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2009年12月17日

妊娠中の血糖管理目標として「グリコアルブミン15.8%未満」を提案

 妊娠前と妊娠中は胎児や新生児・母親の合併症を防ぐために、糖尿病でない人と同程度の血糖値となるような厳格な血糖管理が必要とされる。そして血糖管理指標としては、HbA1Cよりも血糖変動に鋭敏に反応するグリコアルブミン(GA)が用いられる。また妊娠中は鉄欠乏などの影響を受け HbA1Cが本来の血糖状態と乖離するが、GAはその影響が少ないという利点もある。しかしこれまで HbA1C、GAともに妊婦における基準値は明確に示されていなかった。

 このことに対応し日本糖尿病・妊娠学会(中林正雄理事長)は、正常妊婦の HbA1C・GA基準値を明らかにし、また、糖尿病合併妊婦や妊娠糖尿病妊婦での血糖管理目標値を設定するために、多施設共同研究を進めてきた。さきごろ四日市で行われた第25回年次学術集会(学会長:佐川典正・三重大学医学部産科婦人科教授)にて、その結果が発表された

正常妊婦の基準値はGA11.5〜15.7%
 妊娠中の血糖管理指標の基準値については、糖尿病や高血圧、肝・腎疾患、血液疾患患者や BMI 18.5未満または25以上を除いた574例(平均年齢31.1±9.7歳)を対象に検討。GAおよび HbA1Cの平均値±2SD から基準値を求めたところ、GAは11.5〜15.7%、HbA1Cは4.1〜5.3%となった。

 なお、GAは妊娠末期にかけて徐々に低くなる傾向がみられた。ただし最大1%の差異であり、基準値の幅が4%あることから、あまり問題にはならないと考えられると報告された。GAに影響を与える因子としては、ヘトクリット、尿糖、尿蛋白、BMI が示された。

 一方、HbA1Cは妊娠中期に低くなり、末期には高くなった。

 糖尿病合併妊婦の血糖管理指標の経過をみると、血糖、GA、HbA1Cのいずれも妊娠前期では高いものの、血糖は妊娠中期以降、正常妊婦の平均値±2SD に入り、GAもこれに追随して基準値の範囲内に入っていた。しかし HbA1Cは高値で経過し、基準値を上回っていた。

GA15.8%以上で新生児合併症が有意に増加
 次に、耐糖能異常合併妊婦における、これら血糖管理指標と母児合併症の関連について検討された。対象は、1型糖尿病48例、2型糖尿病73例、妊娠糖尿病85例の206例(平均年齢33.5±5.0歳、BMI 25.6±5.6)。妊娠後期(28〜40週)のGAおよび HbA1Cを平均した値が、前記の試験で得られた基準値を上回った場合の合併症出現頻度を比較した。

 結果は、GAが基準値上限の15.8%以上だった群は15.7%以下だった群に比べて、新生児低血糖と多血症の頻度が有意に多かった。高ビリルビン血症、電解質異常、呼吸障害は両群間に有意差はなかった。心筋肥厚は1例も発生していなかった。

 HbA1Cとの関係では、基準値を上回った群と基準値内の群で比較しても、すべての新生児合併症の発生頻度に有意差がなかった。

 母体合併症の発生頻度や分娩方式には、GA、HbA1Cともに、基準値を上回った群と基準値内の群の間で有意差がみられなかった。一方、LFD(large for date infant.出生時体重が分娩週数に比べて重い新生児)の割合は、GA、HbA1Cともに基準値を上回った群で有意に多かった。

 以上より結論として、母児合併症の予防には妊娠後期においてはGA15.8%未満を目標に治療する必要があると報告された。

関連情報
グリコアルブミン情報ファイル(糖尿病NET)
日本糖尿病・妊娠学会

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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