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2024年09月09日

糖尿病の人は「肉」を食べた方が良い? ヘム鉄のとりすぎは糖尿病リスクを高める ハムやソーセージなどの「加工肉」にご注意

 赤身肉や加工肉などの肉類をよく食べている人は、ヘム鉄の摂取量が多く、2型糖尿病のリスクが高いことが、新しい研究で明らかになった。

 動物性食品の代表である肉類には、タンパク質が豊富に含まれており、タンパク質や鉄分の供給源になる。

 しかし、とくにハム・ソーセージ・ベーコン・ナゲット・唐揚げなどの加工肉を食べすぎている人は、糖尿病リスクが高いことが示されている。

 大豆・豆類・野菜類・穀類・ナッツなどの植物性食品も取り入れて、バランス良く食べると、糖尿病などのリスクを減らせる。

肉はタンパク質や鉄分の供給源

 動物性食品にはヘム鉄が多く含まれ、とくに牛・鶏・豚の赤身肉や加工肉は、鉄を多く含む食品だ。

 動物性食品に含まれるヘム鉄は、人体への吸収率が高い。鉄は赤血球をつくるのに必要なミネラルであり、鉄分を含む食品を食べることは、貧血の予防・改善につながる。

 食事でカロリー制限をしていると、深刻な鉄分不足におちいるおそれがある。貧血とは、赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)濃度が低下した状態。

 ヘモグロビンが減ると、酸素を運搬する血液の能力が低下してしまい、疲れやすくなったり、めまいや息切れなどの貧血の症状があらわれやすくなる。

 肉類を食べることは、鉄分とタンパク質を摂取するための効果的な手段になる。

ヘム鉄をとりすぎると糖尿病リスクが上昇

 一方で、鉄分をとりすぎていると、全身の組織に蓄積され、酸化を早める物質として働き、体の組織や器官が損傷を受けやすくなるおそれがあると考えられている。

 赤身肉や加工肉などの肉類をよく食べている人は、ヘム鉄の摂取量が多く、2型糖尿病のリスクが高いことが、米ハーバード公衆衛生大学院の新しい研究で明らかになった。

 とくに米国では、ハンバーガーやフライドチキン、ステーキ、ローストビーフなどの肉類が好んで食べられており、米国人の肉類の消費量は日本人の2倍以上と多い。

 肉類は体に必要なタンパク質の供給源にもなるが、食べすぎには注意し、動物性食品と植物性食品をバランス良く食べることが大切だ。

ヘム鉄の摂取量が多いと2型糖尿病リスクが26%上昇

 研究グループは、米国で実施されている大規模調査である「看護師健康調査 I」および「II」、「医療従事者追跡調査」に参加した計20万6,615人の成人を、36年間追跡して調査し、ヘム鉄の摂取と、2型糖尿病との関連を調べた。

 その結果、ヘム鉄の摂取量がもっとも多いグループでは、もっとも少ないグループに比べて、2型糖尿病を発症するリスクが26%高いことが分かった。

 「糖尿病を予防・改善するために、どんな食事をするかが大切であることが示されました。動物性食品を好んで食べている人は注意が必要です」と、同大学院で栄養疫学を研究しているフレデリック ステア氏は言う。

肉の食べ過ぎは糖尿病リスクを高める?

 さらには、加工肉や赤身肉ばかりを食べている人は、2型糖尿病のリスクが高いことは、英ケンブリッジ大学がアジアを含む20ヵ国の197万人のデータを解析した研究でも示された。

 加工肉が1日に50g(ハム2枚分に相当)多いと、10年間で2型糖尿病を発症するリスクは15%高まり、赤身肉が1日100g(ステーキ1枚分)多いと、リスクは10%高まるという。

 「今回の研究で、さまざまな種類の肉の摂取と、2型糖尿病との関連について、これまでよりも具体的な証拠を示すことができました」と、同大学医学研究会議(MRC)疫学ユニットのニタ フォルーヒ教授は述べている。

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、日本人は通常の食事をしていれば、鉄分をとりすぎることはないとみられているが、加工肉や赤身肉をよく食べている人や、サプリメントを利用している人は注意した方が良いだろう。

ハムやソーセージなどの加工肉を大豆などの
植物性食品に置き換えると糖尿病リスクは低下

 動物性食品の代表である肉類には、タンパク質が豊富に含まれており、タンパク質の供給源になる。

 しかし、肉類を食べるときは、なるべく加工度の少ない、脂肪の少ないものが選ぶと良さそうだ。

 とくにハム・ソーセージ・ベーコン・ナゲット・唐揚げなどの加工肉は、スーパーやコンビニなどで手に入りやすく、手軽に調理でき、価格も安いので、忙しいときなどに利用している人は多い。

 欧米では加工肉が多く利用されている。そうした加工肉を食べすぎている人は、一部を大豆・豆類・野菜類・穀類・ナッツなどのタンパク質を含む植物性食品に置き換えると、2型糖尿病などのリスクを減らせることが、英エディンバラ大学などの研究で明らかになった。

 加工肉は、脂肪や塩分などを加えたものや、長期間保存できるように添加物を加えてあるものも多い。食品の色や風味を高めるために使用されている添加物が、糖尿病リスクを高めているという報告もある。

 研究グループは、加工肉の大量摂取と糖尿病や肥満症などの慢性疾患との関連を調べるため、米国国民健康調査(NHANES)に参加した8,665人のデータを解析し、米国成人2億4,000万人超に相当するシミュレーションを行った。

 その結果、加工肉の摂取量を30%減らすと、米国で10年間に35万件以上の糖尿病を予防できる可能性があることが示された。さらに、心筋梗塞などの心血管疾患の発症を9万2,500人、大腸がんの発症を5万3,300人減らせるとしている。

 「食生活に少しの変化を加えることで、大きな健康効果を得られる可能性があります。植物性食品も取り入れた、バランスの良い食事が大切です」と、同大学グローバルヘルス栄養学部のリンゼイ ジャックス教授は述べている。

Significant link found between heme iron, found in red meat and other animal products, and type 2 diabetes risk (ハーバード公衆衛生大学院 2024年8月13日)
Integration of epidemiological and blood biomarker analysis links haem iron intake to increased type 2 diabetes risk (nature metabolism 2024年8月13日)
Red meat consumption associated with increased type 2 diabetes risk (ハーバード公衆衛生大学院 2023年10月19日)
Red meat intake and risk of type 2 diabetes in a prospective cohort study of United States females and males (American Journal of Clinical Nutrition 2023年12月)
Red and processed meat consumption associated with higher type 2 diabetes risk, new study in two million people finds (ケンブリッジ大学 2024年8月21日)
Meat consumption and incident type 2 diabetes: an individual-participant federated meta-analysis of 1·97 million adults with 100 000 incident cases from 31 cohorts in 20 countries (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年9月)
Cutting processed meat intake brings health benefits (エディンバラ大学 2024年7月3日)
Estimated effects of reductions in processed meat consumption and unprocessed red meat consumption on occurrences of type 2 diabetes, cardiovascular disease, colorectal cancer, and mortality in the USA: a microsimulation study (Lancet Planetary 2024年7月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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