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2024年09月13日

「糖質制限ダイエット」は糖尿病の人に良い? 糖質を制限すると血糖値が低下 食物繊維などをしっかりとることも大切

 糖質制限ダイエットは、主食であるごはん、パン、めん類、お菓子、ジュースなど、糖質を多く含む食品を減らすことで、体重を減らし、1~2ヵ月の血糖値の平均があらわされるHbA1cを下げようという食事法。

 短期間のゆるやかな糖質制限により、2型糖尿病の人の血糖管理が改善し、体重も減らせることが報告されている。

 一方で、不適切な糖質制限ダイエットを続けると、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が不足しやすくなり、腸内の善玉菌も減ることが指摘されている。

「糖質制限ダイエット」は糖尿病の人に良い?

 糖質制限ダイエットは、主食であるごはん、パン、めん類、お菓子、ジュースなど、糖質を多く含む食品を減らすことで、体重を減らし、1~2ヵ月の血糖値の平均があらわされるHbA1cを下げようという食事法。

 2型糖尿病の日本人を対象とした研究でも、糖質制限ダイエットを6ヵ月続け、エネルギー摂取量も減らすと、体重とHbA1cが低下することが示されており、エネルギー摂取量が適切であれば、短期間のゆるやかな糖質制限は、2型糖尿病の血糖管理に効果的である可能性が指摘されている。

 ただし、総エネルギー摂取量を制限しないで、糖質を含む炭水化物のみを極端に制限する食事スタイルの、体重やHbA1cを改善する効果や安全性などについて、科学的な根拠は不足しているという指摘もある。

 糖質を極端に制限すると、脂肪やタンパク質のとりすぎにつながり、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素は不足しやすくなると主張している人もいる。

糖質制限ダイエットに取り組み血糖値が低下

 三大栄養素のうち、血糖値にもっとも短時間に影響を与えるのは糖質だ。糖質は、食物繊維とともに炭水化物に含まれる。食事で糖質をとりすぎると血糖値が上がりやすいので、これを減らした食事法は血糖値をより良く管理するうえで理にかなっている。

 米国のチューレーン大学など研究でも、HbA1cが6.0~6.9%で血糖値がそれほど高くない2型糖尿病の人や、糖尿病予備群と判定された人が、6ヵ月の糖質制限ダイエットに取り組むことで、HbA1cが0.23%減少したことが示されている。

 糖質制限ダイエットにより、空腹時血糖や体重も減少した。このランダム化比較試験に参加した、40~70歳の成人150人は、体格指数(BMI)の平均が35以上で肥満だった。

 「糖質を減らした食事が、2型糖尿病の予防と治療に役立つ可能性があることが示されました」と、同大学公衆衛生・熱帯医学大学院のキルステン ドランズ氏は言う。

 一方で、「糖質を制限した食事が、2型糖尿病の人の食事療法のひとつになりえることを示した研究は増えていますが、この食事法が血糖値に与える影響を長期にわたり調べた研究は多くありません」と、ドランズ氏は指摘する。

 「今回の研究も、期間は6ヵ月と短いものでした。糖質制限食が取り組みやすく続けやすい食事であるのか、2型糖尿病の食事療法の代替となるかを確かめるために、今後さらに研究を行う必要があります」としている。

糖質をゆるやかに制限すれば食物繊維などは不足しない

 米バーモント大学などが発表した新しい研究で、ゆるやかな糖質制限を適切に行えば、食物繊維などは不足することはないことが示された。

 研究グループは、31~70歳の男女に参加してもらい、栄養士の指導のもと、3種類の糖質制限ダイエットに7日間取り組んでもらった。

 その結果、炭水化物の摂取量を1日に130 gに制限した食事スタイルにより、食物繊維などを十分にとるのは可能であることが示された。

 糖質制限ダイエットにより、ビタミンA・C・D・E・K、ビタミンB群、葉酸などはむしろ栄養所要量を上回った。一方で、カルシウムや鉄分などは不足しやすいことも分かった。

