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2024年09月10日
糖尿病の人の脳の老化を防ぐ 健康的な生活で老化を遅らせる 認知症リスクを減らすことが大切
2型糖尿病と糖尿病予備群の人は、脳の老化が加速しやすいことが知られているが、健康的な生活スタイルによりこれを低減できることが明らかになった。
脳が実年齢に比べて老化してみえることは、通常の老化プロセスから逸脱しており、将来に認知症を発症するリスクが高いとしている。
「糖尿病とともに生きる人は、食事や運動など健康的な生活スタイルにより、脳の老化を抑制できる可能性があります」と、研究者は述べている。
糖尿病の人の脳の老化を健康的な生活スタイルで防ぐ
2型糖尿病と前糖尿病(糖尿病予備群)のある人は、脳の老化が加速しやすいことが知られているが、健康的な生活スタイルによりこれを低減できることが、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究で示された。 研究は、スウェーデンアルツハイマー財団、認知症研究基金などの支援を得て行われたもので、研究成果は「Diabetes Care」に発表された。 研究グループは、英国で実施されている大規模研究であるUKバイオバンクに参加した40~70歳の認知症のない3万1,229人の成人を対象に、11年間追跡して調査し、脳MRIスキャン(磁気共鳴画像検査)などを実施した。 その結果、2型糖尿病のある人は、脳の老化が早い傾向がみられ、実年齢に比べて2.3歳の老化と関連していた。糖尿病予備群でも0.5歳の脳の老化がみられた。 しかし、食事療法や運動療法に取り組み、アルコールの飲みすぎや喫煙を控えている人では、脳の老化は少ないことも分かった。糖尿病の管理ができていない人の脳は4歳以上も老化
「これは良い知らせです。糖尿病とともに生きる人は、健康的な生活スタイルにより、脳の老化を抑制できる可能性があることが示されました」と、同研究所老化研究センターのアビゲイル ダブ氏は言う。 「脳が実年齢に比べて老化してみえることは、通常の老化プロセスから逸脱しており、将来に認知症を発症するリスクが高いというサインになります」としている。 研究グループは、参加者の一部を対象に、現在も脳のMRI検査を定期的に行っており、糖尿病と脳の老化の関連についての長期にわたる研究を続けている。 一方で、糖尿病の管理を上手くできていない人の脳は、実年齢より4歳以上、脳が老化していた。男性や心血管代謝リスク因子を2つ以上ある人で、その傾向はより強まった。 「糖尿病のある人は、糖尿病を適切に管理できていないと、認知症のリスクが上昇することが知られています。2型糖尿病のリスクのある人は世界的に増えています」と、ダブ氏は言う。 「今回の研究が、糖尿病や糖尿病予備群の人々の認知障害や認知症の予防に役立つことを願っています」としている。認知症のリスク要因は「糖尿病」「アルコールの飲みすぎ」など
英国で実施されている大規模研究であるUKバイオバンクでは、認知症を引き起こすリスク要因のうち、「糖尿病」「アルコールの飲みすぎ」「大気汚染」の影響がとくに強いことも示された。研究成果は「Nature Communications」に発表された。
研究は、英オックスフォード大学が発表したもの。研究グループは、UKバイオバンクに参加した45歳以上の3万9,676人を対象に調査した。
加齢にともなう自然な影響に加えて、認知症のリスクを高める要因として、15の項目について調査した。これらは、生活スタイルを見直すことで、生涯を通じて改善が可能なものだ。
「人によって脳の特定の領域は、加齢とともに早期に変性することが分かっています。認知症を引き起こす重要なリスク要因を解明できれば、予防を絞った効果的な対策ができるようになります」と、同大学臨床神経科学部のグエナエル ドゥオー氏は言う。
「認知症と大きく関わっている脳の特定の領域は、認知症の一般的なリスク要因のなかでも糖尿病、アルコール摂取、大気汚染に対して、とくに脆弱であることが分かりました。認知症のリスク要因をなるべく減らすことが重要です」としている。
認知症のリスクを高める15の要因は次の通り――。▼高血圧、▼高コレステロール、▼糖尿病、▼肥満、▼不健康な食事、▼アルコール摂取、▼喫煙、▼抑うつ気分、▼炎症、▼大気汚染、▼難聴、▼睡眠障害、▼社会的孤立、▼運動不足、▼教育の低下。
Diabetes, Prediabetes, and Brain Aging: The Role of Healthy Lifestyle (Diabetes Care 2024年8月28日)
Risk factors for faster aging in the brain revealed in new study (オックスフォード大学 2024年3月27日)
The effects of genetic and modifiable risk factors on brain regions vulnerable to ageing and disease (Nature Communications 2024年3月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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