ニュース
2013年09月19日
生活スタイルの改善が遺伝子を変える 5年間でテロメアが10%延長
健康な生活スタイルによって細胞の老化を抑えられることが、分子レベルで解明された。生活スタイルを改善することで、体を短い期間で作り変えることができると、研究者は強調している。
生活スタイルを改善して、健康的な食事、運動、ストレス管理を実行すれば、細胞の老化を分子レベルで抑え、回復することができるという研究が発表された。この研究は医学誌「ランセット オンコロジー」に発表された。 「生活スタイルによって、私たちの体はダイナミックに変化しています。健康的な生活スタイルを続けていれば、体を細胞レベルで回復させることは可能です。糖尿病やがんなどの慢性疾患をもっている人も、病気と戦う活力を取り戻すことができます」と、カリフォルニア州ソーサリトにある予防医学研究所所長であるディーン オーニッシュ氏は言う。 体にある細胞の大半は、分裂できる回数に限りがあり、寿命がある。これには、染色体の末端に位置するテロメアと呼ばれる塩基配列が深く関係している。細胞が分裂するとテロメア配列が少しずつ失われていく。 「テロメアは細胞に備わった“靴ひもの先端”のようなもので、大切な遺伝情報を保護する役目を担っています。先端の止め具がなくなると、ひもの糸はばらばらにほどけてしまいます」と、カリフォルニア州ソーサリトにある予防医学研究所所長であるディーン オーニッシュ氏は説明する。 ヒトの体の細胞は分裂回数に限りがあり、テロメアの長さは年齢によって一律に決まっていない。テロメアの長さはさまざまな生活スタイルによって変化するため、個人差がある。同じ年齢であっても、テロメアの短い人は、心臓病やがん、糖尿病、骨粗鬆症などになりやすいという研究が報告されている。
生活スタイルを変えれば、体はダイナミックに変化する
研究では、生活スタイルを改善するとわずか5年でテロメアが長くなることが示された。オーニッシュ氏は健康的な生活スタイルとして、次のことを勧めている。
- 健康的な食事
健康的な食生活を実践する手段として、全粒穀物や野菜、果物などのホールフードが勧められている。
ホールフード(Whole Food)とは、食品をまるごと食べるという意味。野菜なら葉から根まで、白米よりも玄米、白パンよりも全粒粉パンを選ぶことで、グリセミック インデックス(GI:炭水化物が消化・吸収される速さを相対的にあらわした数値)を低く抑えることができる。 - 運動の習慣化
適度な運動を習慣化する。1回30分の運動を週に5回以上行うのが目標。
運動をよく行っている人は、糖尿病、高血圧、肥満、心臓病、骨粗鬆症、がんなどの発症率が低下し、病状が改善されることが、さまざまな研究で確かめられている。
運動には、メンタルヘルスや生活の質の改善効果もある。 - ストレスの管理
受動的な緊張緩和にとどまらず、積極的なストレス対策が必要。日常生活の中でストレスを管理する工夫が求められる。
ヨガやメディテーションが心身をリラックスさせ、自律訓練法として有効という報告もある。 - 社会的なサポート
自分の仕事や生活での不安、悩み、ストレスについて相談できる人をもつことは重要。グチやボヤキでもよいので、相談相手をつことが、ストレス管理の改善につながる。
ソーシャルメディアを活用して話し合える相手をもつこともひとつの方法だ。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
運動療法の関連記事
- 糖尿病の人のメンタルヘルスを改善 手軽にできる3つのストレス解消法 心と体をケア
- 夕方から夜のウォーキングが血糖値を下げる 糖尿病や肥満のある人に運動がおすすめ 睡眠も改善
- 暑い夏の水分補給 甘い飲み物を水に置き換えると糖尿病リスクは低下 食事改善にも役立つ「上手な水の飲み方」
- スマホで写真を撮ると食事改善がうまくいく 糖尿病の治療に活用 食事の振り返りができる
- 掃除や買い物などの家事も立派な運動? わずか20分の活動が糖尿病を改善 「座っている時間」を中断して体を動かす習慣を
- 楽しく歩きつづけるための「足のトリセツ検定」をスタート 糖尿病の人にとっても「足の健康」は大切
- 日本人がどれだけ運動・身体活動をしているかを調査 若年・中年・女性は運動不足が多い
- 糖尿病の人は細切れ時間に運動を 階段の上り下りが心筋梗塞や脳卒中のリスクを低下 エレベーターは寿命を短くする
- 糖尿病の人は「フレイル」のリスクが高い タンパク質を食べ筋肉を増やし対策 3つの質問でリスクが分かる
- 自然豊かな環境で運動すると糖尿病やうつ病のリスクが減少 緑の環境が運動を楽しくする