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2008年11月28日
糖尿病とともに半世紀を生きる 第6回「リリー インスリン50年賞」
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インスリン治療を50年以上継続している糖尿病患者を表彰する第6回「リリー インスリン50年賞」(日本イーライリリー主催)の表彰式が、「世界糖尿病デー」である11月14日に浜松町東京會舘で開催された。
「リリー インスリン50年賞」は、インスリン治療を50年以上継続している糖尿病患者の長年の努力を称えるために、1974年に米国で設立された30年以上の歴史を誇る賞。これまでに米国を中心に約1500人が受賞している。日本でも2003年に表彰が開始され、今回の受賞を含め22人が受賞した。
今年は過去最多の9名が受賞した。受賞者には、本人の名前を刻印した純銀製の特製メダルと、世界糖尿病デーのシンボルカラーに染められた「青いバラ」が贈られた。

日本でインスリン自己注射の保険適用が開始されたのは1981年。それまでは医療機関以外でのインスリンの自宅注射(自己注射)は、原則として認められていなかった。また、血糖自己測定の保険適用は1986年で、それまで血糖測定は病院でしかできなかった。患者の多くは尿糖をみながら治療をしていた。
インスリン製剤や注入器は50年でめざましく進歩したが、当時は現在使われている便利なペン型注入器はなく、バイアル(ガラス瓶に入ったインスリン)と注射器を使っていた。また、いまでは考えられない太い注射針を鍋で煮沸しながら注射していた。
第6回の表彰式では、受賞者の中から代
中村和之さんは、30歳代でインスリン治療を開始。医科大学を卒業後、血糖コントロールを行いながら内科医として、糖尿病教室の担当、患者会の立ち上げ・支援、糖尿病治療と支援にも尽力した。今回の受賞は結婚50年の金婚の年にも当たる。「糖尿病があったから健康に気を付けていられた。糖尿病が命の恩人といってもよい」と語る。
ニルス・オルソンさんは、6歳(小学校1年生)のときに発症した。宣教師を志して神学校に入学、1978年に宣教師に任命され来日。「50年は長かった。インスリンは自分を支えてくれる友達のようなもの。インスリンのおかげで生きられる。理解し支えてくれる方々に感謝している」。
高山春恵さん小学5年で1型糖尿病を発症。医師から「子供を作ってはいけない」と言われたが、あきらめずに頑張り、男児を出産した。「糖尿病であっても何でもできる。前向きに人生を生きてほしい」と話している。高山さんは1984年に40歳未満の女性のための患者会「インスレディの会」を結成し、2004年に社会活動や貢献の高い小児発症の1型糖尿病患者に贈られる「ガリクソン賞」を受賞し
訂正しお詫び
インスリンが発見され治療に使えるようになるまで、1型糖尿病は発症すると急速にやせ細り、最後は昏睡して死に至る恐ろしい病気だった。インスリンの歴史は、より優れた製剤開発の歴史でもある。インスリンは1921年にカナダのトロント大学のフレデリック・バンティングとチャールズ・ベストによって発見された。世界初のインスリン製剤は、1923年に米国のリリー社の研究者がバンティングとベストと共同で開発された。

ディスポーザブル型(注入器と製剤が一体になった使い捨てタイプ)のインスリン注入器。注入感を軽くスムーズにし、手の力が弱い人も扱いやすいようにしてある。
1990年代には、遺伝子組み換え技術を用いて、新たに超速効型インスリンが登場した。米リリー社の世界初の超速効型インスリンアナログ「ヒューマログ」は1996年に発売された(日本では2001年)。
現在ではインスリン製剤は、作用発現時間や作用持続時間によりさまざまなタイプのものが開発され、個々の患者の病態や治療に合わせ選べるようになっている。インスリンペン型注入器も進歩しており、手の力が弱くても使いやすいタイプ、一見して注入器に見えない患者の心理に配慮したタイプなど、さまざまなものを使えるようになっている。
中村和之さん(東京都)
杉本清子さん(神奈川県)
河副明子さん(神奈川県)
小一原昇さん(東京都)
高山春恵さん(神奈川県)
ニルス・オルソンさん(福岡県)
小川京子さん(千葉県)
他2名の受賞者については本人の希望により情報未公開
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