食物繊維や体に良い油をとることも大切

 「糖質を制限した食事により、食物繊維の摂取量が減ることはないと分かりました。低糖質の食事をしながら、必要な栄養を十分にとることは可能です」と、同大学栄養・食品科学部のベス ブラッドリー氏は言う。

 「デンプン質の少ない野菜、豆類、大豆、ナッツ類などを積極的に食べることで、食物繊維をとることができます。不飽和脂肪酸であるn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸も、バランス良くとることが勧められます」としている。

 n-3系脂肪酸は、アマニ油などに多く含まれるα-リノレン酸や、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるDHA、EPAなどがある。n-6系脂肪酸は、大豆油やゴマ油などに多く含まれるリノール酸やγリノレン酸などがある。

不適切な糖質制限ダイエットを続けると腸内の善玉菌が減る?
かかりつけの医師や栄養士にも相談を

 一方で、不適切な糖質制限ダイエットを続けると、腸内のビフィズス菌などの善玉菌が減り、コレステロール値が上昇するおそれがあることも、英国のバース大学による新しい研究で示された。

 糖質制限ダイエットに取り組むときは、極端な糖質制限は避け、食物繊維などの必要や栄養を十分にとるようにした方が良さそうだ。

 研究グループは、53人の健康な成人を対象に、12週間の試験を実施。参加者に通常の糖質制限ダイエット(対照群)、強めの低糖質ダイエット(糖質由来のカロリーは8%未満)、厳しい糖質制限ダイエット(糖質由来のカロリーは5%未満)のいずれかを実施してもらった。

 その結果、厳しい糖質制限をした群では、脂肪量は減少したものの、耐糖能が低下し、ヨーグルトなどに多く含まれる有益な腸内菌であるビフィズス菌が著しく減少し、悪玉のLDLコレステロール値も上昇した。

 「極端な糖質制限により、体の脂肪量は減りましたが、脂質代謝と筋肉のエネルギー利用に大きな変化があらわれました。体のエネルギー代謝の好みがブドウ糖から脂肪に変わりました」と、同大学で栄養学を研究しているアーロン ヘンギスト氏は言う

 「このことは、血液中の有害な脂肪のレベルを上昇させるおそれがあります。その状態が何年も続くと、心臓病や脳卒中のリスクが上昇するなど、長期的に健康に悪影響があらわれる可能性があります」と指摘している。

 「糖質制限ダイエットを適切に行うと、体重や体脂肪を減らすのに効果的ですが、代謝や腸内細菌叢などにさまざまな影響を与えることもあります。糖質制限ダイエットを行うときは、かかりつけの医師や栄養士に相談し、アドバイスやサポートをもらうことをお勧めします」としている。

A randomized controlled trial of 130 g/day low-carbohydrate diet in type 2 diabetes with poor glycemic control (Clinical Nutrition 2017年8月)
Low-carb diet helps cut blood sugar levels in people with prediabetes (ハーバード公衆衛生大学院 2023年1月3日)
At risk for diabetes? Cut the carbs, says new study (チューレーン大学 2022年10月26日)
Effects of a Low-Carbohydrate Dietary Intervention on Hemoglobin A1c: A Randomized Clinical Trial (JAMA Netw Open 2022年10月26日)
Is a low-carb diet a nutritious diet? Yes, new study shows (Simply Good Foods 2024年9月4日)
Nutrient analysis of three low-carbohydrate diets differing in carbohydrate content (Frontiers in Nutrition 2024年8月30日)
Ketogenic Diet reduces friendly gut bacteria and raises cholesterol levels (バース大学 2024年8月5日)
Ketogenic diet but not free-sugar restriction alters glucose tolerance, lipid metabolism, peripheral tissue phenotype, and gut microbiome: RCT (Cell Reports Medicine 2024年8月20日)
低炭水化物ダイエットと食事プラン (英国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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