ニュース
2011年08月08日
小胞体ストレスから糖尿病に 動脈硬化のメカニズムを解明 東北大

小胞体ストレスの反応はどの細胞でも起こるが、特にインスリンを産生するβ細胞では、小胞体ストレスの影響は大きい。
糖尿病の人では、小胞体ストレスによりβ細胞でインスリンを多量につくらなければならない状況に追いやられ、やがて破綻をきたして細胞死(アポトーシス)におちいり、β細胞は減りはじめると考えられている。
日本人ではもともとインスリンをつくるβ細胞が少ない人が多く、さらに糖尿病を発症すると初期の段階からβ細胞が減りはじめることが知られている。小胞体ストレスのメカニズムを解明すれば、糖尿病の新たな予防法・治療法の開発にもつながる。
動脈硬化の原因となるのは、血中コレステロール値の上昇や高血圧、肥満・メタボリックシンドロームなどだが、糖尿病(高血糖)のある人では、これらの要因が複合的に関連しあい、動脈硬化の進展が早まる。
これらが動脈硬化をひきおこすメカニズムとして、小胞体ストレスが大きく関わっている。ストレスが加わると細胞は、すぐにストレスから回避するための防御システム(小胞体ストレス応答)を活性化させる。
東北大学大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンターの片桐秀樹教授、高俊弘助教、分子代謝病態学分野・石垣泰准教授らの研究チームは、小胞体ストレスによる「CHOP」と呼ばれる蛋白質の誘導が、動脈硬化発症の分子メカニズムとして関わっていることを解明した。
発表によると、研究チームはCHOPを産生できないマウスを作製し、このマウスはコレステロールが高くなっても動脈硬化が起こりにくいことを確かめた。血管細胞と血球細胞の相互作用による血管の炎症が抑えられたために、動脈硬化が阻止された効果を得られたとしている。
研究者らは「[小胞体ストレス → CHOP増加 → 血管炎症]という一連のプロセスが動脈硬化発症の分子機序に関わっていることを解明した」と述べている。CHOPの増加を妨げる方法がみつかれば、新たな予防・治療法を開発できると期待されている。
この研究成果は、米医学誌「Circulation」オンライン版に8月1日付けで発表された。
動脈硬化の新たな分子機序を解明〜心筋梗塞・脳梗塞などの予防・治療に応用性〜(東北大学大学院医学系研究科 平成23年7月29日)
Involvement of Endoplasmic Stress Protein C/EBP Homologous Protein in Arteriosclerosis Acceleration With Augmented Biological Stress Responses
Circulationaha, 110.014050 Published online before print August 1, 2011, doi: 10.1161
医療の進歩の関連記事
- 腎不全の患者さんを透析から解放 「異種移植」の扉を開く画期的な手術が米国で成功
- 【歯周病ケアにより血糖管理が改善】糖尿病のある人が歯周病を治療すると人工透析のリスクが最大で44%減少
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- 腎不全の患者さんを透析から解放 腎臓の新しい移植医療が成功 「異種移植」とは?
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少
- JADEC(日本糖尿病協会)の活動 「さかえ」がWebページで閲覧できるなど「最新のお知らせ」からご紹介
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も
- 「スマートインスリン」の開発が前進 血糖値が高いときだけ作用する新タイプのインスリン製剤 1型糖尿病の負担を軽減
- 糖尿病の医療はここまで進歩している 合併症を予防するための戦略が必要 糖尿病の最新情報