法に関する研究は数多いが、1型糖尿病の小児患者を対象に長期的影響を調べた調査は少ない。この研究は、オーストラリアのプリンセス マーガレット小児病院のエリザベス デイビス準教授らが、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「Diabetologia」に発表した。

 「今回の研究は、インスリンポンプに関する研究の中では、フォローアップ期間がもっとも長いものになりました。7年間の研究期間で、インスリンポンプが血糖コントロールを改善することが示されました」と、デイビス氏は話す。

 デイビス氏は、インスリンポンプ療法を行う患者が過去15年で増えた背景として、インスリンポンプの改良が重ねられ、使いやすさや安全性が増したこと、インスリンアナログ製剤が進歩したことを挙げている。

 研究では、インスリン注射による血糖コントロールを続けた小児患者と、インスリン注射からインスリンポンプに切り換えた小児患者とを比較した。

 研究チームは、インスリンポンプを行っている2〜19歳の1型糖尿病の小児患者345人と、ほぼ同数のインスリン注射を行っている小児患者とを比較した。インスリンポンプ開始時の平均年齢は11.5歳だった。

 フォローアップ期間中に、インスリンポンプ群では、重症低血糖の報告件数がおよそ半数に減少したことが分かった。対照となったインスリン注射群では、重症低血糖は100人年あたり7〜10件発生した。

 小児の1型糖尿病患者では、糖尿病ケトアシドーシスも比較的多く発現する。ケトアシドーシスは極度のインスリン欠乏と、インスリン拮抗ホルモンの増加により、高血糖や高ケトン血漿などが起きた状態だ。

 糖尿病ケトアシドーシスの入院患者は、インスリンポンプ群で100人年あたり2.3件、インスリン注射で同4.7件で、やはりインスリンポンプ群でより少なかった。

 インスリンポンプ療法によって、血糖コントロールが改善されることが分かっていても、38人の患者は期間中にポンプの使用を中断し、通常の注射療法に切り換えた。6人は研究の1年目に、7人は2年目に、10人は3年目に、残りは3年以上ポンプを使用してから中断した。

 インスリンポンプ療法を行うために、インスリンポンプ本体、ポンプと体をつなぐチューブ、チューブを装着するのに必要な装着道具などを扱えることが条件となる。ポンプ操作や機能を理解していることや、家族の理解と協力が得られることも条件に含まれる。

 ポンプ療法を中断した患者は、こうした条件に適っていないケースが多かった。ポンプを装着しているのを見られるのを嫌がる子供もいたという。研究では、ポンプを一時的に中断する「ポンプ休み」を設けて、ポンプ療法を続けやすいよう工夫された。

 英国糖尿病学会(UK)のブリジット ターナー氏は今回の研究について、「インスリンポンプ療法によって、1型糖尿病の小児患者の血糖コントロールを、7年にわたりより良く改善できることが示されました。適正な患者教育と医療サポートによって、糖尿病合併症の発症リスクを低減できます」と述べている。

 「糖尿病の自己管理は1日24時間、週7日続けなければなりません。インスリンポンプ療法では、必要な時に必要なインスリンを注入することが可能となり、生活スタイルに合わせてインスリン療法を行えるようになります。このことは、成長期の子供や家族にとって意義が大きいといえます」と、ニューヨーク市にあるウィンスロップ大学病院糖尿病・肥満研究所のバージニア ペラガロ ディトコ氏は述べている。

Long-term outcome of insulin pump therapy in children with type 1 diabetes assessed in a large population-based case–control study(Diabetologia 2013年8月21日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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