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2024年09月12日

木を植えると糖尿病や肥満のリスクが減少 地域住民の健康状態が改善 自然は体に良い

 木や低木を2倍以上植えた地域に住む人は、糖尿病や心血管疾患などのリスクが大幅に改善することが明らかになった。

 都市の緑化を推進することは、住民の睡眠の質の向上につながることが、別の大規模な調査でも明らかになっている。

 「木々などの自然が豊かな環境は、美しいだけでなく、地域社会の住民の健康にも有益であることが示されました」と、研究者は述べている。

緑の多い自然豊かな環境は健康にも有益

 木や低木を2倍以上植えた地域に住む人は、木を植えなかった地域に住む人に比べ、心臓病などの疾患のリスク因子になる炎症の値が大幅に低下することが、地域住民を対象とした新しいプロジェクトにより明らかになった。

 研究は、米国のルイビル大学環境研究所が、ケンタッキー州ルイビルの745人の地域住民を対象に、地元の自然保護団体などの協力を得て行ったもの。

 「木々などの自然が豊かな環境は、美しいだけでなく、地域社会の住民の健康にも有益であることが示されました。自然環境を整備することが、近隣に住むすべての人々の健康改善につながる可能性があります」と、同大学学長で経済学と生物学を研究しているキム シャッツェル氏は言う。

近隣の緑を計画的に増やし健康を改善

 研究グループは、プロジェクトで指定した近隣地域に、8,000本以上の大木や低木を植え、同時に住民の血液、尿、髪の毛、爪のサンプルを採取し、健康状態の変化を調べた。

 その結果、木を植えた地域に住む住民は、木を植えなかった地域の住民に比べ、炎症のバイオマーカーである高感度C反応性タンパク(hsCRP)の値が13~20%低いことが分かった。

 この値が高いことは、心血管疾患や糖尿病、がんなどのリスクと関連しており、今回の研究で確認された炎症リスクの低下により、心臓発作やがんなどの病気による死亡リスクが10~15%減少することが予想されるとしている。

 「これまでの研究でも、緑が多い自然豊かな地域に住んでいる人は、健康状態が良い傾向があることが報告されていますが、近隣の緑を計画的に増やすことで健康を改善できることが示されたのは、今回がはじめてです」と、シャッツェル氏は指摘する。

 都市に公園や緑地などを整備することは、夏の熱波を冷やすことにつながり、熱中症や地球温暖化への対策にもなる。

 「私たちのほとんどは、自然が健康に良いことを直感的に理解しています。今回の科学的研究により、地域に樹木を増えることが住民の健康に与える影響について理解が深まり、都市に緑地を増やす取り組みの後押しになることが期待されます」としている。

自然が豊かな環境があると糖尿病や肥満のリスクが減少

 自然が豊かな環境が近隣にあると、2型糖尿病や肥満のリスクが軽減され、運動や身体活動にも取り組みやすくなることが、チリ大学医学部などの研究でも示されている。

 都市部に住んでいる人は、自然が豊かな農村部に住んでいる人に比べて、2型糖尿病の相対リスクが1.4倍高いことが分かった。

 一方で、近隣に公園や緑地、遊び場、レクリエーションエリアなど、自然とふれあえる環境がある人は、2型糖尿病のリスクが0.75倍に減ることなども示された。

 緑地などが近所にあると、ウォーキングなどの運動に取り組む機会が増えることも分かった。

 研究グループは、緑地へのアクセスと、2型糖尿病・肥満・運動習慣などの関連を調べた19件の研究を解析した。

都市の緑化が睡眠の質の向上に関連
緑を増やして住民のメンタルヘルスを改善

 都市の緑化を推進することは、住民の睡眠の質の向上につながることが、別の大規模な調査でも明らかになっている。

 都市部の緑地の多い地域に住んでいる人は、メンタルヘルスが良好である傾向があることも示された。

 研究は、英国のエクセター大学などによるもの。研究グループは、欧州環境センターなどが実施している、地域の自然環境と健康などとの関連を調べている「ブルーヘルス国際研究(BIS)」の一環として、欧州や米国、香港などの18の国や地域の住民1万6,000人以上のデータを解析した。

 その結果、自然が豊かな環境や、家から緑が見える環境に住んでいる人は、睡眠時間が6時間未満と短い割合が17%で、そうでない人の22%より少ないことなどが分かった。

 「緑が豊かな環境に住んでいる人は、メンタルヘルスが良好であり、睡眠も十分にとれている傾向が示されました」と、同大学欧州環境・人間健康センターのリアン マーティン氏は言う。

 緑の豊かな地域に住んでいる人は、メンタルヘルスが良好である傾向があり、そうでない人に比べ、うつ病を経験する可能性が51%低く、気分が高まったり落ち込んだりを繰り返す双極性障害を経験する可能性が63%低いことも報告されている。

 「都市に緑地を増やすことは、住民のメンタルヘルスと幸福を促進するのに有用である可能性があります」と、マーティン氏は指摘している。

UofL Green Heart Project: residents' inflammation lower after trees added to neighborhoods: Inflammation is associated with increased risk of heart disease and cancer (ルイビル大学 2024年8月27日)
The Effects of Neighborhood Greening on Inflammation in The Green Heart Project (36th Annual Conference of the International Society of Environmental Epidemiology)
Green Space Exposure Association with Type 2 Diabetes Mellitus, Physical Activity, and Obesity: A Systematic Review (International Journal of Environmental Research and Public Health 2020年12月25日)
Greener streets linked to better sleep (エクセター大学 2024年3月25日)
Mechanisms underlying the associations between different types of nature exposure and sleep duration: An 18-country analysis (Environmental Research 2024年6月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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